「神戸ニニンガ日誌」(第3,203号)
○欠けていたお皿が、割れた。最初は十数年前に欠けた。あまつさえ欠けの後、ヒビも入った。味わい深く好きなお皿だ。お蔵にするのは忍びない。
○お皿もがんばった。土が集められ、練られ、焼かれ、彩られ、使われ、愛され、期待に応え、箸でくすぐられ、多様な味を演出してきた。なかなかにつよく、皿自体もいい味を出していた。
○地球は鉄の塊だ。その上に土が被さっている。土が摩擦の力と親である作者の力で綺麗な皿となった。宇宙レベルでみると、お皿と私は違わない。むしろお皿の方がエラい。あの信念と辛抱と我慢と希望の念は私には無理だ。
○欠けたりヒビのとき、なぜ私は何もしてあげられなかったのだろう。金継ぎ以外にも共継ぎやパテを使う方法などあるが、後の祭り。
○割れる前にこれまでの思いや感謝を伝えるべきだったが、それもこれも叶わなかった。
○落語では「割れる」では縁起が悪いので「数が増えた」という。とても前向きだ。
○お皿は、割れる。そしてそのお皿が、数が増えて土に還った。今、とても寂しい。
ⓜⓐⓓⓐⓘⓜⓐⓓⓐ まだいまだ。