万城目学『鹿男あをによし』 | 町田ロッテと野球散策

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いやぁ、野球って、本当にいいものですね。

(旧題「児玉清」)


 世間でいうお休みとはなかなか一致しないのが私の仕事である。したがって「アタック25」が今も放映されているかどうかは知らない。「笑点」なんて、相当見ていない。

 そして平日の今日は休みである。ただ予報では朝から東京に雪が降るということだったので、外出しないで済むよう食材は予め前日に買った。したがって本日は家に籠り切りである。ところが昼過ぎには窓から陽光が差し込むほどの天気となる。ただ今更出かける用事を作るのも億劫だったので結局家で読書し、相撲中継を十両から結びまで見て、一日が終わろうとしている。


 さて、児玉清。この方の急逝はかなり驚いたものである。どれくらい前のことだったろうか。氏は俳優であるのはもちろんのこと、前述の「アタック25」の名司会でも知られた。職場の休憩においてよく見たものだが、ここ数年はこの時間に休憩を取れることが少なく、ご無沙汰していたのである。実は私、参加希望のはがきを数回出したこともあるくらいのクイズ好きなのだが、大阪朝日放送からの便りはついに戻ってこなかった。

そして一方で児玉清、大の読書家でもある。書評も多々興していたらしい。最近読んだ本の解説で目にすることも多い。たしか「永遠の0」(百田尚樹)もそうだし、「阪急電車」「図書館戦争シリーズ」(ともに有川浩、「図書館戦争シリーズ」は対談)もそう。氏の評は決して悪いことは書かない。その本がいかに素晴らしいかをとにかく教えてくれるのである。あまりにも最近の本の解説だったのでまず驚いたのだが、とにかく読書の幅が広い。和洋問わず、ジャンル問わず、時代問わず。


私は、もっと彼の書評を読み続けたかった。彼には、ずっと書評を書き続けてほしかった。彼は純真な一読者として、読書の素晴らしさを教えてくれていたのである。本当に、残念。


万城目学『鹿男あをによし』も、解説は児玉清である。この時は「図書館戦争シリーズ」を読み終えたばかりだったので「ほぉ、最近の若い作家の本もけっこう読んでいるんだ!」と驚きを増した。ただ解説は最後にあるものなので当然本編から目を通す。

舞台は奈良。数年前にドラマ化もされたのは、この不思議なタイトルゆえ覚えている。ただ例によって、あまり真剣には見ていなかった。ちなみに「あをによし」は、「奈良」にかかる枕詞である。

とにかく、面白い! 昨年読んだ『プリンセス・トヨトミ』もそうなのだが、私よりも若いこの作家の知識量に唸る。ちょっと嫉妬さえ覚えたくらいだ。そしてその知識を披瀝するだけならば単なるイヤな奴なのだが、そこから発想を入れて一つの物語を作ってしまうのが凄いところなのである。奈良出身の私ですら一度しか行ったことのない春日大社、石舞台古墳などが舞台として現れる。ちなみに平城京跡、高松塚は一度も行ったことがない。そして話のスケールは広がり、邪馬台国まで及ぶ。そう、卑弥呼の世である。さらには京都・大阪・奈良の三つの地域を用いて伝説まで・・・なんて壮大なスケールのお話なんだろう。もう古代史の教本のようだった。そんな歴史の魅力の虜になりながらも本を半分ばかり進めるのだが・・・


なんと途中で結末が分かってしまう。そう、これは児玉清のせいなのである。


解説を先に読んだわけではない。問題は前述のドラマ「鹿男あをによし」、真剣に見ていないといいながらも、断片的に覚えていたのである。それが、あの温厚なロマンスグレー・児玉清が怒り狂って「これはオレのものだ!」と叫ぶシーン。このシーンだけ、あの児玉清が怒るというあまりにもレアすぎるシーンだったため鮮明に覚えていたのである。

だから解説、児玉清だったんだ!


とはいえ、最後までしっかり楽しめた。そして『プリンセス・トヨトミ』同様に残ったのは、爽快な読後感である。


児玉さん、まだまだ活躍してほしかった。






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