東京国際映画祭の特別招待作品の選定基準って?(とっても素朴な疑問)
楽しみにしていた『ローガン・ラッキー』がついに公開されたので、さっそく観てきました!
監督引退宣言を取消したスティーブン・ソダーバーグの復帰1作目。
この映画、今年の東京国際映画祭では特別招待作品として上映されているんですよね。
のみならず、「スティーヴン・ソダ―バーグの世界 supported by American Airlines」なる企画も開催され、ソダーバーグ監督作『セックスと嘘とビデオテープ』や『オーシャンズ11』が上映されています。
ここで素朴な疑問。
私はコンペティション部門の参加作品3作+アジアの未来部門1作しか観ていませんが、どれも芸術性が高いのは勿論、世界の旬の話題を絡めたテーマで、国際映画祭の空気を満喫できる作品が揃っていました。
でも、「特別招待作品」のラインナップはそういうベクトルとは全く違うものが混じっていて、どういう選定基準なんだろう?と・・・
ちなみに今年の特別招待作品はこちら。
『エンドレス・ポエトリー』 (2016年/フランス=チリ=日本)
『牙狼<GARO>神ノ牙-KAMINOKIBA-』 (2017年/日本)
『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』 (2016年/アメリカ)
『シェイプ・オブ・ウォーター(原題)』 (2017年/アメリカ)
『写真甲子園 0.5秒の夏』 (2017年/日本)
『スリー・ビルボード・アウトサイド・エビング、ミズーリ(原題)』 (2017年/イギリス)
『泥棒役者』 (2017年/日本)
『巫女っちゃけん。』 (2017年/日本)
『Mr Long/ミスター・ロン』 (2017年/日本=香港=台湾=ドイツ)
『ミッドナイト・バス』 (2017年/日本)
『MUTAFUKAZ』 (2016年/フランス=日本)
『Ryuichi Sakamoto: CODA』 (2017年/アメリカ=日本)
『ローガン・ラッキー』 (2017年/アメリカ)
wikiによれば、特別招待作品は「エンターテインメント性の高い話題作を集めた」という定義になっています。
たしかに『ローガン・ラッキー』はまごうことなきエンタメ映画だし、話題性もありますよね。
ソダーバーグ久々の復帰作、ダニエル・クレイグにチャニング・テイタム、アダム・ドライバーという、それだけで観に行く気にさせる豪華キャスト・・・でも、そういう話題性って国際映画祭で求められてる「話題性」なのかな?
や、どうでもいいお話ですね。
では、本題へ。
ストーリーを知ってても楽しめる!
まあソダーバーグ監督自身が「地味なオーシャンズ」と言ってるくらいですから、ストーリーは聞かなくてもだいたい分かります。
そもそも、公式サイトでここまでネタバレされてますし。
足が不自由で仕事を失い、家族にも逃げられ失意の人生を送る炭鉱夫ジミー・ローガン(チャニング・テイタム)にはある企みがあった。それは、まもなく開催される全米最大のモーターカーイベントNASCARのレース中に大金を盗み出すという<前代未聞の強奪計画>―。
早速、戦争で片腕を失った元軍人で冴えないバーテンダーの弟クライド(アダム・ドライバー)と、美容師でカーマニアの妹メリー(ライリー・キーオ)を仲間に加えたジミーだったが、ツキに見放されてきたローガン一家だけでは頼りがない。
そこで、この大胆な犯行を成功させるため、爆破のプロで現在服役中の変人ジョー・バング(ダニエル・クレイグ)に協力を仰ぐ。彼を脱獄させてレース場の金庫を爆破した後、看守が彼の不在に気づかないうちに刑務所に戻すという作戦だ。
レース当日、ローガン一味は、何百万ドルもの売上金を運ぶ気送管設備があるサーキットの地下に侵入。全米犯罪史上最も驚くべき強盗事件は成功したかのように見えた…しかしFBI捜査官の執念深い捜査の手がすぐそこまで迫っていた――
(公式サイトより引用)
どんなメンツによってどんな犯罪が行われるのか?そしてどんな結果になるか?までが明かされているんですよね。
でも、ここまで知ってても大丈夫。ストーリーの大枠は予定調和ですが、クライム・ムービーのみどころはストーリーではないので――――
ローガンとネジのゆるい仲間たち
オシャレで全てにこなれたオーシャンやライアン+超個性的な犯罪のプロフェッショナルたちが巨額の現金強奪を仕掛ける『オーシャンズ11』シリーズと違って、(イケメンが演じてるのに)何かと垢抜けない素人犯罪集団のローガンズ。
でも、「こんなメンツでほんとに大丈夫なのか?」という、別の意味でアブナいところが妙にエキサイティング!
役作りとは言え(役作りですよね?)チャニング・テイタムの激太りにはかなりガッカリさせられたものの、地味クライム・ムービーに地味が身上の(ごめんね)アダム・ドライバーは超ハマリ役!!
個人的に好きだったのは、ダニエル・クレイグ演じる金庫破りのバングの弟たち(ブライアン・グリーソン&ジャック・クエイド)。よくコメディに登場する典型的なニコイチのおバカキャラなんですが、こんなにゆるくて犯罪者が務まるのかと、ほんとにヒヤヒヤさせられます。
『ローガン・ラッキー』というタイトルですが、これは多分に逆説的。
「ローガン家は呪われてる」というのがアダム・ドライバー演じるクライド・ローガンの持論で、ローガン家は、うまくいきそうになったところで地雷にぶち当たるという不幸な歴史を繰り返してきた、と彼は言うのです。
ということは、今回の犯罪計画もいずれ・・・?
一体今回はどこで地雷を踏んでしまうのか・・・そういうババ抜きみたいな面白さも、この作品には隠されています。
ハウ・ツーがお楽しみ。特に「アレの作り方」
しかしやっぱり一番の見どころは、あのジェームズ・ボンドことダニエル・クレイグが縞々の囚人服で登場するギャップ!
刑務所の面会室の自販機で売ってるゆで卵(2個入りパック)が好物というショボさもいいのですが、そのゆで卵がしっかり犯行に関連してるところがミソ。
『ファイトクラブ』では石鹸からも作れることになっていたアレの作り方が、ダニエル演じるバングのノウハウなんですよね。
公式サイトによると、脚本を担当したレベッカ・ブラントは、ネットでアレの作り方を調べたために、飛行機の手荷物検査簡略化資格の永久取り消しを通告されたとか・・・つまり航空会社(あるいは国家?)のブラックリストに載ってしまったわけです。
ネットの検索キーワード、しっかり国にチェックされてるんですね。。。こわ。
ところで、レベッカ・ブラントは今回が脚本家としての初仕事、しかも出演者は誰も彼女に会ったことがなく、架空の人物ではないかと疑われているそうです。
彼女の正体は一体・・・?
実はこの映画、最初に気になったのが、脚本は誰?ということでした。
犯罪のハウツーのアイデアはすごく面白くてひき込まれるんですが、ひとつひとつのエピソードがきっちりオチに辿り着かずスコーンと腑に落ちないもどかしさがどうも気になって。
事前にあらかたのストーリーは判ってるので、すぐ本題に入ってほしいのに、前振りが長く、会話のテンポが悪いのも、『オーシャンズ11』のキレの良さと比較してしまうんですよね。
「地味なオーシャンズ」も、地味ならではの面白さがあるということはすごく伝わってきたものの、娯楽映画としての完成度は、やっぱり『オーシャンズ11』シリーズのほうが上。
そりゃお金もかかってるし(『オーシャンズ11』は推定85百万ドル、『ローガン・ラッキー』は推定29百万ドル)、仕方ないことかもしれませんが・・・
ひっさびさの復帰作に何故「地味なオーシャンズ」を選んだんだろう??(これも素朴な疑問)
それにしても派手クライム・ムービー『オーシャンズ11』シリーズのソダーバーグ監督が、ひさびさの復帰に何故「地味なオーシャンズ」を選んだんでしょうか?
これ、「何故『ローガン・ラッキー』が東京国際映画祭に?」と同じくらい、疑問でした。
単純に、予算の問題?
だったら、『オーシャンズ11』とは全然違う方向性の、それこそ原点回帰で『セックスと嘘とビデオテープ』みたいな作品が観たかったな・・・
勝手な思い込みではありますが、監督復帰1作目ということで「どうしてもこれが作りたかった」的な意欲作を期待しちゃってた部分は正直あります。
でも、そういう熱っぽさは今作には感じなかったし、「またオーシャンズ的なものが観られて嬉しい」という以上のものではありませんでした。
今後続々と新作が公開されるようなので、新たな作品にも期待。
ソダーバーグってまだ54歳だし、そもそも引退宣言自体が早すぎたんですよね。
そうだ、ソダーバーグと言えばこれ、『恋するリベラーチェ』(2013年)。
大学時代から親友だった友人の家で映画を観ようってことになって、彼女「(作品は)何でもいい」と言うので遠慮なくこれを持って行ったら、思い切りドン引きされた思い出の映画です。
たしかに、いきなりマイケル・ダグラスとマット・デイモンのベッド・シーンはキツかったかもしれません・・・ごめんね、ひ〇みちゃん