柴犬 男の子 ひなた7歳 あお、そら6歳
父と3兄弟の歴史
父、犬を飼う~ 犬嫌いだった男が、柴犬3匹と暮らすに至った物語
草をはむ
凍えるような冷え込みを心配することがなくなった春の朝、桜の花びらが散り落ちた朝の道に目を落とす。その道端からは青々とした草が生えはじめ、日々その背丈は伸びその数も増えていく。
春が初夏に向かってゆっくりと歩を進めるこの季節を3匹と一緒に歩く。ときおり吹く冷たい風に冬の面影を感じながら朝の日課を毎日続けている。
道端に生えそろう草は犬たちにとってはまさに雑草サラダバー。犬たちが好んで食べる草は細長いニラのようにみえる草だけ。その名前も知らない草に群がる犬たちを常々みているが、なぜその草だけを選ぶのか理由は知らない。
その名も知らぬ細長い植物はいたるところに生えており、犬たちは次々と目の前に現れる草に目を奪われて必死に草をはむ。
この細長い草以外にも興味を示す犬が一匹。その赤柴は他の草にも噛みついては口から落としていく。まるで目の前の物をすべて欲しがり放り出していく子供のように。
なぜ草をはむのか。理由はわからないが草を食料として食べていないことには気づいている。みんな噛みちぎっては口から出す。飲み込んでもすぐに吐き出す。
「吐くために草をはむ」
不思議だけれどそうみえる。
草は消化されていない。吐かずに飲み込まれてしまった草がそのまま肛門から出てくる事からそれはわかる。吐くために草を食べる。栄養としてではなく出すために食べている。不思議な習性だと思う。
毒や異物を出すためだという人もいる。出したいものがそう毎日あるものなのか、草のない冬はどうするのかとさまざまな疑問が頭をよぎるが深く考えることはない。ただ草をはむ犬たちを眺めている。
知らない事やわからないことがまだまだある。
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