[短編小説] 葬儀の夜 | 妄想小説日記 わしの作文

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わたしの妄想日記内にある”カゲロウの恋”の紹介するために作った
ブログです

私が目を覚ますと天井から見ているようで視点はベッドのある下方

をみていた。誰かがわたしのベッドで寝ている、よく見れば自分と

同じ顔で自分自身だと気づくのには時間が掛からなかった。

というのも私は幼い時に海でおぼれ人工呼吸されるまでわたしは自

分自身を見ていたからでその時は自分に似た人がいるものだと考え

た。

だが60歳になった今は高血圧で医師から心臓がいつ爆発してもお

かしくない状態で覚悟しておいてと宣告されていたので死をすぐに

受け入れることが出来た。

 

死ぬと見る景色が変わるのが早い、次に私が見たものは仏壇に私の

写真が置かれたシーンである。

うちの仏壇は先祖代々ゆえ位牌が多いが新しい位牌はない。

というのも独身で兄弟は姉しかいないし父親は他界し残っている母

も痴呆症で現況を理解できず姉や近所の知り合いには私の葬儀は義

理で来ることはないと生前に宣言していた為わたしの喪主になる人

物はいなかった故に位牌や業者を頼む人物が不在であった。

 

仏壇の前に座り込んでいる母の隣に私はいた。私が死んだ事は把握

出来ていないがなんとなく雰囲気でわかるのかもしれない。

しばらく立っていると私の隣には白いスーツ姿の男性、年の功なら

40代というところか中年サラリーマンといった男性が現れた。

 

幽霊かと思ったが死んだ今恐れることはない。だが男の胸元にはID

カードみたいなものがつけられ丁寧な言葉遣いから天界の役員、選

定者のようで話を聞いてみることにした。

 

”あなたを天国か地獄へ決めるためにやってきました”

慰問に訪れた人が流す涙で進路は決まります。誰も涙を流

なければ地獄へ落とされることになります。

 

時刻は夕方5時になり慰問に訪れた人は10人、涙を流してくれた

は皆無で地獄行が濃厚だった。

地獄へ落とされるのも面白そうだ、そんな時だった学生時代に自分

虐めていた奴らの声が聞こえ始めた。

”早く来い、地獄で待ってるぞ!あっはははは”

60過ぎて再度地獄で昔と同じ目を味わなければならないかと思う

と地獄へ落とされる訳にはいかない。一人でもいいから涙を流して

くれる人を求めるがそんなに都合よく現れてはくれなかった。

痴呆症の老婆一人の家では照明も点灯させず家の戸締りもしてない

旧家の家で明かりがないと真っ暗闇になり慰問に来た人も留守かと

思って引き返す。

 

日が落ちてあたりは暗闇の世界を招き明かりがないと歩くことさえ

儘ならない。そんな暗闇の中で街頭もなく一人の女性が歩いている

夜8時を指そうとしてる時だった女性が家を訪問してきたのは。

「こんばんは」

玄関を照らす照明も照らしていない、葬儀を仄めかす提灯もない、

の明かりも裸電球さえなく暗闇の葬式と思えた。

「洋子ちゃん、暫くね」

暗い部屋の中通常では見えない筈なのにどうやら痴呆症の母のには

見えたようだが私には女性が誰なのかわからなかった。

50代くらいの小顔の女性は体調が悪いらしく青白い顔で挨拶した

母は中学時代の母親参観で女性と話をしたことがあったようだ。最

近のことは忘れるがむかしのことはしっかり覚えているのが痴呆症

の特色であった。

近所に住む幼馴染の女性2二人慰問に訪れ学生時代の同窓生3人目

ということになる。幼馴染や同級生の男性はひとりも来ていないが

女性が慰問に訪れた訳は本人が知らないだけで意外と女性に好意を

持たれていたのかもしれない。なぜなら卒業でサイン帖に書いても

らう風習を女生徒は持つが他のクラスから女生徒がやってきたのも

証拠である。

 

「なぜ彼は死んだんでしょうか」

「死んだ?あの子は旅行に行ってるの」

「修学旅行は春よね、もうじきかな」

 

その言葉で女性は母親が痴呆症だと理解し彼はやはり死亡したのだ

思った。

「なんで死んだの?ずっと待ってたのよ」

同い年ながら若く見えるのは小顔で美人だからでその美しい女性が

涙を流し蹲る姿は悲哀を誘う。

洋子という女性は中学時代二人いたが一人は会話をしたことがなく

もう一人は毎朝挨拶をしてくれたのだが当時女嫌いとしていた私は

挨拶を返すことはしなかったのだ。

”あの子だったか”

私が他界してから半年後彼女は天国にやってきた。

 

この物語はフィクションであり

登場した人物、団体は事実とは

一切関係ありません