"Recondita armonia" | Je Veux Vivre

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プッチーニのオペラ『トスカ』の第一幕、聖アンドレア・デッラ・ヴァッレ教会でカヴァラドッシが歌う"Recondita armonia"(妙なる調和)はトスカの中でも大好きなアリアの一つだ。『トスカ』においてテノールの最大の見せ場の一つでもある"E lucevan le stelle"も素晴らしいのだが、第一幕の束の間の穏やかなひとときその場に不在のトスカに向けて愛を歌うこのアリアは絶品だ。

 

カヴァラドッシが壁画を描きながらその前で歌うことが専らで、教会の堂守であるサグレスターノ(バリトン)が"Scherza coi fanti e lascia stare i santi!"と響かせる低音の旋律も絶妙だ。カヴァラドッシの食事や身の周りの世話をしているサグレスターノは、革命、拷問と処刑また主人公の悲恋と投身という『トスカ』の暗く血なまぐさいストーリー展開の中で唯一コミカルな演出がなされることも多く、ユーモアを感じさせる登場人物だ。僅かな登場時間ながら観客の心を和ませる重要な役割を果たしていると思う。

 

ルチアーノ・パヴァロッティ(ナショナル・フィルハーモニック管弦楽団)

 

 

 

ヨナス・カウフマン(ジョナサン・ケント演出・ROH)

 

 

ロベルト・アラーニャ(リュック・ボンディ演出・MET)

 

 

ヴィットリオ・グリゴーロ(パルマ王立劇場管弦楽団)

 

 

 

トスカへの一途な恋心を歌う甘美な旋律だが、カヴァラドッシが描くマグダラのマリアのモデルの女性の存在が嫉妬深いトスカの誤解を招いてその後の悲劇を招くというストーリー展開にあって、その伏線となる重要なアリアでもある。不穏の種が燻るアリアだが、やはり聴くたびに胸が高まる大好きなアリアだ。