音楽と競馬、思ったことを書いて行きます -2ページ目

コー・ドンフィ

 バルトーク ヴァイオリン協奏曲第2番 Sz.112

  1:16分43秒 2:9分41秒 3:12分06秒

 ブラームス 交響曲第1番ハ短調 op.64 から 第2楽章の指定箇所

  3分20秒

 R.シュトラウス 交響詩「ツァラストラはこう語った」から 指定箇所

  3分56秒

 全体的には、予選で聴いたイザイの演奏と同傾向。だが、このバルトークの曲には非常に合っている。とにかく、素晴らしい、の一言。全てを理解し、それをやり切ろうとする姿勢の素晴らしさ、若いっていいなあ、と思う瞬間の連続。バルトーク、細かい傷はたくさんあるけれど、それを上回る充実した密度の濃い音楽。そして鋭さと潤い。両端楽章は、唄うところはきっちり唄っているので、演奏時間もかかっているが、冗長と言う印象も無い。自信に満ち、いかにもこの曲を「弾き慣れている」と言う印象。間違いなく、本選に進むと思う。

 

 

石原 悠企

 バルトーク ヴァイオリン協奏曲第2番 Sz.112

  1:16分15秒 2:9分42秒 3:11分38秒

 ブラームス 交響曲第1番ハ短調 op.64 から 第2楽章の指定箇所

  3分17秒

 R.シュトラウス 交響詩「ツァラストラはこう語った」から 指定箇所

  3分52秒

 予選では、素晴らしい音楽性を聴かせてくれたが、このラウンドは、選曲でミスがあったように感じる。それに、多少「弾き込み」が足りなかったか・・。決して悪い演奏ではないが、先に演奏した奏者の演奏のインパクトが強く、演奏順で損をしてしまった感も。彼の持つ音の質や音楽性(=豊かで温かい音色、品の良さ、弾き方、スマートさ、端正さ)が、この曲に必要とされるものと一致していない部分があるような気がする。オケの音の厚みで、彼の持つ良さが聴こえ難くなり、埋もれてしまっていた一方で、第2楽章では、彼の持つ美質が非常に際立って良く聴こえた。オケの音が薄めなプロコフィエフを弾けば、きっと印象も違ったのでは、と残念に思うが、キャラクターがはっきりとしているし、奏者としては非常に良いものを持っているので、今後が楽しみ。

 

 

荒井 里桜

 プロコフィエフ ヴァイオリン協奏曲第1番ニ長調 op.19

  1:9分39秒 2:3分47秒 3:8分01秒

 ブラームス 交響曲第1番ハ短調 op.64 から 第2楽章の指定箇所

  3分14秒

 R.シュトラウス 交響詩「ツァラストラはこう語った」から 指定箇所

  3分52秒

 彼女の良さは、中庸で常識的な解釈・演奏を、過不足なく安定して出来ること。それが、このラウンドでも実証出来ている。これは、彼女の持つ能力や音楽性が非常に高い証拠。音そのものは、やはり幾分硬めには聴こえるが、一方で音そのものは澄みきっているし、汚れがない。きっと弓の使い方が素晴らしいのだろう。音楽にもストーリーが聴き取れ、これはこれで非常に素晴らしい演奏だと思う。ただ、聴く人の心に届くような「個性」のようなものが、感じられ難く、「唄いこみ」「表現力」と言う面でも多少物足りない。演奏の印象が残りにくいと言っても良いだろうか。そのあたりが、彼女の今後の課題ではないかとも思う。

 

 

シャノン・リー

 バルトーク ヴァイオリン協奏曲第2番 Sz.112

  1:16分27秒 2:9分44秒 3:11分59秒

 ブラームス 交響曲第1番ハ短調 op.64 から 第2楽章の指定箇所

  3分22秒

 R.シュトラウス 交響詩「ツァラストラはこう語った」から 指定箇所

  3分57秒

 選曲がどうかと思ったが、いやいやどうして、素晴らしい演奏。音そのものには、やはり幾分線の細さは感じるが、それを上回る圧倒的な表出力と熱い意欲。鋭いところは鋭く、唄うとことろは十分に唄う。そう言った「バランス」も良く、この曲を良く理解し、どこをどう弾こうと言う意思が見え、曲全体を通しての見通しも非常に良く、加えて音楽に対する厳しさも感じ、聴いていて飽きることが全くない。彼女には「スター性」を感じ、更に音楽家として熟成して行けば、将来はきっと第一線で活躍する人になっていると思う。このラウンドは、申し分ない出来だった。本選に進むだろう。

 

予選での印象と、このラウンドとでは、曲の規模やスケールが大きく異なるためか、その人の音楽性や潜在能力が露わになって行っているような気がする。1日目の岸本 萌乃加さんに加え、この日のコー・ドンフィさん、シャノン・リーさんの3名は、本選に進むだろうし、本選で演奏をもっと聴いてみたいと思わせてくれる人。石原 悠企さんは、このラウンドで分が悪くなってしまったか・・・。荒井 里桜さんも、本選での演奏の「予想」がついてしまう感じなので、ちょっと微妙な感じか。

北田 千尋

 プロコフィエフ ヴァイオリン協奏曲第1番ニ長調 op.19

  1:9分50秒 2:3分54秒 3:8分10秒

 ブラームス 交響曲第1番ハ短調 op.64 から 第2楽章の指定箇所

  3分23秒

 R.シュトラウス 交響詩「ツァラストラはこう語った」から 指定箇所

  3分59秒

 音がとても綺麗で、澄んでいる。プロコフィエフは、かなり積極的に攻めて来ており、メリハリも十分。一方で自然さもあり、この曲を良く弾きこんでいる様子が良く窺い知れる。ただ、この曲の持つ「浮遊感」のようなものが欲しいと感じるような場所で、唄いこんでしまうような感じもし、実際に、第3楽章の冒頭以降で、少し退屈に聴こえてしまった。

「コンミス」としては、大変素晴らしい演奏で、この部分は、申し分ないように思う。

 

 

岸本 萌乃加

 ストラヴィンスキー ヴァイオリン協奏曲ニ調

  1:5分40秒 2-1:4分38秒 2-2:5分28秒 3:5分51秒

 ブラームス 交響曲第1番ハ短調 op.64 から 第2楽章の指定箇所

  3分21秒

 R.シュトラウス 交響詩「ツァラストラはこう語った」から 指定箇所

  3分55秒

 ストラヴィンスキーは、彼女自身初めての取組になる曲のようだが、とにかく素晴らしいの一言。予選の時、この曲の演奏の予想として「手堅く」と書いてしまったが、全く違った。彼女の持つ少し重めの(重心の低い)音質・音楽と言うキャラクターにとても良く合い、この曲に挑戦しようと言う意欲が溢れ、選曲の意図が見るような、文字通りの秀演。形を崩すこと無く、鮮烈で、聴く側の心を捉える。曲の持ついろいろな側面・アイディアが見事に具現化され、申し分ない出来。コンクールと言う範疇を超え、今この曲をこれだけ見事に弾ける人は、そうそういないのではないだろうか。「コンミス」としても、メンバーに溶け込み、アンサンブル能力を見せつける。譜面も深く読み込み、ブラームス&R.シュトラウスが書いた音符の意味を、再確認させてくれる。いやあ、参りました、の一言。きっと、本選に進むだろう。

 

 

チャーリー・ラヴェル=ジョーンズ

 プロコフィエフ ヴァイオリン協奏曲第1番ニ長調 op.19

  1:10分55秒 2:3分46秒 3:9分40秒

 ブラームス 交響曲第1番ハ短調 op.64 から 第2楽章の指定箇所

  3分26秒

 R.シュトラウス 交響詩「ツァラストラはこう語った」から 指定箇所

  3分57秒

 予選の時と、印象はあまり変わらない。プロコフィエフでは、もっと透明感が欲しいし、場所場所での凹凸が激しい。両端楽章では、テンポを比較的遅めに取り、ヴィブラートと弓圧に頼って唄ってしまうので、この曲をそう弾いては、逆に息苦しく感じてしまう。全体を通して、演奏から曲の様式感が感じられ難く、そう言ったことを、日頃からあまり意識していないのかも知れない。ブラームスでは多少個性を抑えたような感じになり、オケに溶け込んで、なかなか良い「コンマス」と思った。

 

 

古澤 香理

 プロコフィエフ ヴァイオリン協奏曲第1番ニ長調 op.19

  1:9分50秒 2:3分51秒 3:8分22秒

 ブラームス 交響曲第1番ハ短調 op.64 から 第2楽章の指定箇所

  3分24秒

 R.シュトラウス 交響詩「ツァラストラはこう語った」から 指定箇所

  3分59秒

 とても真面目な性格の方なのだろう。それが、音楽に出てしまっているのが惜しい。幾分力任せの印象で、恐らく彼女の癖なんだろうと思うが、時折見せるルバート癖が、どうしても音楽がスムーズに聴こえない要因のひとつなんだと思う。速いパッセージでの音の処理があまり上手く無く、音と音が有機的につながって行かないように感じるし、全体的に音楽自体が前のめりになり気味で、もっとまっすぐに進んで行って欲しいと思う場所がいくつもある。第2楽章でのテクニックの弱点も気になる。もっと余裕を持ち、あっさりと通り過ぎる場所を多く作っても良いのではないだろうか。オケの中でのブラームスでは、とても良い音楽を作れるのに。

 

岸本 萌乃加さんは、きっと本選に進むだろう。北田 千尋さんも、可能性がある。

 

今回から採用された「コンマス試験」、以前から何度も書いて来たが、あまり意味の無い「イベント」だと思う。セッティングからして慌ただしく、手を掛け過ぎの「見世物」のようだし、さりとて、今日の4人の演奏を聴いても、あまり差が付くようなものでもなく、特にブラームスは、少なくとも楽章全体を弾かないと、曲の流れも何も無い中でいきなり始まるし、一体ブラームスの音楽を何だと考えているのか、と、聴きながらとても悲しくなる。いい加減に、やめて欲しい企画だ。

全ての出場者の演奏を聴く時間的余裕が無く、先程セミファイナルに進まれた12名の皆さんの演奏をVOD配信で聴かせて頂きました。

次のラウンド以降への参考になればと思い、個人的な印象を書かせて頂きます。

曲目のあとの数字は、各曲・楽章の演奏時間。また、最終行の点数は、10点満点としての個人的な採点。

 

北田 千尋

 バッハ:ヴァイオリン協奏曲第1番イ短調 BWV.1041

  1:3分56秒 2:5分49秒 3:3分35秒

 イザイ:無伴奏ヴァイオリンソナタ第3番ニ短調 op.27-3

  6分40秒

 清新でつややかさのある音色、伸びやかな音楽性を持つ。一方で、パッセージで幾分流れて行ってしまうような傾向がある。弓の根元部分で弾き切る際などで、弾き癖が感じられる。バッハは現代的な弾き方で、音楽に勢いが感じられるが、少し型にはまったような印象も。イザイは、良く鳴るような弾き方・美音で攻め、常に豊潤だが、時折若さが顔を覗かせる。

  バッハ 7 イザイ 6 = 13

 

岸本 萌乃加

 バッハ:ヴァイオリン協奏曲第2番ホ長調 BWV.1042

  1:7分41秒 2:5分22秒 3:2分34秒

 イザイ:無伴奏ヴァイオリンソナタ第3番ニ短調 op.27-3

  7分26秒

 音楽が自在で潤い・メリハリがあり、生き生きしている。何をしたいのかがはっきりしている。音符・音価を聴き手にあまり意識させず、音楽の流れを優先している。イザイでは、聴かせるところは聴かせ、そうでないところは内に秘めたような味わいのようなものを感じ、いわゆる「大人の音楽」を聴かせているが、スケール面でわずかに物足りない。

  バッハ 8 イザイ 7 = 15

 

チャーリー・ラヴェル=ジョーンズ

バッハ:ヴァイオリン協奏曲第1番イ短調 BWV.1041

  1:3分51秒 2:6分43秒 3:3分33秒

 イザイ:無伴奏ヴァイオリンソナタ第3番ニ短調 op.27-3

  7分15秒

 弓の都合で、アクセントが付いたり、ボウイングそのものが安定せず、音楽の形が変わってしまう。歌い上げるような弾き方も、あまり好みでは無い。バッハは、かなり振幅が大きく、特に第2楽章での唄い方は、古典の曲の弾き方ではないように思う。イザイでは、曲想を練り過ぎの感があり、音が正確に発音出来ておらず、音そのものも汚れてしまっている個所も多い。それらが彼の「流儀」なのだろうが、個人的にはあまり感心しない。

  バッハ 6 イザイ 6 = 12

 

古澤 香理

 バッハ:ヴァイオリン協奏曲第2番ホ長調 BWV.1042

  1:7分33秒 2:5分08秒 3:2分33秒

 イザイ:無伴奏ヴァイオリンソナタ第3番ニ短調 op.27-3

  6分42秒

 音楽に対し真摯な姿勢が見られ、健康的で誠実。音そのものは清新で軽め。バッハでは、ルバートに癖があり、多少違和感を感じる。また、前向き過ぎるのか、先に行ってしまいがちになり、趣きに欠ける。イザイは、音楽的な抑揚や「香り」に乏しく、この作品の持つ良さ・特色があまり表れているようには感じられない。

  バッハ 7 イザイ 5 = 12

 

コー・ドンフィ

 バッハ:ヴァイオリン協奏曲第2番ホ長調 BWV.1042

  1:7分28秒 2:5分26秒 3:2分31秒

 イザイ:無伴奏ヴァイオリンソナタ第3番ニ短調 op.27-3

  7分09秒

 音に瞬発力がある。バッハは徹底したバロック奏法で、独自のアイディアが聴こえる。デュナーミクの必然性も感じられる。その一方で、幾分力づくの部分があったり、意欲は十分に感じるものの、押しつけがましい感じがし、かなり恣意的で、時に息苦しくなる。アドリヴも入れ過ぎで、元の譜面が見えにくく、曲の形が崩れてしまっている。イザイでは、一転して唄いあげるような奏法で、弓のコントロールも良く、この曲は上手く行っている。

  バッハ 7 イザイ 7 = 14

 

石原 悠企

 バッハ:ヴァイオリン協奏曲第2番ホ長調 BWV.1042

  1:7分36秒 2:5分42秒 3:2分30秒

 イザイ:無伴奏ヴァイオリンソナタ第3番ニ短調 op.27-3

  6分48秒

 ヴィオラのような豊かな音色。ボウイング・弓の使い方に特徴があり、元の部分をあまり使わないため、きつい音が聴こえて来ない。力みも無く、自然体で無理が無い。バッハでは、オケの音を良く捉えながら、趣きのある音楽を引きだしている。テンポもじっくり、弾き方にマッチしている。イザイでも、音は豊潤で常に自然体。発音も良く、聴いていてストレスを感じない。音楽に中味があり、何をしたいのかが良くわかる演奏。この人は「大器」の予感がする。

  バッハ 9 イザイ 8 = 17

 

荒井 里桜

バッハ:ヴァイオリン協奏曲第1番イ短調 BWV.1041

  1:3分42秒 2:6分09秒 3:3分28秒

 イザイ:無伴奏ヴァイオリンソナタ第6番ホ長調 op.27-6

  7分14秒

 2年程前に聴いた時に比べ、相当に進化している。常に唄心があり、弓のコントロールも抜群。やや硬質な音だが、音楽には品があり、運びはきびきびしている。健康的だが、一方で大人っぽい。バッハは、音がくっきりと浮かび上がり、曖昧さが無く、ひた向きさを感じる。イザイは、曲の持つ香気が感じられ、ヴィブラートも素晴らしく、聴き映えがし、お見事と言うしかない。2曲ともテンポ設定も良く、正に「お手本」のような、素晴らしい演奏。

  バッハ 9 イザイ 9 = 18

 

シャノン・リー

バッハ:ヴァイオリン協奏曲第1番イ短調 BWV.1041

  1:3分44秒 2:6分04秒 3:3分33秒

イザイ:無伴奏ヴァイオリンソナタ第5番ト長調 op.27-5

  10分15秒

 多少線の細さを感じるが、味があり、音楽を捉える独特の感性を持っている。弾き方は鋭く、発音が幾分刺激的。バッハは、多少弾き癖を感じ、どちらかと言うとスローの部分の方が良い。イザイは、音楽に対する求心力を感じ、曖昧さが無いのが良い。プロコフィエフを弾かせたらとても良さそうだが、セミファイナルの選曲は、バルトーク。

  バッハ 8 イザイ 8 = 16

 

ケリー・タリム

 バッハ:ヴァイオリン協奏曲第2番ホ長調 BWV.1042

  1:8分06秒 2:5分48秒 3:2分29秒

 イザイ:無伴奏ヴァイオリンソナタ第6番ホ長調 op.27-6

  8分04秒

全体的にレガート傾向で重い。弾き癖を感じ、音楽的に上滑り感がある。バッハでは、拍の頭がアップボウだったりするような独特の癖があり、とにかくボウイング・弓使いが嫌。オケも弾き難かったのではと思う。レッジェーロ感がなくバタバタした感じで、曲の持つ躍動感が感じられ難い演奏。アンサンブルの面でもあまり上手く行っていない。イザイは、全体的に重く、音楽的に勢いが感じられず、テクニックの面でも、特質すべき点が見あたらない。

  バッハ 6 イザイ 6 = 12

 

アンドレア・オビソ

 バッハ:ヴァイオリン協奏曲第2番ホ長調 BWV.1042

  1:6分53秒 2:5分45秒 3:2分23秒

 イザイ:無伴奏ヴァイオリンソナタ第3番ニ短調 op.27-3

  6分20秒

 いかにもイタリア人らしい弾き方。バッハでは、独特の溜めがあり、作り過ぎの感も。スケールは大きく無く、音一つ一つが大切にされていない印象。イザイは、、逆に彼の特性が良い方に出たような演奏。幾分アバウトな捉え方だが、独特な音楽観を持ち、魅力も感じる。ラストで見せたテクニックや追い込みは、なかなか聴かせる。

  バッハ 7 イザイ 8 = 15

 

友滝 真由

 バッハ:ヴァイオリン協奏曲第2番ホ長調 BWV.1042

  1:7分31秒 2:5分47秒 3:2分29秒

イザイ:無伴奏ヴァイオリンソナタ第5番ト長調 op.27-5

  10分10秒

 端正で、音の瞬発力も十分。音楽的にもきびきびしているし、とにかく音そのものや音楽の形が美しい。バッハは、バロック奏法。音楽に勢いがあり、実に素直で自然体の音楽が聴かれる。開放弦の効果的な使い方も素晴らしい。イザイは、丁寧、音程も抜群で、安定している。音そのものにキャラクターがあり、それが弾く音楽に良く反映している。音と音の繋がりも有機的で、味わいがある。この人も、相当に素晴らしいヴァイオリンを聴かせる。

  バッハ 9 イザイ 9 = 18

 

イリアス・ダヴィッド・モンカド

バッハ:ヴァイオリン協奏曲第1番イ短調 BWV.1041

  1:3分41秒 2:5分26秒 3:3分24秒

 イザイ:無伴奏ヴァイオリンソナタ第3番ニ短調 op.27-3

  6分10秒

 音そのものには艶があり、美しいが、ムラがある。弓の都合で、元で弾く時に、譜面には無いアクセントが付いたりしてしまっている。バッハは、特に第2楽章は速く、淡々と進んで行ってしまい、この楽章の持つ味わいに乏しい。一方で、イザイでは、幾分雑なところは見られるが、曲に合ったこの人独特の個性を感じ、なかなか聴かせる。

  バッハ 7 イザイ 8 = 15

 

あくまでも、予選の2曲のみの、個人的な趣味での採点。(出場順)

18点:荒井 里桜  友滝 真由

17点:石原 悠企

16点:シャノン・リー

15点:岸本 萌乃加  アンドレア・オビソ  イリアス・ダヴィッド・モンカド

14点:コー・ドンフィ

13点:北田 千尋

12点:チャーリー・ラヴェル=ジョーンズ  古澤 香理  ケリー・タリム

 

ここまでは、日本人出場者が、かなり優勢と言う印象。

6/11

ピアノ部門が終わり、15日からは、ヴァイオリン部門が始まりますので、記事を上げておきます。

 

5/14

本日、第7回仙台国際音楽コンクール・2部門の、出場者別エントリー曲目が公開されました。

まず、個人的に、より注目しているヴァイオリン部門の、曲目別エントリー数をまとめてみました。

 

<予選>

 次の①②の両方を演奏する。

  ①次の曲目から1曲を選択すること。

   J.S.バッハ:ヴァイオリン協奏曲 第1番 イ短調 BWV1041 21名

   J.S.バッハ:ヴァイオリン協奏曲 第2番 ホ長調 BWV1042 15名

 

  ②次の曲目から1曲を選択すること。

   イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第3番 ニ短調 op.27-3 19名

   イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第5番 ト長調 op.27-5 6名

   イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第6番 ホ長調 op.27-6 11名

 

 

<セミファイナル>

  次の①~③を演奏する。

   ①次の曲目から1曲を選択すること。

    ストラヴィンスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ調 5名

    プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲 第1番 ニ長調 op.19 20名

    バルトーク:ヴァイオリン協奏曲 第2番 Sz112 11名

 

   ②次の曲をオーケストラのコンサートマスターとして演奏する。

    ブラームス:交響曲第1番ハ短調 op.68 から

      第2楽章の指定箇所

  予想では、練習記号「E」の6小節前の、木管のアンサンブルの部分から最後まで。

 

   ③次の曲をオーケストラのコンサートマスターとして演奏する。

    R.シュトラウス:交響詩「ツァラトゥストラはこう語った」

     op.30の指定箇所

  95%の確率で、練習番号「25」のあと8小節目の3/4拍子になったところから、練習番号「36」の8小節前あたりまで。

  遅いテンポの場所なので、可能性は非常に薄いものの、練習番号「55」の前「Langsam」のあたりから、最後までのどちらか。

 

  ま、どちらにしても、②.③の課題は、国際音楽コンクールの課題にする意味のないものだと思います。

 

 

<ファイナル>

   次の①②の両方を演奏する。

    ①次の曲目から1曲を選択すること。

     モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲 変ロ長調 K207 2名

     モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 K211 3名

     モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲 ト長調 K216 6名 

     モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 K218 7名

     モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲 イ長調 K219 18名

 

    ②次の曲目から1曲を選択すること。

     ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.61 1名

     パガニーニ:ヴァイオリン協奏曲 第1番 ニ長調 op.6 3名

     メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 op.64 2名

     シューマン:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 なし

     ラロ:スペイン交響曲 ニ短調 op.21(全5楽章) なし

     ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.77 10名

     サン=サーンス:ヴァイオリン協奏曲 第3番 ロ短調 op.61 なし

     ブルッフ:スコットランド幻想曲 op.46 なし

     チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.35 13名

     ドヴォルザーク:ヴァイオリン協奏曲 イ短調 op.53 なし

     シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 op.47 7名

 

セミファイナルの協奏曲ですが、改めて見直しますと、エントリーされた3曲間のバランスが、非常に悪いように感じます。バルトークの2番は、本選で弾かれるべき曲ですよね。

 

本選の協奏曲、さすがにシューマンをエントリーされた方はおられませんでした。前回のこのコンクールで、皆さん苦労された曲ですが、その時お聴きした青木 尚佳さんの実演、そして、CDで聴くことの出来るレナ・ノイダウアーの名演のような演奏であれば、逆に大きくアピール出来たはずでもある曲だったんですけれどね・・・。ま、これはこれで、今の若いヴァイオリニストが好む曲目の傾向を、窺い知ることは出来ますが。

出場辞退者を除く37名の出場者の選曲傾向を、まとめておきます。

曲名の後ろにある数字は、選択した出場者数で、記載のない曲目は、1名のみ選択。

 

<予選>

D.スカルラッティ

 ソナタ 嬰ハ短調 K.247

 

J.S.バッハ

 フランス組曲 第5番 ト長調 BWV816

 パルティータ 第1番 変ロ長調 BWV825

 平均律クラヴィーア曲集 第2巻 前奏曲とフーガ 第14番 嬰ヘ短調

                                     BWV883

 半音階的幻想曲とフーガ ニ短調 BWV903

 イタリア協奏曲 BWV971

 

ハイドン

 ピアノ・ソナタ ト長調 Hob.XVI:6

 ピアノ・ソナタ ハ長調 Hob.XVI:21

 ピアノ・ソナタ へ長調 Hob.XVI:23

 ピアノ・ソナタ ホ長調 Hob.XVI:31 2名

 ピアノ・ソナタ ロ短調 Hob.XVI:32 2名

 ピアノ・ソナタ ハ長調 Hob.XVI:48

 ピアノ・ソナタ ハ長調 Hob.XVI:50

 ピアノ・ソナタ 変ホ長調 Hob.XVI:52

 

モーツァルト

 ピアノ・ソナタ ニ長調 K311

 ピアノ・ソナタ へ長調 K332

 幻想曲 ニ短調 K397

 ピアノ・ソナタ ハ短調 K457

 

ベートーヴェン

 ピアノ・ソナタ 第7番 ニ長調 op.10-3

 ピアノ・ソナタ 第18番 変ホ長調 op.31-3

 ピアノ・ソナタ 第23番 ヘ短調 op.57 「熱情」

 幻想曲 op.77

 ピアノ・ソナタ 第30番 ホ長調 op.109 2名

 ピアノ・ソナタ 第31番 変イ長調 op.110

 ピアノ・ソナタ 第32番 ハ短調 op.111

 アンダンテ・ファヴォリ ヘ長調 WoO 57

 

シューベルト

 即興曲 変イ長調 D899-4

 即興曲 ヘ短調 D935-1

 

ショパン

 マズルカ風ロンド ヘ長調 op.5

 マズルカ 第10番 変ロ長調 op.17-1

 マズルカ 第13番 イ短調 op.17-4

 アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ 変ホ長調 op.22

 ピアノ・ソナタ 第2番 変ロ短調 op.35

 バラード 第2番 ヘ長調 op.38

 ポロネーズ 第5番 嬰へ短調 op.44

 幻想曲 ヘ短調 op.49

 即興曲 第3番 変ト長調 op.51

 バラード 第4番 ヘ短調 op.52

 スケルツォ 第4番 ホ長調 op.54

 

シューマン

 ダヴィット同盟舞曲集 op.6

 トッカータ op.7

 謝肉祭 op.9

 交響的練習曲 op.13

 ピアノ・ソナタ 第3番 ヘ短調 op.14

 フモレスケ 変ロ長調 op.20 2名

 

リスト

 超絶技巧練習曲集 第10曲 ヘ短調 S139-10

 巡礼の年 第2年 イタリア 「ダンテを読んで-ソナタ風幻想曲」

                                 S161-7 2名

 暗い雲 S199

 グノーの歌劇「ファウスト」のワルツ S407

 シェイクスピアのセレナーデ S558-9

            (シューベルトの歌曲によるトランスクリプション)

 戦士の予感 S560-14

            (シューベルトの歌曲によるトランスクリプション)

 

ブラームス

 ピアノ・ソナタ 第1番 ハ長調 op.1

 スケルツォ 変ホ短調 op.4

 パガニーニの主題による変奏曲 op.35 第1巻

 パガニーニの主題による変奏曲 op.35 第2巻

 (ブラームス編曲) 左手のためのシャコンヌ

  (無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ 第2番 ニ短調

                                   BWV1004)

 4つの小品 op.119

 

チャイコフスキー

 四季 op.37bis:5月「白夜」、11月「トロイカ」

 

フランク

 前奏曲、コラールとフーガ

 

ラヴェル

 ラ・ヴァルス 3名

 鏡 第4曲 「道化師の朝の歌」

 夜のガスパール 2名

 夜のガスパール 第3曲 「スカルボ」 2名

 

ドビュッシー

 前奏曲集 第1集:第6曲 「雪の上の足跡」

 前奏曲集 第1集:第7曲 「西風のみたもの」

 前奏曲集 第1集:第8曲 「亜麻色の髪の乙女」

 前奏曲集 第2集:第4曲 「妖精は良い踊り子」、

 前奏曲集 第2集:第5曲 「ヒースの草むら」

 前奏曲集 第2集:第12曲 「花火」

 映像 第2集

 レントより遅く

 喜びの島

 

ヤナーチェク

 ピアノ・ソナタ 「1905年10月1日」

 

スクリャービン

 前奏曲 イ短調 op.11-2

 幻想曲 op.28

 ピアノ・ソナタ 第4番 op.30

 ピアノ・ソナタ 第5番 op.53 3名

 ピアノ・ソナタ 第9番 op.68 「黒ミサ」

 ピアノ・ソナタ 第10番 op.70

 

ラフマニノフ

 V.R.のポルカ

 練習曲集「音の絵」 第9番 嬰ハ短調 op.33-9

 練習曲集「音の絵」 第1番 ハ短調 op.39-1

 練習曲集「音の絵」 第6番 イ短調 op.39-6

 練習曲集「音の絵」 第9番 ニ長調 op.39-9

 コレルリの主題による変奏曲 op.42

 

ストラヴィンスキー

 (アゴスティ編曲) 組曲「火の鳥」

 ペトルーシュカからの3楽章

 

プロコフィエフ

 ピアノ・ソナタ 第2番 ニ短調 op.14 2名

 風刺 op.17

 ピアノ・ソナタ 第3番 イ短調 op.28

 ピアノ・ソナタ 第4番 ハ短調 op.29

 ピアノ・ソナタ 第6番 イ長調 op.82

 ピアノ・ソナタ 第7番 変ロ長調 op.83

 

ショスタコーヴィチ

 ピアノ・ソナタ 第2番 ロ短調 op.61

 

クライスラー

 (ラフマニノフ編曲)愛の喜び

 (ラフマニノフ編曲)愛の悲しみ

 

ヒナステラ

 アルゼンチン舞曲集 op.2

 

コリリアーノ

 エチュード・ファンタジー

 

ヴァイン

 ピアノ・ソナタ 第1番

 

マスト

 即興とフーガ

 

リーバーマン

 ガーゴイル op.29

 

ベリオ

 6つのアンコール:水のピアノ、地のピアノ、火のピアノ

 

リゲティ

 ピアノ練習曲集 第2巻 第10番 「魔法使いの弟子」

 

ヴィトマン

 11のフモレスケ:第4曲 「森の情景」

            第11曲「ユーモアと繊細さを持って」

 

 

<セミファイナル>

ベートーヴェン

 ピアノ協奏曲 第3番 ハ短調 op.37 19名

 ピアノ協奏曲 第4番 ト長調 op.58 18名

 

モーツァルト

 ピアノ協奏曲 変ロ長調 K450 7名

 ピアノ協奏曲 ニ長調 K451

 ピアノ協奏曲 ト長調 K453 17名

 ピアノ協奏曲 変ロ長調 K456 2名

 ピアノ協奏曲 へ長調 K459 10名

 

 

<ファイナル>

ベートーヴェン

 ピアノ協奏曲 第5番 変ホ長調 op.73 「皇帝」

 

ショパン

 ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調 op.11

 

シューマン

 ピアノ協奏曲 イ短調 op.54

 

リスト

 ピアノ協奏曲 第1番 変ホ長調 S124 3名

 ピアノ協奏曲 第2番 イ長調 S125

 

ブラームス

 ピアノ協奏曲 第1番 ニ短調 op.15 4名

 ピアノ協奏曲 第2番 変ロ長調 op.83 2名

 

チャイコフスキー

 ピアノ協奏曲 第1番 変ロ短調 op.23 8名

 

ラフマニノフ

 ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調 op.18 5名

 ピアノ協奏曲 第3番 ニ短調 op.30 2名

 パガニーニの主題による狂詩曲 op.43 2名

 

プロコフィエフ

 ピアノ協奏曲 第3番 ハ長調 op.26 7名