この発言も無神経と言うべきか、爆笑と言うより完全に礼を失していて、いくらカンヌで品なく歩くタレントとはいえこれにはさすがに同情してしまう。
デビューして僅か数年のタレントが、公然の場で事務所の顔とも言うべき先輩の顔に敢えて泥を塗ることがあるのか。日本のTV番組を見ない私でも知っている程なので、誰でも知る曲だろう。ましてや先輩の代表曲なら。ジョークのつもりで言ったのだとしても全く面白くない。
"Pure Invention: How Japan's Pop Culture Conquered the World"(Matt Alt, 2020)という日本のポップカルチャーを研究対象とした日本文化論の著作がある。著者は
"they might have been singing about Japan, slogging through a recession so prolonged that some were beginning to wonder if it might ever lift(p.181)"
「これから上向きになることがあるのかと人々が考え始めるほどの長引く不況を、重い足取りで歩く日本のことを歌ったのではないか」
と、この曲が当時の日本の世相を表していたと指摘している。よほど完全にニュースや情報を遮断しない限り、誰の何の曲かは皆知っているだろう。
※そもそも課題曲や試験の曲として与えられてトレーニングしないものなのかと疑問が湧く。アナリーゼ、ソルフェージュとは言わないが最低限「自分のジャンルの過去の作品」ぐらいは勉強しないものなのか。
ichibanという曲は「世界に一つ」を真っ向から否定したアンチテーゼ(Antithese)なのかと思いきや、これらの言動を見聞きする限り、そうした作品の意図やメッセージというよりも、そもそも作品を最初から認めてすらいなかったのではとさえ思わされる(つまり対抗するに値しないと考えているのでは、ということ)。
・三島作品で「自分大放出」、Vサインで「いぇいいぇい」
・LAでの作曲者への態度
・Grammyを狙う発言
・神社でお焚き上げを蹴る仕草
この件を含めどれも全て関わる人々や作品に対する敬意を微塵も感じられないという点がこのアイドルたちに共通するように見受けられる。なぜこのようなグループが誕生したのだろう。
歌詞ではichiban, ichiban, No.1と繰り返しているが、「売り上げすら一番に達していない」らしいというアイロニー。少なくとも今後も日本のポップカルチャー論の「研究対象」とされるような作品になることはないのではないか。
"You don't always need to be number one." — "The One and Only Flower in th World"