夕方から出かけなければならず、ライヴ配信でお聴き出来た分までアップしながら、出かけたいと思います。
それにつけても、プログラムが通販で購入出来ないのが、本当に残念・・・。ヤフオクで売って下さる方、どなた様かいらっしゃらないでしょうか。1冊あたり1,500円で結構です。2冊、買いたい・・・。
佐藤 元洋 KAWAI
モーツァルト/ピアノ協奏曲ト長調 K.453
今日の演奏が、従来の彼本来のものなのか、それとも幾分よそ行き仕様になっているのかはよくわからないが、冒頭から中庸の演奏・解釈で、変に恰好を付けることも無く、ど真ん中を狙って、そこそこの速さのストレートを投げ込んで来ているような印象。一日の間を挟みリフレッシュされただろうし、きっと色んなアドヴァイスも受けたのだろう。上位入賞を狙った演奏だと思うし、それがこの舞台で出来てしまうと言うことは、彼の持つ資質もまたきっと素晴らしいのだろう。思い切りの良い演奏で、生き生きしているし、とても健康であり、それでいて十分に趣きもやさしさも、心の余裕さえ感じる程。タッチ自体は、これまでの印象と変わらずに少し硬いが、意識的に軽めに弾こうと言う姿勢も感じられるのと、KAWAIと言うピアノを使っている意味合いも十分に感じることが出来る。ピアノが使い込まれおらず、良い音が出ているのも有利。きっと「彼仕様」にチューンナップされているはずだし。第2楽章は粘り気が少し気になるものの、潤いもあり、第3楽章も、オケを引っ張って行くほどの推進力があり、積極的。小カデンツァもとてもおしゃれ。悪くない。この上出来なモーツァルトであれば、一昨日のリストの協奏曲と併せ、3位以上の入賞は望めそうだ。
平間 今日志郎 スタインウェイ&サンズ
モーツァルト/ピアノ協奏曲変ロ長調 K.450
一昨日の、あまり上手く行かなかったラフマニノフから、どれだけ開き直ってここに臨めるかと言うところだが、少し慎重になっているきらいはあるものの、冒頭から実に味わい深い音楽が展開されて行く。悪くない。この優しく思いやりのある音楽は・・・。品があるし、格調高く、躍動感もある。佐藤さんもそうだが、気持ちをリセットしてここに臨むことの出来る精神力は、さすが本選出場者だけのことはある。ただ、今日もミスタッチが幾分目立ち、これはマイナスかな。あるより無い方がもちろん良い訳だし・・・。第2楽章、音楽が実に懐深く、そして生きている。流れも実にスムーズ。第3楽章のテンポ設定も、音楽が躍動するのに最も適切。そして、カデンツァはこのコンクールで最も彼らしい一面を聴かせてくれた素晴らしい場面。音楽的には本当に素晴らしいものを持っているし、だからこそ彼の演奏を日頃から追いかけているのだが、こと今回のコンクール(特に本選)に限れば、彼の実力が全て発揮出来たとは言えないのが本当に惜しい。そこがコンクールの難しいところ。順位的には、佐藤元洋さんよりも、下かも知れない。個人的にも仲良くして頂いているので、良い順位を取って欲しいと願っているものの、まだまだ若く、仮にここで思うような結果が出なくても、この先長い音楽家人生が待っているし、全く焦る必要もない。
今日志郎さん、長丁場、本当にお疲れ様でした。そして、ご入賞おめでとうございます。エントリー曲を全てお聴き出来ましたね。本当にうれしいです。これからも、またいつもの今日志郎さんらしい、溌剌とした演奏をお聴かせ下さい。ありがとうございました。
ダリア・パルホーメンコ スタインウェイ&サンズ
チャイコフスキー/ピアノ協奏曲第1番変ロ短調 op.23
大河が流れて行く、そんな大きな音楽が聴かれる冒頭。テンポも実に悠然と。「お国モノ」の演奏とは、こういうものなのかと、思わず唸らされる場面。日本人がしたくても出来ない・真似の出来ない、実にうらやましい音楽的な背景。ただ、パッセージを弾くのに、どうしてもムラが出来てしまっているし、安定していない部分も目立って聴こえてきてしまう。カデンツァも雰囲気は十分なのだが、かなり粗い。もっと神経を遣い、細かい部分にも十分な配慮をして欲しい部分がかなりある。響かせたい音の選択にも、明らかな個性・違いを感じ、他のコンテスタント達とは明らかに異なる音楽的な資質・個性を持っているのだが、評価するのに、どの観点で行うのかによって、この人の順位は大きく変わって来るのだと思う。完成度を取るのか、それとも音楽性・個性を重視するのか・・・。彼女の演奏を好きな聴衆も多いだろうが、個人的にはコンクールの順位付けと言う観点から見ると、全体的に粗さが気になり、完成度に物足りなさを感じるため、あまり良い評価には出来ない。
最終演奏者を聴くことが出来ないので、ここまでの5人の、あくまでも個人的な順位付けは、
佐藤≧フェンウィク>平間>パルホーメンコ≧キム
チェ・ホンロクの、昨日のモーツァルトの演奏だけを評価すれば、彼が最上位。出かけますので、とりあえず、ここまで。(午後5時過ぎ)
チェ・ホンロク スタインウェイ&サンズ
チャイコフスキー/ピアノ協奏曲第1番変ロ短調 op.23
以下、追記します。審査結果を知っての後、書き込んでいますこと、ご了解下さい。
改めて、彼の演奏で気が付いたこと。品が良く、とにかく音がきれい、線は細いが芯が強く、まっすぐで素直な音楽。大きく崩れず、常に自然体で、力みが一切ない。打鍵は深く、時に思索的で、内面から沸々と湧き上がる「何か」がある・・・など。オケと「対話」もしっかり出来ている。ただ、個性的な演奏とはあまり思えないし、音楽のスケール感も得られ難いと言うことは、今日の演奏でも思った事。だから、もしかして「1位無し」もあるかな、と思った次第。
セミファイナルの時、彼の良さに気が付くことが出来ず、「斜め聴き」でしっかりと彼の弾く音楽に向かい合うことが出来ていなかった、そして彼の良さに気付けなかった、そんな自分の姿勢・不明を恥じています。
ただその一方で、昨日の彼のモーツァルトを聴き、ほんのわずかでも彼の良さに気が付くことが出来、それを書き残せたことで、彼には許してもらえるのかな、とも思っています。
音楽と言うものは、マイナスを探すものではないんですよね。得てしてコンクールと言う場所は、そうなりがちです。私も大きく反省しています。音楽には「正解」と言うものもないんですよね。聴く側それぞれの好み・価値観・楽しみ方と言うものが存在し、それを追い求める楽しさが、音楽にはあるのです。プロの方が良いと思う音楽と、私のようなアマが良いと思う音楽も当然異なります。そこが音楽の面白いところであり、奥深いところでもあるのではないでしょうか。
拙いとは思いつつ、そして恥ずかしいとは思いつつ、こうやって自分の言葉で演奏で思ったことを書いて残すと言うことは、とても大切なことだと思いますし、演奏された方への礼儀だとも思っています。それが仮にあまり良い演奏だと思わなかったとしても。率直に思ったことを、書き留める、直接お伝えする、お世辞は言わない、それをこれまで続けてきたつもりです。演奏者に、もっともっと良くなって行って欲しいから・・・。人の噂で以って良し悪し・好き不好きの方向を決めることも、もちろん音楽を楽しむ一側面ではあるのでしょうが、私はそれでは面白くありません。自分で確かめながら、一演奏家の成長を追いかけて行く、そんな魅力が、音楽にはあるんですよね。だから、聴くことをやめられない。そういうお仲間が、私の周りにはたくさんいますし、そしていつも刺激も受けています。
大きく脱線してしまいましたが、最終奏者の演奏を聴いた後の、ファイナルに限った個人的な順位付けは、昨日のモーツァルトでのアドヴァンテージもあり、
チェ≧佐藤≧フェンウィク>平間>パルホーメンコ≧キム
1位なし
2位.チェ・ホンロク
3位.佐藤 元洋 バロン・フェンウィク
4位.平間 今日志郎
5位.ダリア・パルホーメンコ キム・ジュンヒョン と、させて頂きました。
ピアノ部門が終わり、聴衆皆さんそれぞれの、お気に入りの奏者も出来たことでしょう。そんな彼らの、今後の成長を温かく見守って行ってあげたいですね。(だからこそ、プログラムが欲しかった・・・) 明日は「ガラコン」。3位までの入賞者しかお聴き出来ないのですね・・・。ソロでも良いので、入賞者全員の演奏を聴きたかったですけど・・・。
そして、一週間後、いよいよ「ヴァイオリン部門」が始まります。