エッセイスト阿川佐和子が、児童文学を切り口に宮崎駿監督の内面に迫ったドキュメンタリー作品。
宮崎駿監督が子どもたちのために選んだ「岩波少年文庫」の児童文学50冊をベースに、監督の本への熱い思いや、創作の秘密を紐解いていく。
阿川佐和子さんの軽妙で鋭いインタビューによって、宮崎監督がただ本を紹介するだけでなく、自身の幼少期の思い出や、児童文学を選択した理由、そしてアニメーション制作などの創作活動の根底にある、自身の思想まで語る。
まず、本好きという杏さんと阿川佐和子さんが、ビジュアル的に巨人と小人みたいで、阿川さんの飾らない語り口調がいい。
宮崎監督の内面にもずけずけと踏み込んでいくが、こんな人を“聞き上手”というんだろうな。
やたらとタバコを吸うが、あれは困ってのことか、焦ってのことか、ちょっと気になった。
石井桃子さんへのエピソードというか、思いは笑えた。
そして、挿絵の重要性もなるほどと思った。
「子どもの心に向けて物語を届ける」という点で、児童文学と通じるのが“絵本”の世界。
観ていてふと思い出したのが、マ・ドンソク主演の映画『犯罪都市』シリーズで強面のレギュラーを務めるパク・ジファン。
彼は元々、絵本作家を目指していたらしい。
映画やドラマではヤクザや悪役、一癖あるキャラクターを演じることが多いが、20代の頃、演劇の世界に入る前は本気で絵本作家を志していたとか。
だから今でも文学や詩、映画のルーツとして、当時の感性を大切にしてるらしい。
このピュアな感性が、役柄の愛嬌や人間味に繋がってると思う。
だから宮崎監督とも通じるものを感じた。
宮崎監督が言っていた「児童書の方が自分の脆弱な精神に向く」と言う言葉も、感受性がピュアだから言える言葉なんだと思う。
児童文学も絵本作家も「子どもの目線」に合わせて作るが、大人向けの一般文芸より、使える言葉は簡単なシンプルな言葉になる。
そのため、ごまかしが効かず、それでいて高い表現力が求められるという共通の難しさがある。
児童文学も絵本も、「子ども向けやから簡単」ではなく、むしろ“大人のごまかし”が通用しない世界なんやろうね。
だからジブリ作品って、大人になってから観ても、どこか心の奥に引っかかるんやろうな。
それと、タイトルは「本棚」となってるけど、「引き出し」のような感じがした。
宮崎駿の頭の中の引き出し、みたいな。

