映画「セトウツミ」 腐女子にやさしい自由設計。 | シネマの万華鏡

シネマの万華鏡

映画記事は基本的にネタバレしていますので閲覧の際はご注意ください。

(内海想こと池松壮亮(右)と瀬戸小吉こと菅田将暉(左) 実際は内海はこんなに明るくはない・・・)

 

◆DK2人のダベり、70分◆

 

今月は観たい映画の公開ラッシュで、書くのが追いつきません!

こちらは2016年夏の新作。

見逃してしまってDVDのレンタル開始を待っていたところ、ユジク阿佐ヶ谷で上映するというので行ってきました。

原作は此元和津也の同名コミックス(連載中)。

DVD発売とレンタル開始は12/2だそうです。

 

大阪のと或る高校(制服は詰襟。ここ重要ですw)に通うDK2人、菅田将暉扮する瀬戸と池松壮亮扮する内海(2人合わせて「瀬戸内海」)が、放課後の時間潰しに毎日のようにダベり合う・・・ただそれだけの映画です

いつも同じ川べりの、同じ場所が、2人の定位置。

豆が転がっても笑える年頃、フライドポテトが長すぎるだけでネタになるDKの感性で繰り広げられる会話劇の、言葉の輝き、テンポの良さ、そして言葉の余白に見え隠れする感情の機微を味わう70分。

それと・・・

なんといっても監督が「まほろ駅前多田便利軒」の大森立嗣ですから、ほんのりBL臭も。

ただあくまでも、ほんのり・・・薄味をじっくり噛みしめて味わうのが吉かと。

 

◆アンチスポ根・ダベるだけのセトウツミ的セイシュンを私は支持する◆

 

「内海君も部活とかやったら?」

と言われるたび、内海が思うこと。

 

走り回って汗かかなあかんのか?

なんかクリエイティブなことせなあかんのか?

仲間と悪いことしたりせなあかんのか?

この川で暇をつぶすだけの青春があってもええんちゃうんか

 

ここにすごく共感!

というのは、高校時代、私もまさにセトウツミ状態だったのでw

部活はやってましたが、女子校だしスポーツ系じゃなかったのでそう大変でもなく、部活がない時はいつも仲の良い友達としゃべってるだけでしたね。

塾も通わなかったし、有り余る時間を殆ど無駄話に投入。

あてもなく歩きながら、学校のグラウンドの隅で、お互いの家で・・・それでも足りずに、家に帰ってから手紙を書いたり、電話したり。そして親に叱られたり。

今にして思えばその膨大な時間を少し他のことに振り向けられなかったのか・・・と後悔しきり。

でも、この映画で漸く自分のセイシュンを肯定してもらえた気分に。

青春の大いなるムダ遣い・・・それもまたセイシュン(ちっちゃめの)、ですよね?

 

◆腐女子にやさしい自由設計◆

 

 

ハイテンションでボケキャラの瀬戸と、寝起きの低血圧者並みのテンションの低さながら、グサグサと容赦なくツッコミを入れる内海。

ザ・大阪の濃ゆいオバチャンな母親とダメ親父の見本みたいな父親という最凶の家庭環境に育ちながら底抜けにノー天気な瀬戸と、親が金持ちで頭も顔もいいのに、いつも憂鬱そうな内海。

一見全く正反対だけど、何故か一緒にいるのが居心地良くなっている2人。

 

個人的にこの作品の大きなポイントだと思うのは、瀬戸はしゃべりたいことを全部しゃべっている一方、内海のほうは自分のことや自分の気持ちを殆ど語ってないということ

つまり、内海の気持ちは観客の自由設計で、想像に委ねられているんですよ

寡黙な内海の姿にこんな↓イタズラ書きを描きこんでも、ちゃんと矛盾なく物語にハマります。

例えば・・・

2人で背中合わせになって背比べをするシーンで、内海の頬をほんのり赤く塗ってみたり。

瀬戸と花火をしながら、

「夏休みが終わってほしくない」

と言う内海のセリフの後に、チラッと瀬戸を盗み見る内海の目線を想像したり。

 

 

ラスト以外で一番ドキドキさせられたのは、瀬戸が憧れている女子樫村一期(かしむらいちご 演:中条あやみ)をどうやったら落とせるかという話になった時。

内海はアメとムチを使いこなして相手を支配しろ、とアドバイス。

瀬戸は意味が分からないと言いつつも、次の話題では内海に対して無意識にアメとムチを効かせた物言いを・・・

「もうアメとムチ使いこなしてるやん」

とツッコむ内海。

でも、腐女子的には逆に内海に、

ン? 内海君、それはひょっとして支配された気がしたってことかなぁ?(○´ิ∀´ิ○)

とツッコミを入れたいところ!

ここも、言った後に「今の一言、まずかったかな?」と動揺する内海の汗ばみ感を描きこみたいですね。

 

BL的な角度で観れば、瀬戸を意識しているけれど表には出さない内海と、無意識だけどいつの間にか内海といることが楽しくなってる瀬戸、という構図がすんなりと完成―――それでもってラストシーンでガツンとアレですからね~。

もう、

キタ━━ヽ(゚∀゚ )ノ━━!!!

だったのと同時に、全く意表を突く一瞬でもあって、激しくキュンキュンでした。

あのラストのために全てがあると言っても過言ではない・・・的な?

あれが確信犯的でなくて、なんだって言うんでしょうか?

それでいて、あのラストシーンさえもしっかり別の解釈が成り立つわけで・・・や、もうね、これは計算しつくされてます。

あざとすぎ! でも、萌える(*ノωノ)

↑ここを行きつ戻りつ・・・な私です。

 

◆池松壮亮&菅田将暉 VS 瑛太&松田龍平◆

 

本作と比較するとしたら、やっぱり「まほろ駅前多田便利軒」が思い浮かびます。

あの作品の多田と行天の独特のテンポ・独特の発想の会話の面白さ、そして2人の間に漂う、微妙なニュアンスを持った雰囲気・・・あれを詰襟のDKバージョンにしたイメージ。

原作者は「まほろ~」は全く意識してなかったんじゃないかと思いますが、大森監督によって奇しくも同じエキスが煎じ出されたということでしょうか? 

 

個人的には、会話の面白さは「まほろ~」。

「まほろ~」はやっぱり言葉が冴えてる。そこは好みの問題も多分にあると思いますが。

「セトウツミ」は会話劇だけに、漫才を意識したボケとツッコミの応酬がメインです。

観客はいない設定なのに笑いを取ろうとする流れで、そこがちょっと鼻につく部分があります・・・これも好みですけどね。

 

私にとっての「セトウツミ」の強みは、何といってもDKブランドだということ。

内海の白シャツを覗かせた袖口に白いソックス! 

現実世界では眩しすぎて目をそらしちゃうようなアイテムですが、スクリーンならじっくり眼福を味わえるというものです。

しかも池松壮亮バージョンで! ありがたや~( ̄人 ̄)

 

会話してるだけの2人ですが、たまに通りかかる不良の鳴山(成田瑛基)に絡まれながら、さりげなく社会のヒエラルキーとその中での処世術を学んでいる・・・というスパイシーな要素も楽しいですね。

 

それにしても、池松壮亮と菅田将暉、最近映画出演が多い!

上映中の「デスノート Light up the NEW world」でも共演してるし、菅田将暉は先週公開されたばかりの「溺れるナイフ」でも主演・・・2人が出演してる映画をいつもどこかしらでやってるイメージです。

まさに旬の若手俳優2人の共演作という意味でも、要チェックの作品ですよ♪

 

 

(画像はyahoo映画サイトに掲載されているものです。)