『サラリーマン物語 新入社員第一課』 | 三匹の忠臣蔵

三匹の忠臣蔵

日々是好日。
お弁当ブログだった「お弁当にはたまご焼き」からリニューアル。
映画レビューを中心に、日々思いついたこと、感じたこと、趣味のことを書いてます。

田宮二郎・船越英二による『黒の試走車』とは真逆な、明るい「産業スパイ」を軸に、昭和の名優たちが繰り広げる日活のコメディ映画。
YouTubeで無料公開されてるので観た。

太洋化学工業の入社試験を受けて合格した塩原太助(山田吾一)、沖野良一(逗子とんぼ)、堀川新之丞(桂小金治)の同期三人衆と、ヒロイン四条美代子(清水まゆみ)。

生活苦に喘ぐ塩原は、入社試験の結果が気になりつつ、営業募集の求人の張り紙を見て、新たに「生活科学研究所」を訪ね、採用を条件に給与の前借りで現金を受け取ってしまう。

その後、無事入社を果たした塩原は、太洋化学の入社初日に前借りして、生活科学研究所所長・石川五助(由利徹)に借りた金を返しに行くが、娘の道子(松尾嘉代)に引き止められる。

一方、入社試験で太助のことが気になった美代子は、次第に同期の吉川良太郎(青山恭二)と距離を詰めていく。

塩原は五助から聞いた洗剤「P-35」の将来性を感じ、自社の太洋化学とはライバル関係にあるにも関わらず、営業先で「P-35」のサンプルを置いていく。
ところが、この洗剤がヒットしてしまい、太洋化学は生活科学研究所と業務提携を提案することになる。

しかし、太洋化学が提携を働きかけているライバル会社「安井物産」から、会社の機密情報を盗み出そうと、美代子がスパイとして送り込まれていた。

 

 


 

 

ネタバレになるけど、物語の展開はこんな感じ。
はじめは太助に恋心をいだいていた美代子が、社長の息子である良太郎に惹かれていく。
太助も太助で、道子に惹かれていく。

そして良太郎は親から見合いを勧められるが、美代子に本気で恋をしてしまい「駆け落ちしよう」といいながらも、見合いに行くと、相手として現れたのは、安井の娘・麗子を名乗る美代子だったという、どんでん返しが待っていた。

この小気味良いプロットを中心に、型破りで、バイタリティーの塊のような新入社員・太助が、日の目を見ない技術バカの五助が開発した「P-35」をヒット商品にしてしまう。

安井物産の社長である一郎は自分の娘をスパイとして送り出し、太洋化学の御曹司・良太郎と恋に落ちるという皮肉は、ちょっとした「軽めのロミオとジュリエット」のようにも見える。

また、太助を中心にした三人衆の一人である堀川新之丞を演じる桂小金治が、どうしても新入社員には見えず、新入社員には見えないこと自体がコメディになっている。

五助の由利徹はこの頃からすでに"いつもの由利徹"であるが、若き日の大滝秀治、良太郎の父親は『男はつらいよ』の初代おいちゃん役を演じた森川信など、脇を固めるメンバーも豪華。
何より道子を演じた松尾嘉代は美しく、独特な雰囲気を持っている。

最終的には「サラット」に改名されたが、ギャグか皮肉か、「P-35」というネーミングは洗剤というより爆撃機の型式みたいで、「なんで洗剤にそんな軍用機みたいな型番を付けたんや」と気になった。

この設定なら今でも通じると思うと、やはり戦後まもない日本映画のレベルは高かったと、改めて思う。

『黒の試走車』が戦後日本企業の狂気を描いた作品なら、本作は同じ題材を明るく笑い飛ばした作品に見えた。

 

 

『サラリーマン物語 新入社員第一課』