1970年代の同じ激動期の麻薬、汚職、KCIAの暗躍という「コリア裏歴史」をダークに描いた一大叙事詩、というか鎮魂歌かな。
シーズン2があるようだけど、感想としては『国際市場であいましょう』の裏社会・ノワール版という感じ。
力が入りすぎて長くなってしまったので、前半で主要キャストを整理し、レビューは最後にまとめた。
メインキャストと主なストーリー
ペク・キテ(ヒョンビン)とチェ・ユジ(ウォン・ジアン)
大韓民国中央情報部(KCIA)釜山支部情報課長ペク・キテは、日本のヤクザ組織池田組の池田ユジことチェ・ユジと麻薬ビジネスをしている。
池田組は日本で麻薬転売で組織拡大を目指していて大量の麻薬を韓国や台湾から仕入れている。
組長の池田治夫(リリー・フランキー)は幼くして両親を亡くした在日韓国人のユジを養女に迎え、自身の駒として使っている。
ペク・キテも在日韓国人として日本で生まれ、釜山に移住し、ベトナム戦争では陸軍特殊部隊として従軍した経験を持つ。
ペク・キテもチェ・ユジも共に大阪では当時、猪飼野と呼ばれていた生野出身。
KCIA釜山支部局長ファン・グクピョンは、出世目的で大統領警護室長チョン・ソクジュンへの資金提供の手段としてキテの後ろ盾という存在になっている。
ペク・キテの弟ペク・ギヒョン(ウ・ドファン)
キテ同様、日本生まれで、陸軍士官学校を首席で卒業したエリート。
兄キテには感謝しつつも、違う道を進もうとしている。
軍内部で起きた銃乱射事件の責任を取らされそうになるが、自力で抜け出そうとする。
しかし、この事実を知ったキテが介入したことで袂を分かち、ベトナムへ出兵する。
ここで、保安司令部にスカウトされるが、これが恐らくシーズン2の伏線になると思う。
モチーフは張世東(チャン・セドン)
全斗煥(チョン・ドゥファン)の側近・忠臣として、軍・情報機関で大きな権力を握った人物で、大統領の身辺警護だけでなく、「心のケア」や側近管理も担い、軍事政権の「影の支配者」の一人と見なされた。
安企部部長時代には政治弾圧・監視・拷問関連の業務に深く関与したとされる。
ドラマなのでフィクション要素は多くなると思うが、演技派のウ・ドファンを持ってきたのも納得できるし、シーズン2では朴正煕暗殺は絶対に絡んでくると思う。
ペク・キテの妹ペク・ソヨン(チャ・フィ)
弟のギヒョンとは違い、家族のために苦労してきた兄キテに対して信仰に近い信頼を抱いている。
銀行員を辞めてキテの麻薬組織の会計を担当し、恋人となってしまったカン・デイルが兄に始末された後も組織の実務を一手に引き受け、カン・デイルの子を身ごもることになる。
ギヒョンと共にシーズン2のシーン展開のブースターになると思う。
チャン・ゴニョン(チョン・ウソン)
チャン・ゴニョンは、幼い頃に朝鮮戦争から帰ってきたが、麻薬中毒になっていた父親による母の殺害現場を目撃し、その場にいた妹ヘウン(イ・ジュヨン)の面倒をみて暮らし、釜山地方検察庁特別捜査部検査官になった。
妹チャン・ヘウン(イ・ジュヨン)
ちなみに妹のヘウンは、ペク・ギテがチャン・ゴニョンを追い込むネタとしてパルゲンイ(アカ)にしたてられスパイ事件に巻き込まれてしまう。
ペク・キテ、弟ペク・ギヒョン、チャン・ゴニョンの父、チャン・ゴニョンらすべてが、従軍経験がある点は押さえておいた方がドラマの背景が理解しやすいと思う。
周辺キャラクターと彼らの役割
カン・デイル(カン・ギルウ)
元はマンジェ組のナンバー2で、麻薬の横流しがバレそうになり穴埋めのために麻薬を捌いていたところをチャン・ゴニョンに見抜かれ、スパイとして泳がされることになる。
これが、ペク・キテにバレてしまい、今度は逆スパイとして利用される。
ペク・キテとチャン・ゴニョンの間で生き残るためにワッタガッタ(右往左往)する、可哀想な「権力者に利用され、捨てられる弱者」の象徴的な人物。
釜山地方検察庁捜査官オ・イェジン(ソ・ウンス)
元々は検事志望だったが、雑用係としてチャン・ゴニョンのチームに配属される。父親がテコンドーの師範ということもあり運動能力高。
暗い雰囲気の作品の中で貴重なお笑いポイントで、捜査官としても有能。
おとり捜査でパートナーにチャン・ゴニョンを選び、好意を抱いている。大阪でのラブホシーンは可愛かった。
冒頭のカン・デイルを追いかけるシーンで、チャン・ゴニョンの万事休すでの飛び蹴りは、映画『ベテラン』の女性刑事ミス・ボンかと思ったら違ったので安心した。
釜山地方検察庁捜査係長キム・ジョンファン(イ・ヒョンギュン)
チャン・ゴニョンがオ・イェジンと並んで、チーム内で唯一信頼している捜査官。
いつもチャン・ゴニョンやオ・イェジンより一歩遅れて現場に到着したり、状況把握が遅れるが、見ていてそれほど気にならなかった。
演じてるイ・ヒョンギュンもどちらかと言うと、浪花節的なキャラが多かったので意外だった。
逆に、そういった弱肉強食な時代やったんやろうな。
KCIA釜山支部局長ファン・グクピョン(パク・ヨンウ)
ペク・キテの直属上司で、中央情報部で不正を働いていた腐敗の象徴。
上にはへつらい、下には強面という典型的な二面性を持った人物。
モチーフはキム・ヒョンウク(金炯旭)
朴正熙政権の影の権力者で、5.16軍事クーデターに参加後、中央情報部部長に就任する。
政権の維持のために政治工作・監視・弾圧・資金集めを積極的に行い、朴正熙の長期独裁を支えた重要人物。
「南山の猛猪」「公怖の三枚肉」など、恐ろしさと滑稽さを併せ持った異名で知られている。
しかし、1969年に中央情報部部長を解任されたことから、朴正熙政権と対立する。
アメリカに亡命して回顧録を出版し、コリアゲートの捜査にあたっての重要参考人として下院議会聴聞会に呼ばれ、パク大統領を「革命への裏切り者」と証言し、大統領の腐敗を告発した。
その後、1979年10月にパリで突然失踪し、1984年に法的には死亡宣告された。
映画『KCIA 南山の部長たち』ではクァク・ドウォンがこのキャラクターを演じている。
大統領警護室長チョン・ソクジュン(チョン・ソンイル)
大統領の信頼を巡って、大統領秘書室長と激しく争っている、本作黒幕の大本命。
ペク・キテと同じ陸士首席出身で、かつて中央情報部釜山支部のファン・グクピョン局長の上司。
ペク・キテがファン・グクピョンを殺した事実を知りながらも、裏金献上と選挙資金提供の約束により黙認する。
チョン・ソンイルが大邱出身であるため、韓国政治で欠かせない慶尚道訛りを自然に演じている。
モチーフはパク・ジョンギュ(朴鐘圭)
京都出身の在日韓国人で、1961年の5.16軍事クーデターに核心メンバーとして参加し、朴正煕の信頼を獲得し、長きにわたり大統領警護室長を務め、政権の絶対的な「ナンバー2」として君臨した。
英語・ドイツ・フランス語など多国語に堪能なインテリの側面を持つ一方、暴力団「東声会」の創設者である町井久之(鄭建永)と深い親交があり、警護室長の権力を利用して裏ビジネスを支援したことで、莫大な富を築いた「腐敗の象徴」と言われている。
町井久之はのちにヤクザから実業家に転身し、柳川組の柳川次郎らと共に日韓間の日韓国交正常化など、経済や政治におけるフィクサーとして暗躍した。
この「在日ヤクザとの麻薬ビジネス」の背景が、実在のパク・ジョンギュが「在日ヤクザの巨頭と密接だった」という史実が、このドラマにおいて「キテやチェ・ユジ(池田組)が関わる日韓の麻薬ビジネスを、警護室長ソクジュンが選挙資金目当てで黙認・コントロールする」というドロドロの構図に見事に昇華されている。
悲劇のブースター ペ・グンジ(チョ・ヨジョン)
主人公ペク・キテが「権力への欲望」に目覚める決定的なキッカケとなった女性。
終始、斜め上を飛んでて、チョン室長の前でファン局長への「カツラ?」の一言は強烈で、死をも恐れない”か細い豪傑ぶり”に笑ってしまった。
しかし、このシーンこそが、ペク・キテを権力への執着へと向かわせる引き金になる。
ただ、死亡したかどうかの描写があえてボカされているが、個人的には「シーズン2復活祭り」は、アリと思ってる。
モチーフはモデルのチョン・インスク(鄭仁淑)
父親はテグ市の副市長を務めた有力者で、幼少期はお嬢様として育つが、父親が失職して家計が一気に急傾斜し、一獲千金を狙った女優への夢も挫折する。
しかし、抜群の美貌と特技の流暢な英語を活かし、高級料亭「仙雲閣」のホステスとして名を上げ、時の最高権力者たちと関係を持つ特別な存在になる。
その後、韓国史上最大のミステリー「チョン・インスク殺害事件」によって命を落とす。
彼女のバッグからは、当時の政府高官、国会議員、軍の有力者など、政界最高峰のVIPたちの名簿や連絡先が発見される。
彼女には幼い息子(ジョン・ソンイル)がいたことから、その父親が誰なのかを巡り、国中を巻き込んだスキャンダルへと発展する。
劇中でチョ・ヨジョンが演じる「ペ・グンジ」は、本名のジョン・グンジ(鄭金枝)から取られている。
父親はやっと授かった双子の姉妹の姉に「金枝(グンジ)」、妹に「玉枝(オクジ)」と名付けた。
ここからレビューというか観た感想
大韓民国中央情報部、略してチュンジョン(中情)と言えば、時代劇をよく観る人にとっては、おなじみの言葉でちょっと笑ったが、大韓民国中央情報部と言えば盗聴。
この時代では必ず出てくるシーン。
全6話とコンパクトなのでサクッと観れた。
登場人物が多いけど、それぞれ芸達者の役者が務めてるので、キャラが立ってて追いかけやすい。
やっぱり演技力ってすごいと思う。
作品が訴えようとしてるコンセプトが、これでもかと統一されてる。
物語はよど号からはじまり、KCIA(大韓民国中央情報部)が出てきて、大統領警護室長へとつながっていく。
これって絶対10月26日に起きた『朴大統領暗殺事件』に持っていくための序曲やろ。
『KCIA 南山の部長たち』を手掛けたウ・ミンホ監督なだけに、スピオフっぽい感じもするし。
第3話の冒頭で、その理由をペ・グンジがナレーションでネタ振りしてるので、暗殺までいくのは容易に想像がつく。
ペク・キテも「世界を変える」と言ってたし。
特にペ・グンジ(チョ・ヨジョン)がペク・キテ(ヒョンビン)と見せた駆け引きや、緊張感あるやり取りからの挫折は見応えがあった。
演じるチョ・ヨジョンが大の男相手に全然負けてない。
彼女が持つ可憐なビジュアルと、権力者に物怖じしない豪快な行動のギャップが鮮烈で、仕草ひとつひとつ計算して演じてるのが分かる。
それにしても、あのシーンはすっぴんやってんやろうな。
また、パク・ヨンウの雰囲気がこれまでのイメージと違いすぎて、最初は気づかんかった。
その部下の課長ピョ・ハクス役のノ・ジェウォンも、さらにその上いっとるし。
はじめは”鍛え上げたイ・ドンフィ”かと思った。
歴史考証はそれなりにやってるようやけど、大阪のヤクザが何故か標準語を喋ってるのに対し、慶尚道の方言を喋ってる釜山検察の対比は面白い。
生野でのロケ情報はSNSでも飛び交ってて、実際の撮影場所は生野の一条通りやったと思う。
第4話のシーンも平野川(旧高麗川)を映してるが、橋の背景に走る近鉄電車。
あれは完全な合成やな。
SNSでは撮影目撃談や写真が出回ってて、どんなシーンなのか楽しみにしていたが、蓋を開けてみれば、ちゃんと映ってたんは空撮の川だけなのには驚いた。
ペク・キテもチェ・ユジも猪飼野出身ということで「どこまで再現して、生野をどう描くのか」と期待したのに。
しかも近鉄はあんなとこ走ってないし。
まぁ、勝手に期待値げたこっちも悪いけどさ、これって、わざわざロケをやる意味あったん?と。
とにかく見応えがあり、シーズン2が楽しみな作品。













