羽田に着いたのが夕刻だったので、ちょっと早めの夕飯を羽田で食べて帰ろう、と言われたが、まだ4時半である。

いや、時差があるのでそれはいいのだけれど、1時間程前にまた飛行機で食べさせられたばかりなので、すぐ夕飯、と言われてもちょっと困る。

父もまだ夕飯には早いのでは、と思い、今ではなく高速降りてからでいい、と言うと、それなら家で食べれば、と言うことになった。


ところが渋滞。

もうちょっと早く家に着くと思ったら結構それなりの時間に着くことになってしまった。


母も体調が思わしくないと聞いていたので、申し訳ないと思ったのだが、「簡単なものしか出さないから」と言われて甘えることにしたが、果たして本当に簡単なものだった。

 

が、それがやはりほっとするのである。

母が出してくれた、と言うだけでじっくり身に染みていくものがある。

 

今回どんなに簡単な食事でも毎回写真に撮った。

何でも写真に撮る時代と言うのもあるけれど、大事にそのつどの食事を味わって忘れたくないと思った。


とか言いつつ、最初の夜の食事のお皿に乗っているものが何だったか思い出せない。
揚げ物らしいが、何の揚げ物だったのだろう?

 

いや、料理の中身が問題なのではなく、味わいたいのも忘れたくないのも時間なのだから、忘れてしまっても良いことにしよう。

父とはお酒を飲むのが楽しみだった。

早速ビールを開けたのだが、例の虫刺され。

 

ったくよぉおおお。

折角帰ってきてお酒が飲めないなんて・・・・。むかっ

 

 

初台一点を除いたらあとは順調に道を走り、高速を降りることができた。

 

さて、高速を抜けるとなぜかそこはラーメン屋が良く目に入る。

今イタリアでラーメンブームなので、これをイタリア人に見せてあげたいな、と思った。

とか言いつつ、自分は今回の帰国でラーメン屋には入らなかった。

娘が喜ぶかもしれない。
次回連れて行ってみよう。

日本にいるときはラーメンを外で食べようという気にならずに過ぎてしまったが、
こちらに戻ってくると食べたくなる。
で、はっ、と気が付くのである。

ラーメン丼がない・・・日本で買ってこようとなぜ思わなかったんだ。
そしてまた思う。

そんなもん、カバンの中に入れたら重いし割れるかもだし、めんどうだわ。

なんか代わりになるものさがそう。

最近オリエンタルなものが流行ってるから、なんかあるだろう。

そう思いつつ、外に出ると忘れる。

いつか我が家にラーメン丼を。ラーメン

 

 

トンネルでだいぶ息苦しさを味わった後に、今度は初台でぱったり車が動かなくなった。
なおかつやはりトンネルの中にいるというのが何とも息苦しい。

丁度渋滞しやすい夕刻に入っていたせいであると思う。

これでは成田から帰るのと変わらないな、と思った。

が、成田から帰ってもこの道は通るわけなので、同じ時間帯ならやはり渋滞に巻き込まれる、ということらしい。

私も娘も疲れているが、年老いた父に申し訳ないと思った。

 

それにしても、である。

 

首都高って随分恐ろしい道である。

 

夫が初めて日本に来た時、ものすごく怖がっていた理由が、今回初めて分かった。

道幅が狭くて、大型車が隣に走っているとぶつかるんじゃないか、と思うほどそばに迫る。

道路が狭すぎて事故があったら本当にどうにもならない、と思った。

 

救われるのは、日本人がとてもお行儀よく車線を越えたりしないことだ。

こんなにカーブが多い道なのに、この道幅をイタリアにそのまま持って行ったら、事故は間違いなく3倍以上増えると思う。

ということで、しばし機内で何かに頭を刺された話は置いておく。

 

話は坂のぼり、帰国したときの覚書。

 

いつもは成田に降りるのだが、今回は羽田で降りることにした。

成田と羽田だと断然羽田の方が便利と、多くの人に言われてそうすることにした。

年老いた親のこともある。

羽田だろうが成田だろうが、自分たちで帰るから大丈夫、と言ってはおいたのだが、

迎えに行きたい、と言う。

だったら羽田の方が断然いい、ということになった。

印象としては羽田の方がこじんまりしているのではないだろうか。

 

さあ、距離にしたら羽田の方が断然実家と近いはずなのであった。

 

が。

 

最初に驚いたのはトンネルの長さであった。

確か最後に羽田を利用したのは15年ほど前の国内線だったが、モノレールを使うとこのトンネルの存在は分からない。

行きが詰まるほど長い長い時間地底にいる気がする。

 

余りに長く感じたので、このトンネルについて調べてみると、通称海底トンネルと言われていて(が実際は川の下らしいが)、

長さは訳10kmほど、世界第二番目の長さだそうだ。

 

丁度「東京リボーン」という特集が放映され見たばかりだったので、その映像が思い浮かべた。

これだけのものがありながら、まだ東京をさらに変貌の道に突き進ませようとしている力が働いているらしい。

人間は何を作ろうとしているのだろう。

 

東京とは一体何なんだろう。

一日前飛び立った国とのなんという差。

 

今やどちらも自分の国である。

自分の中でどう消化されているのだろうか。

 

そんなことを考えていた。



 

 

 

「先ほどお電話させてもらったものですが」

 

どうやら同一人物が窓口に出たらしいので、話は早かった。

で、やはりそちらの問題と言いますか、何といいますか。

 

正確にはどう話したか忘れてしまったが、向こうもこちらがどう出てくるのか身構えているのが分かるだけに、
パンチを出すのかキックなのか平手なのか頭突きなのか、

迷いながら話した。

 

取りあえず自分はどこまですれば気が済むんだ?

診療代を出してもらえばいいかな。

 

「・・・をそちらで持っていただきたいのですが」

 

向こうは恐縮しながら、では確認してお電話させていただきます。とな。

 

そしてしばらく時間を置いて電話があり、フライトアテンダントに事実確認を取らせていただきたい。

つきましては、アテンダントと今連絡が取れず、戻ってくる正月明けに今一度連絡を入れさせて頂きたいのですが、と。

 

そんなんじゃ遅いんじゃ!

 

と切れても良かったな、と今思えばそうなんだけど、その時はそりゃそうだ、アテンダントさんだって休みたいわな、それにしてもこの話、正月明けまで引きずるのかい・・・・・と、

かなりがっかりしたれど、とりあえずもう忘れてしまうことにした。

 

それにしても痛いぜ・・・・。

 

一番気になったことは、このまま悪化していったらどうしよう、と言うことであった。

町医者は「虫刺されと違うんじゃない?」と見たんだか見てないんだか、3秒診断でさっさと薬を出すだけだし、その診断書は信頼性があるのか、と言いたい感じである。

 

ところで、なぜ診断書は封がされているのであろうか?

患者に診断結果は見せられない、ということなんだろうか。

開けると改竄されるとか?

 

イタリアでは診断書に一々封はしていないと思う。

私は気になったのでさっさと開けさせてもらった。

 

さて電話である。

「・・・・ということで、今後もし悪化したときのことを考え、信頼できる病院とかご紹介頂ければ」

向こうから、はい、こちらにいらしてください、診療に関してはこちらが持たせてもらいます、とか、お詫びをさせていただきますとか、何かアクションがあってほしい、という期待を込めて。
答えは、
「申し訳ありませんがこちらではそう言うご案内はさせて頂いておりません」

だった。

 

そうですか・・・・。

 

すごい拍子抜けだ。

 

いったん電話を切って父に「だってさ」と報告すると、ダメダメ、ちゃんとクレームとして処理してもらわないと!向こうの責任だよ?そんなかぶれるようなヘッドホンを使っているんですか、そちらの管理体制はどうなっているんですか!とちゃんと言う、そしてビジネスクラス!

 

「やってくれない・・・?」
 

アラフィフ娘からアラコキの父にお願いします。

 

「そんなん、自分でやらなくちゃダメでしょうが」

 

ごもっとも。

気を取り直してもう一度電話する。

やはり同じ優しげな女性が窓口に出て対応してくれることになったのであった。

 

あーあ、この人には罪がないのに。

この人はいつもこうやってお客様のクレームを聞いて怒られているのである。

ストレスたまる仕事だなー、辛いだろうな。

 

 

 

 

さあ電話。

交渉。クレーム。開始いたします。

難しいぞ、と思った。
ちょっと感情的な方が良いんだろうか。
あんたどうしてくれんの、私の休暇が台無しよっ!
それとも冷静に、
カクカクこういうことですのでつきましてはこういうことを請求いたします。
その中間だったら…・どんな感じだ?

一番に思ったのは、メンドクサイ。
でもひどい目にあったし、ここで黙っていてはいかんのだよなー、虫だろうが何だろうが、
飛行機の中で起こったことは確かだし、と、メンドクサイを打ち消して電話をする。

いつも思うけど大きな会社の窓口って探すのが大変。
一発で「ここに電話!すぐつながるよ!」と書いているページが見つからない。

しかし何とか直接お話しできるところまで行った。

思ったのは、なぜ機内で空港に降りたらすぐに空港内の病院で診察した方が良い、
と言われたのか、ということ。
空港にあるだけに外国から持ち込まれた問題に的確に対応できるからかもしれない。
普通の町医者には手におえないようなケース。そう言う病気はたくさんあるだろう…
私もそのうちそう言うケースに当てはまって行くのではないだろうか。
出なければこんなにいつまでも痛いのはおかしい。脳みそを食い荒らすアメーバのようなことが起こったら・・・?
飛行機を降りてからすでに2日経っているのに、自分の感覚では良くなっている気が全然しない。
医者は腫れいていないと言っていたけど!

で、電話は、とても優しそうな女性が対応してくれた。
増々強く言う気を失くす。

これが少し横柄な態度だったりしたら、怒りに火をつけられて感情的にこうやってああやって
ぎゃふんと言ってやろう、と言う気になったのだが。
 

畑の真ん中にポツンと建つその皮膚科のクリニックは、

待合は子供たちが飽きないようにテレビや遊び場もあったり、外には休憩所や自販機もあり、とっても過ごしやすい。

こういう痒いところに手が届く感じは、日本ぽいなと思う。・・・皮膚かだからかもしれない。

すごく混んでいて番号札の番号は80何番か、かなり待たされると思っていたのだが、ものすごいスピードで診察がすすんでいき、

多分1時間半ぐらいだったと思うが、自分の番が回ってきた。

 

しかし、診察もあっと言う間なのであった。

 

先生は女性の方だった。

カクカク云々、多分虫に刺されたんでないかと思うような痛みです、と見せると、

「もう腫れていませんね、虫刺されですかぁ?何かにかぶれたんじゃない?」

赤くないかもしれないけど、痛いんです、寝れないんです、これ見てください!と前々日に取った写真を見せる。

なんか納得しかねた顔で、じゃあ、飲み薬と塗り薬を出します、と言われた。

自分は腫れている、と言う自覚があるのだけれど、耳の後ろだと見えないところが困る。見た目は大したことがなくなっているんだろうか。

 

診断書もお願いします、と言うと、看護婦さんが、

えっ、でもそれは費用が掛かりますよ、と言う。

でも、航空会社に提示するためなので。さもなくば保険会社。

 

いずれにせよ、そのために来た意味もあるのだから、これをもらわないで帰らない訳に行かない。

さて、診察料はというと、診察代が3000円ちょっとほど、診断書がやはり約3000円、と、なんとほぼ同じ料金。

なるほど、看護婦さんが、そんなことしてまでも、とおっしゃるわけである。

そして、薬代が1500円ぐらいで、大体8000円の出費。

 

そんなもんなんである。

保険なしで診察してもらうと。と言うことは、普段は診断書などいらないのだから、5000円ぐらいですむ、ということだ。おもちろん診察の内容に寄るだろうけれど、ちょっとした病気だったら、保険なしでも恐れず病院に行っても良いかもしれない。

出された薬の内容は、塗り薬がステロイド剤、飲み薬が抗ヒスタミン剤、と想像通りで、虫刺されだろうが、かぶれだろうが、結局同じ薬を出されたと思われる。

市販の薬よりは効くかな、と思いつつ、とにかく面倒な診察をクリアーした。

 

さて、今度は航空会社に直談判である。

 

まだつづく。

実は総合病院は混んでいるかもしれない、と思って、もう一軒候補を上げていた。

ただ行ったことがないからそれで2番目候補にしていたのであった。

 

今は何でもネット。

携帯はイタリアから持ってきてWifiを借りたので、イタリア国内と同じように使える。

電話も今はネットを使った様々なサービスがあるので、昔のように電話が使えない悩みも無くなった。

 

で、ネット検索で近隣の皮膚科を検索し、評判が良さそうな場所を見つけていた。

総合病院の外にいて、今度はグーグルマップで行先を検索。

歩いて何分。道順も教えてもらって、無事に到着。

 

結構混んでいた。早速受付にさっき言われた150%負担の話をし、総合病院でもらった説明書きの紙も見せると、

「150%ってどういう意味でしょうね。意味が分かりませんね」

と言う。

うちは100%負担です、普通はそうだと思います、と言うので、普通を選ぶことにした。

 

番号札を取り、長時間の待合を覚悟。


仕方がない。

帰国するといつも何かしらのトラブルが起こるので、これで全部付きは落とせると思い、諦めた。

 

受付で、自分は海外から帰ってきて健康保険未加入であることを伝えると、自己負担は150%支払っていただきます、と告げられた。

え、100%ではなくて150ですか?と聞き直すと、そうだ、と言う。

 

当院では50%を手数料としていただいているので、保険証をあとで持ってきていただいても50%の手数料は戻りません、と言うのである。

 

つまり1万円の診察料が掛かったとしたら、保険証を持って来なかったらプラス5000円かかるということだ。

 

ただ単に保険証を忘れていたら、それはお手間お暇をかけて手続きを取らすのだから手数料を取られるのはまだ考えられないことはないとして、そうだとしたら、保険証を持ってきてもらった時点で手数料をとればいいではないか。
本当に保険が払えなくてギリギリで仕方なく自腹を切る覚悟で病院に来てこんなことを言われたら、まさに泣きっ面にハチである。

 

と、その時はそこまで深く考えてはいなかったが。

 

ただ、当院はそうですけど、他は100%だと多分思いますので、考え直していただいても、と言われたので、

あ、そうですね、ちょっと外に出て考え直します、と言って外に出たのであった。

 

私立の病院ではない。

公立病院のやっていることであるという事実は衝撃的である。

 

まさに弱い者。

 

そして私は振出しに戻ってしまったのであった。