大河ドラマ『麒麟がくる』12・13 泣き虫男と嘘つき女 | シネマの万華鏡

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うちのOttoが『太平記』の再放送を録画し始めて、このところ『麒麟がくる』の後に『太平記』の録画を観るのが定番になっています。

『太平記』、ヤバいです。足利尊氏を演じる真田広之の鋭角的で濃い顏、一挙手一投足、すべてがキレッキレに美しい!! 尊氏の父・緒形拳の昼行燈演技も冴えてるし、弟・高嶋政伸のねちっこさもイイ、母・藤村志保の京風の佇まいも・・・もう、足利家最高すぎて。こんなもの観たらまたまた大河期待値が上がってしまう。眼の毒ですね。

最近は『利家とまつ』が人気大河だったことになっていますが、あれこそ大河ドラマをつまらなくしたコスプレファミリードラマだと思う。歴史を知らなくても楽しめる歴史ドラマって一体何の意味があるのか、素でわかりません。それだったら現代劇のほうがすんなり共感できる分面白い。NHKが何故「歴史を知らなくても」にこだわるのか、チコちゃんに教わりたいくらいです。

 

12回『十兵衛の嫁』・13回『帰蝶のはかりごと』あらすじ

気を取り直してあらすじへ。今回は2話分まとめてみました。

12話では尾張の織田信秀が死去。これを機に嫡男信長と信秀の正妻・土田御前が溺愛する信勝との確執が表面化します。一方、美濃の斎藤道三と守護土岐頼芸との対立も深刻に。ところが道三の嫡男・義龍は、父親ではなく土岐頼芸の側につくことを宣言し、美濃もまた動乱の兆し。そんな中、光秀は叔父や母の勧めもあって幼馴染みの煕子と結婚します。

 

そして今回の13話。道三を挑発した土岐頼芸は道三の倍返しの逆襲に怖れおののいて美濃から退散し、内乱は避けられたものの、道三と息子義龍の対立はついに修復不可能な段階に。

不穏な空気が高まる稲葉山城に、尾張の反信長陣営から信長殺しの誘いがやってきます。娘婿の信長を裏切るべきか思案する道三。とりあえず信長の人物を見定めるべく、国境の正徳寺での対面を信長に持ち掛けます。

 

12話では明智秀満(間宮祥太朗)、13話では「これからは今川の時代」と今川義元に仕えて一旗あげようと三河へ向かうまだ名もなき秀吉(佐々木蔵之介)も初登場。

ただ、2人とも顔見せだけで、本格的な登場はまだまだ先という感じですね。

 

織田信長の蔭に賢妻あり!ってことで

この2回はなんと言っても帰蝶の活躍ぶりが見どころ!!信長を戦国のスーパーヒーローの座に押し上げたのはまむしヨメの内助の功だったようです。

前回、死の床にある信秀が末盛城を信長の弟の信勝に譲ると遺言したことに信長がつむじを曲げ、帰蝶の前で子供みたいに泣き出した時も、「父上の本音」を聴き出しに信秀の寝所まで出向き、瀕死の信秀に詰め寄ってみせたり・・・視聴者には聴きとれなかった信秀の言葉が、帰蝶が信長に伝えたところでは「自分によく似た信長が可愛い、尾張を任せる」となる。

それ、ノブたんが一番聞きたかった言葉ですがな。

もちろん夫を奮い立たせるために帰蝶が打った芝居でしょう。

まさに、泣き虫男と嘘つき女。昔は『泣き虫女と嘘つき男』が世の中の男女の定番の構図ってことになっていましたが、今は逆? 最近のフェミニズム全開のアメリカ映画を思わせる展開ですね。

 

13回でもまた帰蝶大活躍。父道三が信長に申し入れてきた対面にあたって、夫がマムシの道三に舐められないよう、根来から鉄砲を使える傭兵を呼び寄せるという才覚ですよ。

『信長公記』によれば正徳寺に向かった信長の隊列は鉄砲五百挺。父が鉄砲に興味を持っていることを帰蝶は知っていて、父が腰を抜かすような演出を仕掛けたんですね。むしろ信長のほうは会見を避けようとしていた中での、帰蝶の大胆な信長プロデュース。

道三でさえ鉄砲のことはよく知らなかった時代、帰蝶が一体どこから鉄砲を使う根来衆の話を聞きつけてきたのかちょっと飛躍がある気はしますが、もう帰蝶無双ということでOKでしょう。

でも、信長好きの私としては、信長がスケールダウンしてしまったようで、ちょっと面白くない・・・泣き虫ノブたんもいつかは自分で頭が使える子に成長するんでしょうか?

 

(安土城考古博物館の公式キャラまめのぶくん。そらまめ顔がカワイイ!)

http://azuchi-museum.or.jp/mamenobu

 

信長の側室たち

桁外れの天才・信長をプロデュースしたのは帰蝶、2人は形だけの政略結婚ではなく深い絆で結ばれた夫婦だったとすると、2人の間に子供はいなかったこと、その後信長がわらわらと側室を作り、一説には20人以上とも言われる子をなした事実とすんなりとつながりません。この辺をどうつなげるのかも、今後の見どころになってくるんでしょうね。

今の勢いでいくと、賢い帰蝶が信長に「(自分は子供が産めないから)家の繁栄のために側室をお持ちなされ」とすすめる、なんてこともありそうです。

 

信長の一番のお気に入りの側室だったとされているのは、生駒氏の女性。信長の嫡男信忠をはじめ、清須会議で有名な信雄、家康の息子信康に嫁いだ徳姫を産んでいることからも納得感はあるのですが、伊勢湾台風がきっかけで発見された古文書『前野家文書』(通称『武功夜話』)に生駒屋敷の吉乃としてしきりに登場することで、一時期かなり注目された人でもありましたよね。

ただし『武功夜話』の偽書疑惑が濃厚になってミソがつき、この文書の中にだけ登場する「吉乃」という名前もいまやすっかり聞かなくなってしまいました。

実は私、信長ものの歴史小説では津本陽の『下天は夢か』が大好きだったんですが、この小説も『武功夜話』をベースにしていたことですっかり評判を落としてしまい、残念です。

小説の土台にするのなら文書の信頼性も当然確認しておくべきだとは思いますが、それを小説家に求めるのはなかなか酷な気がします。でも、一方では歴史を扱う以上ギリギリまで史実を追い求めてほしいという思いもあるし・・・フクザツですね。

 

 

ところで、さっきwikiを見たら、信長の側室の中に明智光秀の妹がいたという説もあるんですね。

今回の大河では光秀にそもそも妹はいないんですが、これは帰蝶と光秀を利害対立させないための「配慮」なんでしょうか。

どちらにしても、史実として光秀の妹が信長の側室だったのだとしたら、信長と光秀の関係はやっぱりある時点までは親密だったと言えるんでしょう。信長と光秀の蜜月を描いた大河って記憶にないので、今回は蜜月から殺意への高低差をみっちり描いてほしいですね。まだ蜜月にまでも至ってない段階で早くも4月中旬ですが、この先どのあたりから光秀と信長の本格的な交流が始まるのか、待ち遠しいです。