ロシアのウクライナ侵攻から2年 来日したボグダンさんの重い一言 | シネマの万華鏡

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ロシアのウクライナ侵攻から今日で2年。

国際決済ネットワークであるSWIFTから締め出せばロシアはすぐに行き詰まる、という当初日本の有識者たちがメディアで断言していた話が全く絵に描いた餅だったことが分かってからも、ずいぶん時間が経ちましたね。今や主要メディアですら「一部戦線でウクライナが劣勢であるとの情報」も伝え初めていますが、まだまだ戦争が終わる気配はありません。

つい先週、アメリカ・ウクライナの駐日大使が日本で会見を開き、ウクライナが勝利するまで戦争を継続する強い意志を表明しています。

 

(左がエマニュエル米国大使・右がコルスンスキーウクライナ大使。2人が掲げたウクライナ国旗は折り鶴で作られていて、日本への支援要請を示した形)

 

このニュースを観ていて、ふと頭に浮かんだのが、1967年版『日本の一番長い日』の中の、

 「外相、もうあと二千万、二千万の特攻を出せば日本は必ず、必ず勝てます!」

というセリフ。

多くは書きませんが、生まれてこの方戦争の愚かさを頭に叩き込まれてきた日本人の皆さんには、私が言いたいこと、分かっていただけるんじゃないでしょうか。

 

そんな中、ウクライナで日本からの支援物資を前線や戦場の村に届ける支援を行っている、日本育ちのウクライナ人ボグダン・パルホメンコさんが来日。侵攻開始以来初めてのことです。

ボグダンさんのyoutubeはこの戦争が始まった当初からフォローしていて、毎回ではないですが視聴を続けています。

いつも笑顔で支援を呼びかけ、現地の情報を伝えてくれるボグダンさんのチャンネル。戦争のストレスが大きかったのか、この2年の間に元大臣だったお祖父さまが亡くなり、ボグダンさんがとてもかわいがっていたヨルカちゃんというわんこも死んでしまいました。支援仲間や知り合いの兵士も、何人も亡くなったようです。それでも、これまでボグダンさんが戦況について悲観論を語ることはありませんでした。

でも、今回日本で口を開いた彼は少し違っていた。

下の関西テレビの放送、ぜひご覧になってみてください。

 

 

穏やかな笑顔は変わらないし、支援への感謝を語る姿勢も変わらないけれど、戦場で片手片足を失った友人を見舞いに行った時の話をして、「彼はゼレンスキー大統領に勲章を授与されたが、彼が失ったものの大きさには見合わない」とボグダンさんははっきりと語っています。

さらに、今も7割以上のウクライナ国民が「領土問題に妥協はできない(戦争継続を望んでいる)」というアンケート結果に対して、「徴兵される可能性がる男子だけを対象にアンケートを行えば、大きく違った結果になるはずだ」と言い、「今や政府が言うような完全勝利はありえない。侵攻2年のこのタイミングで現実的な着地点を探す必要があるのではないか」と言っています。

前線に物資を届け、積極的に支援活動を行ってきた人の意見だけに、重い言葉。停戦交渉が法律で禁じられているというウクライナで、この一言を言うだけでも大変な勇気が必要だと思います。

ボグダンさんの叫びともいえるこの一言を聞いてしまった以上、誰かに伝えなければならないという思いに駆られて、記事にしました。

ちなみにこのタイミングで、NHKはウクライナ大統領府副長官のインタビュー特集を組み、「完全勝利以外、選択肢はない」という副長官の言葉を伝えています。NHKはボグダンさんに密着したドキュメンタリー番組も作っているのだから、侵攻2年ということでボグダンさんにインタビューしても良かった。でも、そっちじゃないんですね。あっちなんですね~。

毎年夏になると、日本人が大本営発表に騙されて戦争の泥沼にはまっていく過程を検証しているのに、現在進行形の事態は検証しない不思議。

 

もう1つ不思議なこと。先週19日、日ウクライナ経済復興推進会議という会議が日本で開催されたらしいですね。戦争継続を支援しながら復興支援?

わかりません。全然わかりません。