(左から弁護士のマーク・ダーシー(コリン・ファース)、ブリジット・ジョーンズ(レネー・ゼルヴィガー)、IT長者のジャック(パトリック・デンプシー))
◆12年ぶりの人気ロマコメ第三弾◆
「ブリジット・ジョーンズの日記」(2001年)に始まるシリーズ第三弾。監督は1作目と同じシャロン・マグワイアです。
1作目から婚活苦節15年・・・ブリジットは相変わらずいい男を探し続けてたんですねえ。
この間ブリジット役レネー・ゼルヴィガーのルックスも疑惑付きの激変?ということで・・・もしやこれ、ヒット作は最後の一滴まで絞り取るって典型的なアレ?と思いつつ、「まあせっかくだから観るか」くらいの感じで待っていた作品なんです。
しかしこれがなんと・・・面白かった!
笑えることにかけては前2作を上回っていたかも・・・でもって、キッチリほろりとさせるシーンもあり。
レギュラー陣の高齢化をものともせずの、やりきった感!
これはもう、素直に拍手を送りたいですね。
私が観に行った日はレディース・デーだったこともあってほぼ女性オンリーでしたが、笑い声が起こることもしばしば。
客席はすごくいいムードでした。
さて、前作までのまとめはこちら。
今回は、前作まで登場していたブリジットの元上司かつ恋人のダニエル役ヒュー・グラントが降板し、ブリジットをめぐる恋のさや当て―――この構図は定番なので何があろうと不変なんでしょう―――は、マーク・ダーシーことコリン・ファースと新顔のパトリック・デンプシーとの戦いになります。
43歳になったブリジットは、今もって独身。
テレビ局の仕事はやりがいがあるものの、恋人のいない寂しさは相変わらずな彼女は、男探しに出かけた先でIT長者のジャック(パトリック・デンプシー)に出会い、勢いで一夜を共にします。
ところが、その翌週、結婚寸前まで行ったものの破局した元恋人のマーク・ダーシーと思いがけず再会してしまい、勢いで彼ともエッチ。
はい、今回の三角関係の完成です。
というわけで、あれよあれよという間に原題の”Bridget Jones's Baby”・・・という展開に。
果たしてどちらがパパなのか―――という、なかなかどうしてエグいお話を、2時間で物の見事に笑いと涙の感動ロマコメに仕上げます。
製作国アメリカでは過去作に比べて上映館を大幅に増やしたものの興収は逆に落ちる結果になったようですが、グローバルでは過去作と遜色のないレベル。
このシリーズはほんと強い!
ロマコメの帝王ヒュー・グラントの欠場が響くかと思いきや、その穴をプラスに変えた感さえありました。
ヒュー様も、なんなら次回は復活しかねない勢いw
「ブリジット・ジョーンズの日記 密室PTA会議編」、そして「老人ホームで老いらくの恋編」・・・さすがにないか。
(こうなるのか? それとも・・・)
(やっぱりこうなのか?・・・というお話。両手に花は女の夢!)
◆来やがれフェミニスト?!◆
(ここからは本格的にネタバレになりますので、閲覧に際してはご注意ください。)
観終わった直後の満足感は最近の新作の中ではかなり高かったので、感想も「ブリジット最高!!」でサックリ締めたい気分ではあったんですが―――でも、私がこれまでも今回もこの作品を観てちょっとひっかかった部分に関して、今回作品の中でエクスキューズ(というよりもはっきりと反撃)が仕込まれている気がしたので、やっぱりそこには触れておこうと思います。
なんせ、世界中の女の子(今やブリジットと共に年をとってきた熟女ファンも含めて)の共感をさらった作品とは言え、アンチ・ブリジットも少なからず存在しそうな本作ですから、
いいトシしてまだ男と体重のことで頭いっぱいなんてイタすぎ
今どき「高慢と偏見」のダーシー様(※1)と結婚して親を喜ばせる話なんて、時代錯誤もいいところ!
ブリジット・ジョーンズをそう見る人もいるはずだし、私がこのシリーズを観ていつもモヤッとするのも、多分これと芯は同じ話のような気がします。
(男女平等志向という意味での)フェミニズム的な思考で眺めれば、まさに時代に逆行しているドラマ。これ、ブリジット・ジョーンズシリーズの一面と言っていいんじゃないでしょうか。
でも、今作はそういう批判を予想した上で、開き直ってる・・・そういう気がします。というのは、
そんな批判は初めから想定の範囲内ですからっ(*≧m≦*)ププッ
と言わんばかりに、本作を批判してくるであろうまさにその「フェミニスト」という存在を、劇中に登場させてるんですよね。
今回はここがさりげな~く強烈で、一番「おおっ」と思った部分です。
いよいよ陣痛が始まり、車で病院へと向かうブリジット。
ところが偶然でくわしたフェミニスト団体のデモ行進に阻まれて交通渋滞・・・仕方なく車を降りたブリジットが、
「歩けない!!」
と叫ぶと、すかさずマーク・ダーシーがお姫様だっこ!
このシーン、
男女平等がどうのと騒いでるそこのあなた、本当はブリジットみたいにコリン・ファースにお姫様抱っこされたいんじゃないのぉ?(○´ิ∀´ิ○)
と言いたげです。
後から病院に駆け付けたブリジットの母親たちが交通渋滞にあった話を「あのろくでもないフェミニストたちのせいで」と言いたい放題でしたね。
この辺もしっかり確信犯的意図を感じたな。。。
「ブリジット・ジョーンズの日記」シリーズは、基本はフェミニズムを支持しつつも、一面でフェミニズムにちょっと疲れてもいる女の子の本音を突いた物語。
多分、そこが支持される理由の一つでもあるんでしょう。
今作ではそういうブリジット・ジョーンズシリーズのスタンスを、暗に主張している気がします。
ブリジットの母親といえば、彼女が村会議員選挙に立候補していることも今回のトピックス。
その彼女の政策スローガン、当初は「伝統的な家庭云々」というもの・・・つまりバリバリの保守だったわけですが、ブリジットに「いまどきそんなんじゃ当選できないわよ!」と言われて急遽シングル・マザーやLGBT支援を前面に出したスローガンに変更!
この辺、選挙となるとこぞってマイノリティーの味方になりたがる米大統領選候補者たちをディスったのかも?という気もしますが、同時に、今作のコンセプトと重なるものがあるなと。
というのも本作では、もしかしてブリジットは結婚しないでシングル・マザーとして子供を育てることになるのかも?という可能性も匂わせ、ブリジット・ジョーンズシリーズがこれまで守って来た「結婚至上主義」という古い価値観を一旦は打ち破ってみせたわけですから。
しかし、結果的にブリジットは仕事を捨てることになり、結果的にめでたくあのハイスペックなマーク・ダーシーとゴールインすることになる・・・あくまでも「結果として」。
この「結果的に親の望む男性と結婚することになり、専業主婦になったけど、それはあくまでも結果だから(うふ)」という建て前の構築、なかなか計算しつくされてるなぁと。
う~ん、したたかだ。
ブリジットの母親も、結局村会議員選よりも(落選したんでしたっけ?)娘の出産に駆け付けることを優先して、やっぱり家庭こそが一番という大団円。
な、な~んだかな~・・・と思わなくもないですが、ま、でも・・・
面白いからいっか( ̄∇  ̄*)と。
◆コリン・ファースの見せ場満載◆
それにつけてもコリン・ファースの素敵さが今回も尋常じゃないんですが!!
観終わって一日経過しましたが、いまだにドキドキが止まりません。
たしかに年は取ったけれど、前作よりもずっとステキ!
今回は増量役作り抜きでブリジットの魅力を演じきったレネーも頑張ってたけど、コリンには負けてるわ~( ̄∇ ̄+)
ジャック(パトリック・デンプシー)はダニエル(ヒュー・グラント)よりずっと夫の資質があり、今回はマーク(コリン・ファース)も大ピンチ。
ジャックの優勢ぶりに危機感を募らせたマークの苛立ちや落胆が、これまで以上に切なくてキュンキュン!でした。
子供を抱き上げた時の慈しみの表情も素敵でしたね。
彼、現実にも父親だし・・・信じたくはありませんが(ノ◇≦。)
産婦人科医役で登場するエマ・トンプソンも、ウィットの効いたセリフが楽しくて、存在感たっぷり。
彼女は脚本にも参加しているそうですが、あのセリフは自分で考えたんでしょうか?
超ありえなマックスなファンタジーながら、この世界、好きです。
この勢いだと、怖いもの見たさの続編が出たとしても、私はまた観に行ってしまいますね。
※1 マーク・ダーシーのモデルは「高慢と偏見」のフィッツウィリアム・ダーシー。BBCのテレビドラマ「高慢と偏見」では、本作ではマーク・ダーシー役のコリン・ファースがダーシー卿を演じている。
(画像はIMDbに掲載されているものです。)