Book61.背中合わせのアキラ | Cap as Cap Can!! 俺は帽子とだってプロレスできるぜ日記
日大アメフト部の犯罪行為とも言える反則タックルが、物議を醸しています。

行為そのものも確かにひどいのですが、ここまで注目を浴びることになったのは、監督の存在にあります。

この監督は絶対的人事権を背景に、選手を心理的に追い詰め、反則行為による相手選手の負傷を促したというのです。

しかも、この人物の卑劣なところは、具体的な反則行為の指示は口に出していないところにあります。

サラリーマン的な世界で例えると「君も子どもじゃないんだから、わかってるだろう?これ以上は言わないよ」的な言葉を女子社員に言い放ち、関係を迫るスケベ上司みたいなもので、男の風上にもおけない最低なやり口です(この場合、悪事がばれた時は、もちろん合意の上だったと言うわけです)。

不幸にしてこの最悪男の暗示にかかってしまった選手は、思惑通り反則行為に走ってしまうわけですが、世論で問題となるや、「私はそんなことは言っていない。選手が間違って理解した結果だ」と責任を押し付けるクズ男の姿を見て、目が覚めたのでしょう。

後日、記者会見を開き、自らの愚かさを恥じ、相手選手に詫び、その責任を取ってフットボールを辞めるとまで宣言したのでした。

そして、その後、この恥知らず監督は、コーチを横に置いて記者会見を開くわけですが、これが大失敗。

記者会見という公けの場で、コーチでさえ監督にモノが言えない空気感を世間にあからさまに見せつけたことで、「これは選手は逆らえなかっただろう」と推察されることになったのでした。



背中合わせのアキラ

前田日明の師匠、田中正吾が記した前田との青春一代記とも言える一冊です。

当時、危険な匂いをプンプンさせていた前田日明を“おい、アキラ!”と呼び捨てにし、ニーチェやシュタイナーといった哲学者の言葉引用し、プロレスや生き方を語る田中氏の存在を、当時の私は「カッコええなぁ」と羨望の目で見ていたものでした。

田中正吾氏は前田日明を洗脳し、悪事を行うようにコントロールしたわけではなく、前田の名を使って金銭詐欺を繰り返していたのですが、複雑な家庭環境で孤独な少年時代を送る前田日明を救ったのは、間違いなく田中正吾であったわけで、そんな100%信頼し、尊敬していた人間に裏切られたことを知ったときの、前田の計り知れないショックの大きさは想像を絶するものだったことでしょう。

UWF分裂の原因となったフロント不信、後輩たちに「俺を信じれるか」と迫っての三派分裂等々、その後の前田の人間関係つくり、人との距離の置き方に多大な影響を与えたようにさえ思えます。

その後、田中正吾氏の消息が、一切知らされないことも気になってなりません。

出現から消失に至るまで、謎に満ちたミステリアスな人物でした。

背中合わせのアキラ
前田日明の本気スピリット&僕の希望スピリット
(シャピオ 田中正吾 1984.10.01)