小説NO.67 ~ ティング最終型、との決着 ~
ティングの中では、2匹の小さな悪魔に追われながら、サラが隙を見ては、矢を放っていた。
先ほど健司が羽を切り落とした瞬間、体の中の2匹の悪魔の動きがピタッと止まったのだ。
すかさずサラは矢を射る。
一匹の悪魔に命中した。そして下半身は矢の勢いで吹っ飛んだ。
しかし、奴等は痛点がないのだろうか・・・。
上半身に残っている腕で、相変わらず追いかけようとしてくる。
サラはまだ鈍くなっている悪魔の動きを読み、もう一方の悪魔にも矢を放った。
こちらの悪魔は上半身を狙った。
少し読みが外れてしまったものの、下にそれただけだったので、こちらも下半身が吹っ飛んだ。
(よし!)
サラはそう心で叫んだが、実際、自分の命は1時間しか持たない場所にいる。
彼女自体も、段々と自らの「気」が失われていっているのに、気がついていた。
ティングに取り込まれる前のサラだったら、矢が命中すれば、一撃で悪魔くらい、倒せたはずである
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サラの活躍からか、朱音と健司の目の前では、再び悪魔・ティングは呻き声をもらした。
動きが、鈍い。
そこをすかさず、健司は狙う。
朱音は、健司が角に狙いを定めているのに気がついたため、自分は残りの羽に、飛び掛った。
スパーン・・・パキッ
という角の割れる音。健司の速さ、「気」にかかれば、一撃で角2本を砕くことは難しくない。
相手が通常の動きを見せていれば話は別だが・・・。
朱音も羽にうまく朱鳳凰を振り下ろす事ができた・・・が、なぜか切り落とせない。なぜ・・・?!
実は先ほど1枚の羽をやられた瞬間から、徐々に残ったほうの羽は彼の治癒力によって、
強化されていたのだ。
無いものの力を補う機能。
それは、例えば腕を失った人が口や脚で字を書いたりできるようになることがあるのと類似している。
ティングの場合、元々の「回復力」、「気」が尋常でないため、数分でそれができるようになるのだ。
(か、硬い!!)
朱音はこのままではだめだと気づくと、朱鳳凰に呼びかけた。
「朱鳳凰、その力じゃだめよ!私も気を込めるから、
もっと強く羽ばたいて!!」
キュィーーーーーーン・・・・・!!!!!
朱鳳凰は渾身の力を込めて燃え上がった。朱音も自らの力を全身から、朱鳳凰に伝達する。
「ぐ・・・きさまぁ!!」
悪魔・ティングが朱音を腕で吹っ飛ばしたのと、
ミシミシ・・・・・ごぉぉぉぉぉ!!!!
という音を立てて、羽が朱鳳凰に燃やされたのは、同時であった。
「やったわ・・・」
朱音はヘトヘトになり、床に崩れ落ちる。
「朱音!」
健司は叫んだ。しかしここで朱音を治癒している時間はない。
戦いはじめから既に40分ほど経過している。
あと20分もしたら、サラは完全に魂を悪魔・ティングの体内に呑まれ、死んでしまう。
そしてティングはその魂をもとに、復活するだろう・・・。
(あと、牙だ・・・牙は的が小さい・・・。1本ずつ狙っていては、時間も俺の体も持たないな・・・。
朱音は今、力を使い果たしている状態だし・・・。)
健司はふらつきつつもまだ、ギラリと牙を覗かせ、不敵に笑うティングを見て、
どうしたものかと考えた。
そこで健司は、いちかばちかで、ティングの体内にいる、サラに呼びかけた。
「サラ!聞こえるか?今体のどこに、自分がいるか分かるか??」
耳元に、サラの元気を失った声が、届いた。
「い・・・ま。お腹・・・かな?さっきは、胸・・・にいた。でも、もう・・・溶けそう・・・あたい・・・。」
(腹か。じゃあ、多少荒っぽく、頭に突っ込んでも大丈夫だな・・・)
健司は日本刀を両手で右手に持つと、左手を拳にして、グッと気を込めた。
健司の腕に、血管が浮き出る。
ボワッ!
健司の左手には、何と、シュリの「気の剣」と似たような剣が現れた。
実は健司、一度、他人の技を受けると、ものによっては、その技を習得できる能力があるのだ。
「自らが築いた世界に住む者の技」だからだろうか、
本人もそれがなぜかは、分からなかったが。
(自分の技じゃないからな、コントロールは慣れないが、
どうにか・・・体力がもってくれる事を祈るぜ!!)
健司は二刀流状態になると両手を広げ、自らが竜巻になったように、ティングに突進した。
まるで大きなドリルがティングの顔目掛けて投げられたように・・・。
「お前も飲み込んでやる( ̄▽+ ̄*)」
ティングは大きく口を開けて構えた。健司はそのまま口の中へ・・・・・
どっっっっががががーーーーーん・・・・!!!
何が起こったのか・・・。
健司はティングを突きぬけ、「壁」にぶつかり、傷だらけになりながら、「いててて・・・」と、身を起こした。
手には、砕けて原型をとどめていない、4本の牙の破片を握って…。
悪魔・ティングが呑みこもうとする力よりも、
健司が前へ突進する回転技の力が勝っていたのだ。
後ろには、ティングの姿は、もうない。中枢となっていた部分、
全てを奪われた彼は、
もう、死界へと、消え去っていた。
サラは、サラは・・・無事だろうか・・・?!
小説NO.66 『 ティング・最終型 』 前編
(ここは不思議だ・・・。サラは黒い物体に触れた瞬間から、焼けたように苦しんでいた。
なのに、私は今こうして、ここにいる。あの飛まつ物の中に・・・。
しかも、中に入ってみると、何て広いのかしら、ここは・・・。サラがどこにいるのかわからない。
それでも目は開けていられるし、呼吸もできる。ここはなんなのかしら・・・?)
朱音は飛び込んだ真っ黒な世界の中を泳いでいた。あまり泳ぎが得意ではないが、
呼吸ができるなら、どうってことはない。
・・・ふと、背後に人の気配を感じた。健司である。
「と、父さんΣ(・ω・ノ)ノ?!何で父さんまできたの?!」
黒い沼のような中を泳ぎながら、朱音は後ろから突いてきた健司にそう言った。
「なんでって。お前だけじゃ危険だ。わりぃが、シュリとルースには先に行ってもらったよ。」
健司は平泳ぎで朱音に追いついた。
中はとにかく重力がおかしいスライムのよう。
ひたすら二人は、サラを探す。
「なーに。来ちゃったわけ?わざわざ死にに:*:・( ̄∀ ̄)・:*:??」
暗黒のぬかるみの中、声が聞こえた。ティングに違いない。女の声?!
目を凝らすと、前方に小柄な女の子?らしき人が見えた。
頭から2本の角が生え、牙を光らせる、悪魔のような羽を生やしている。
「・・・なんてこった・・・?!」
健司は朱音より視界が鮮明らしく、歯をくいしばっている。
何が起こったのだろうか・・・。
朱音は思いっきり集中してその悪魔を見た。・・・え?!
サラである。まぎれもなく、悪魔の姿をしているのは、サラだ。
「さ、サラちゃん・・・?!」
朱音は思わず呼びかけた。しかしその悪魔はふふ・・・と、笑うとこう言った。
「サラの魂と気はいただいた。小回りが利くから、体もね。私は悪魔・ティング。
『サラ』なんてしらないわ?」
「じゃ、じゃあサラは?!どこへ行ったんだ?!」
健司が問いただす。
「私の中で眠っているわ。恐らく永遠に、ね( ̄ー ̄)段々侵食されていくの。
1時間もたてば、命なんてないわ。」
その応えに、2人は愕然とした。
(まずい、1時間以内に助け出さなくては、サラは死んでしまう・・・)
健司と朱音はアイコンタクトで意思疎通をした。
「私たち2人で、サラを助けるわ。」
朱音の言葉に、ティングは爆笑した。
「やってみなさいな。私が苦しめば、仲間も一緒に苦しむのよ?さ、どうぞ。」
「・・・・。」
どうしたら、いいだろうか。
朱音も健司も良い方法がないものかと考えた。しかし、攻撃以外にティングを倒すことは難しい。
「ほぉら、できないのね。情けないわ( ̄ー ̄)」
そういうと悪魔・ティングはピョンッと飛び上がり、朱音の首筋に噛み付いた。
「きゃぁあああ!!!」
叫ぶ朱音。
(血・・・血を吸われている・・・こいつ、吸血鬼?!)
それを見た健司は急いで朱音からティングを突き放すため、
日本刀でティングの悪魔の羽を片方、切り落とした。
サラになかった牙や羽、角、は悪魔の体だ。危害を加えても大丈夫な可能性が高い。
「な、なにをする・・・!!!もうすぐでこいつの魂も、取り込めたのに!」
ティングは、朱音の首筋から飛びのいた。
朱音の首には、強く掴まれた痕と、牙の刺さった傷跡が赤く残っている。
「くそぅ、うう・・・」
予想外に苦しむティング。何故?片方の羽がなくなっただけでそんなにも苦しいのか?!
もがき苦しむティングの中から、聞きなれた声、そう、サラの声が聞こえた。
「私もこの中で・・・体の中で戦っているわ。2匹の悪魔と戦っている!
こいつはね、体を持たないのよ・・・
つまり羽、牙、角。ここだけが彼の中枢。そこさえ破壊すれば、ティングは死ぬわ!」
その言葉を最後に、サラの声は、再び聞こえなくなった。
「サラ、今、2匹の悪魔と戦っているといったよな?
・・・ってことは、だ。ここにいるティングを倒せば、中の2匹も死ぬ。
今俺たちは「3人分の魂」と戦っているんだ。
今ここにいる『体を持たないティング』は最終型ってことか。こりゃ、何をしてでも倒さねば!」
健司は朱音にそう言い、グッ(・ω・)bと親指を立てて見せた。
朱音も頷く。
中枢は2枚の羽・2本の角・4本の牙。そのうち、1枚の羽は既に切り落とした。
中でサラもがんばっているのだ。一人で・・・。
朱音の首筋はジンジンと痛んだが、血を吸われかけたところで助かったため、
無事だったのだ。
悪魔・ティング。最終型。
何としてでも、倒さねば・・・ならない!
小説NO.65 「再び、分かれし仲間たち・・・」
もごもご・・・。
倒れた少年の姿は真っ黒になり、アメーバのようにうごめいていた。
そのとき、シュリはゆっくりと瞳を開けた。
「シュリo(〃^▽^〃)o!!」
朱音も、サラも、ルースも、健司も笑顔で彼の復活を迎え入れた。
健司は、何たる回復力だろうか・・・。
シュリが起き上がる頃には血も止まり、傷も口を塞いでいた。
「おっちゃんも、シュリも回復かぁ!あー、よかった(*^▽^*)!」
ルースが笑顔ではしゃぐ。
「みんなありがとう!朱音、本当に助かったよ!!」
シュリも笑顔でそう言った。・・・が、黒くうごめく物体に気づいた瞬間、
「みんな、気をつけろ!伏せてくれ!」
そういって自分はその物体に剣を向け、突っかかった。
回復した瞬間にもう攻撃を仕掛けるシュリに驚きつつも、4人は言われたとおり床に伏せた。
シュリは気の剣でその物体を突いた。
ティングが次の変化を起こす前に、それを止めようとしたのだ。
「ぷぎゅっぅぅうううううううう・・・・・・」
アメーバのようなその物体は、気味の悪い声を上げ、風船の空気が抜けたように萎んでいった。
「間に合ったか・・・」
シュリがそういったとたん、萎んだアメーバ状の物体は
があぁぁあぁあぁあぁああぁぁぁぁ!!!!!!!
・・・と言う悲鳴のような声(音だろうか、)をあげて、四方八方に飛散した。
「な・・・?!」
シュリは急いで身をひるがえし、その物体の飛まつ物を避ける。
床に伏せていた朱音、ルース、健司はあっけにとられてその光景を眺めていた。
しかし飛まつ物は天井に向けて飛び散ったため、彼らはそれに触れずにすんだ。
黒い飛まつ物が付着した部分は、ジュワー・・・っと焼け焦げている。
そのとき、
「あああああぁぁぁ・・・!!」
という聞きなれた声がした。・・・サラだ!
急いで4人が振り返ると、そこには一番大きな飛まつ物に体ごと飲み込まれてしまった、サラの姿・・・。
サラは皆がまだ伏せている瞬間に、少し焦って腰をあげてしまったのだった。
もがくサラを見て、4人は声も出ない。
「ど、どうするよ、え?!どうすれば・・・」
ルースは2本の剣を握り締めたものの、切り裂いてしまえばサラまで殺してしまうし、
どうすればいいのかわからなくなっていた。
健司も朱音も、もちろんシュリも同じこと思っていた。
その瞬間にもサラはどんどん呑まれ、姿が見えなくなっていく。
「・・・このまま放っておいてもサラが死んでしまうだけよ!」
朱音はそう叫ぶと、体ごと、黒い物体の中へ飛び込んでいってしまった。
「な、朱音まで!!!」
シュリは頭を抱えた。どうすればいいのか・・・。
健司はシュリとルースに伝えた。
「どうなるかわからない。しかし、俺も行ってくる。お前たちは先に進め。
王のところへ・・・!俺たちの心配はするな。また、みんなで会えるさ。
じゃあ、な!」
黒い物体は朱音を含んで更に大きくなっていた。
健司は振り向きもせずに、そこに飛び込んでいく。
「・・・岩砕のおっちゃん・・・朱音ちゃん・・・サラ・・・。」
ルースはただ、ただ、呆然としていた。
突然すぎる事態に、頭がついていかないのだ。
「・・・。ルース。いいか、僕たちは、王のところに、・・・行くんだ!
朱音と岩砕殿が、ティングからサラを助け出してくれるさ。信じるんだ!!」
シュリは瞳に涙を溜めつつも、決してそれをこぼさぬよう、ルースの肩をゆすった。
グラグラとゆすられ、ルースも徐々に状況がつかめてきた。
(俺と、シュリは先に進まなきゃなら・・・ねぇ。
みんなまた・・・会える、んだ・・・。そうだ・・・。)
「お、おう!解ったぜ、シュリ、行こう!ウルウルしてんじゃねぇよ!行こう!」
ルースは無理してシュリに笑顔を見せ、今度はシュリの背中をパンっと叩いた。
笑顔ながらも、ルース自身、目が潤んでいたことに、本人は気づいていただろうか。
ここで、また2手に分かれる事になった5人の戦士たち。
朱音と健司は、ティングの手からサラを救うため、黒い世界へ・・・。
シュリとルースは、仲間を信じ、ひたすら前へ・・・。
今は、互いのグループはひたすら信じ、ただ前へ、進むのみなのだ・・・!
それしか、できないのだから。
小説NO.64 ~ 二変化目のティング ~
雪男の体は、まるで「気ぐるみ」であったかのように、バサッと凍った床に落ちた。
「よぅ、俺も、ティングだから!よろしくな!」
ニカっと笑う少年。
見た目の年齢は13~15歳くらいだろうか・・・。
青いハチマキを額に巻いて、まるで「新撰組」のような格好をしている。
悪いやつとは、思えないほど、綺麗な瞳をしている。
「さっきは弱い俺(ティング)から出していったけど、ちょっくら日本刀持った人が暇そうだったからよ。
わざわざ俺が出てきたってわけよ。ちなみに俺、ティングの中でNO.3か2・・・かな( ̄▽+ ̄*)」
アハハ、っと声をあげて笑う姿は、無邪気なのに、こいつも王の邪悪な兵なのか・・・。
「日本刀を持った暇人と戦いたいのか?俺はいつでもOKだよ☆-( ^-゚)v?」
健司は耳をポリポリ掻きながら言う。
「へぇ~。余裕だね・・・」
そういった瞬間、少年の瞳は緑色に変色した。口からは、牙が上下4本、伸びる。
(こいつ、やべぇよ。気がどんどん上がっていくぜ(((( ;°Д°))))!)
ルースは、健司とティングの会話を見守りつつ、冷や汗をかいた。
シュリはまだ瞳を閉じている。しかし顔色は良い。もうすぐ目覚めるだろう。
(早く目覚めて・・・シュリ・・・)
朱音は朱鳳凰と共に熱を注ぎながら、必死で願った。
「キミ。若さからか、戦いに飢えてるんだね。先にかかっておいでよo(゜∇゜*o)」
健司はいつになく、ラフである。
戦うときはいつも真剣。目の色が違う。・・・それが健司のイメージだったので、サラもルースも朱音も
少し驚いていた。
「そうかぃ?じゃ、行かせて貰うぜ?」
牙をギラリとむき出し、先ほどの爽やかさを無くした少年・ティングは、溢れる緑の気を
抑えられぬのか、全身から緑色の蒸気を放ち、健司に飛び掛った。
日本刀同士の戦い・・・。
「ドライアイスみたいな気だな。溢れ出てるぜ?」
健司は彼の攻撃をひらりと交わし、日本刀でティングの日本刀を払った。
「む・・・」
ティングがそう呻いたところを健司は逃さない。背中から強く切りつけた。
音もなく健司の刀がティングの背中を裂く。
するとどうだ。
少年・ティングの羽織の下からは、悪魔のような羽が姿を現した。
「お前、6人をきっちりコントロールできてないんじゃねぇのか?
3人目さんがすこーし見えちまってるぜ?
その牙も、本当はお前のものじゃないんだろ。餓鬼ティングよ、自分で自分を強く言うやつほど、
実は弱いんだ。
残り4人のティングはお前を時間稼ぎくらいにしか思ってねぇよ。
次のヤツの、準備時間程度、にしかな!」
健司の言葉に少年は怒りで震えだした。
「うるさい!黙ってろ!くらえ、俺の技を!」
そう言うと少年・ティングの姿は10人ほどになり、健司を囲んだ。
分身の術。この少年は、これを技としているようだ。
「・・・。」
少し意外な展開に、健司は黙った。分身を見分けるのはさほど難しい事じゃない。
気の一番強い者が本当の敵である。
しかし・・・
この少年の場合、気が一定なのだ。10人とも、全く同じ。
分身というより、単に少年・ティングが10人になったように感じる。
「ぐは・・・!!」
健司はと惑った瞬間を見抜かれたのか、後ろから、背中を切りつけられた。
健司の血が・・・飛ぶ。
(集中するんだ・・・分身には違いない。ただ、技のレベルが高い・・・。俺は死ぬ事はないが、
やられようによっては・・・頭輪が死界に引き戻す可能性がある。
それだけは避けねば・・・。)
その後も四方八方から健司は攻撃を受けた。今はひたすらに、その刀を受け続けた。
自分から攻撃する事はなく・・・。
手がかり。
それを健司は探っていた。何か、あるはずなのだ。
何か・・・。
10人全ての攻撃を受け、徐々に攻撃のタイミングなどが掴めて来た・・・その時。
(ん?・・・ほぅ、そうだったのか!)
健司はあることに気がついた。
「残念だったな!読めたぜ!」
そう言うと健司は10人の中の一人を選び、全身から気を刀に集中させ、そいつを切り裂いた。
外から見ていたら、1回切ったようにしか見えないだろう。
しかし健司はその「1回にみえる攻撃」の中で、8回の切りを加えていた。
「・・・ふぁ・・・っ・・・?!」
そう声を漏らすと、少年・ティングは倒れこんだ。9人の分身はいつの間にか姿を消している。
「な、何で分かったんだ?!」
健司の出血を押さえに駆け寄ると共に、ルースは健司に尋ねた。
「はは・・・、案外単純だったよ。「気」ばかりに集中してて、気がつかなかったんだ。
彼のハチマキ、あるだろ?本物は、既に3人目の瞳が、そこから一瞬、透けて見えるときが
あったんだ。分身は、あくまで「少年・ティング」の分身であり、
3人目の彼までは・・・分身にはついて回ってなかったんだよ。」
健司が攻撃を10人から受けながらそこまで観察していた事に、ルースは驚いた。
「ま、次もまだ居る、からな。早いとこ治してくれよ・・・(^ε^)?」
いつもの健司の表情。
ルースはホッとした。
倒れたティングの体は、モゴモゴと、変形を始めていたが・・・。






