ウクライナ侵攻2年の今、立ち止まってミアシャイマー教授の声を聞こう! | シネマの万華鏡

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映画記事は基本的にネタバレしていますので閲覧の際はご注意ください。

またまたウクライナの話題、せっかく来て下さる方もうんざりされてるかもしれませんね。

もうこれ以上ウクライナ戦争の話はやらないので、最後にこれだけ!

ぜひぜひこれだけは、スルーしないで読んでいってくださると嬉しいです。

 

ロシアのウクライナ侵攻2年ということでウクライナの話題がメディアをさらった三連休、こんな↓動画がアップされました。

 

 

アメリカのPBSニュースアワーという番組でつい先週行われたウクライナ情勢に関する有識者鼎談に、日本語で意訳を付けたもの。訳してくださっているのは、アメリカ在住の実業家でアメリカの現状に関する著作も出されている山中泉さんという方です。(ちなみに私は山中さんの著書を拝読したことがきっかけで、時々youtubeも覗かせていただいています。)

 

 

 

この鼎談の注目すべき点は、知る人ぞ知るアメリカの国際政治学者ジョン・ミアシャイマー氏(現シカゴ大学教授)が出演していること! 

ウクライナ戦争に対してバイデン政権とは全く異なる見解を持つミアシャイマー氏は、いわば異端者。この2年間も凄まじい毀誉褒貶に晒されてきた人です。ネットを検索すれば、「ロシアに味方する陰謀論者」「ロシアのプロパガンダに利用されている」といった、氏の権威を卑小化する記事がざくざく。異端の論客ゆえに、体制側のメディアに登場することもないようですね。

そのミアシャイマー氏を今回体制派メディアが出演させたこと自体、ウクライナ戦争に対する世論の潮目が変わりつつある兆し、と見た山中氏が、今回この番組を日本人向けに紹介してくださったわけです。

 

この鼎談、短くて分かりやすいし、面白いんですよねえ。

3人の論客のうちの2人(1人はカーネギー・エンダウメント教授、1人はハドソン研究所の研究員)は戦争継続・支援強化派。

ハドソン研究所の研究員の女性は、今の支援では手ぬるいとばかりに、ロシア国内を攻撃できる強力な兵器を提供しろとまで言っていますね。

それに対して、ミアシャイマー氏は「ウクライナはすでに敗北した」と発言している。もう去年の秋あたりから囁かれている話ではありますが、アメリカ政府が大統領選を前に戦況好転のための支援を叫ぶ中、当のアメリカの公共の電波でこういう発言が聞けるのは、なかなかの驚きです。

アメリカについては最近治安悪化など良くない話題が多いですが、でも、こういうのを見ると、まだまだ自由の国なんですね。

勿論、他の2人はミアシャイマー氏の意見を全面否定しています。

しかし、ミアシャイマー氏はその反論を、ほれぼれするほど鮮やかに論破しているんですよね。

理屈で反論できなくなったカーネギー・エンダウメントの教授は、

「今劣勢の局面で停戦したらロシアの思うツボだ、今停戦してはならない」

と、感情論で押し始める。ハドソン研究所の女性は

「強い武器さえあればまだまだ戦える」

と・・・前回も書いた『日本の一番長い日』の、

「あと2千万!あと2千万の特攻を出せば・・・」

というセリフがまたもや頭をよぎります。

今、アメリカとEU・イギリスで上映すべき映画。

現実のウクライナの徴兵可能能力や兵器の生産可能性に基づいて、実現可能な議論をしているのは、3人の中でミアシャイマー氏だけです。

 

「陰謀論者」「ロシアの回し者」というレッテルに反して、この鼎談でのミアシャイマー氏の発言が説得力あるものだったので、もっと話を聞いてみたくなり、ミアシャイマー氏の講演やポッドキャスト番組での発言に日本語訳を付けてくれた動画にたどり着きました。

 

ウクライナ戦争の見通しを語ったのがこちら。感情論を排した、非常に冷徹な意見です。

 

 

3,000万回視聴されたという、2015年のミアシャイマー氏の講演の日本語訳版。この当時すでに、2022年のロシアによるウクライナ侵攻も予言しています。

 

 

さて、ミアシャイマー氏の意見は、正しいのか。

それは皆さんご自身で判断してください。

 

映画は時代の鏡。映画と世界情勢を切り離すのは不可能です。どんな時代に作られた映画も、どこかにその時代の空気が映り込んでいる。

ぜひ、ウクライナ侵攻2年のタイミングで、違う角度から世界を眺めてみてください。世界の見方が変わる、と同時に、映画の見方も変わるかもしれません。