短編小説 Z432 第3部 | 妄想小説日記 わしの作文

妄想小説日記 わしの作文

わたしの妄想日記内にある”カゲロウの恋”の紹介するために作った
ブログです

テレビ局の喫茶店での会談から1時間後、電車で横浜の家へ戻った

幸男だった。”車を使って”自分はタクシーで帰るからとサチは言っ

てくれたがあまり人の車を乗りたくなかった、金は掛かるがそのま

ま横浜の家へ戻った自宅へ帰る選択しもあったが彼女が喜ぶ姿を

たいその一心で今日中に車のエンジンを掛けたく横浜に戻

決断を決めた。電車を乗り継ぎバスを乗り継いでやっと

に戻るとまだ幸子は帰っておらず地下へのシャッターも閉ま

っているため車の場所へ行くことができずどうしようかと考

えていると高校生らしき男子が歩み寄ってきたのである。

 

「うちになにか御用ですか」

 

家族でありわたしは焦ってしまう。

「わたし、ここの家のお嬢さんサチさんと親しくさせて貰っ

 てる幸男と申します。」

「なんだゆきさんかぁ、聞いてますよ姉の彼氏ですよね」

「今日は何の用ですか、デートの約束でもしたんですかね」

 

初対面だというのに随分馴れ馴れしい、先程言われた”彼氏

”という言葉で舞い上がっていたわたしは怒りと嬉しさ半々

というところだろうか

 

「いや車のエンジンを掛けてくれと頼まれたんで」

「ああ、あの古い車ですね」

 

家の前に不審者が来ていると警察に通報されるかと思ったが

彼氏だとわかりその心配は無くなり安心した。

 

「おじさんはいくつですか」

「おじさんは酷いな、まだ19ですよ」

「あはは、じゃおにぃさんですね」

「先日はおせわになったそうで有難うございます」

「え?なんの事かな」

 

帰ってこなかった姉だから心配して問い詰めたのだろうが

だからと言って若い男女が一つ屋根の下、わたしは正直に

答えず惚けた。

 

「いいえ、それじゃ失礼します」

 

先日私の家に彼女を泊めたことを知っているようだ。弟さん

に地下室へのシャッターを開けて貰えば良かったと後悔して

も時遅し、家の玄関を叩いてシャッターを開けてもらう手段

もあったがサチの母と会うのはまだ早いような気がして今は

彼女を待つことにした。待つこと1時間、ようやく彼女の赤

いアウディが家に戻ってきた。

 

「おかえり」

「只今、ちょっと待ってて今開けるから」

「外で待っていたの?寒かったでしょ家の中で待ってれば

 いいのに”頑張り屋さん”」

 

キスされるかと思ったらわたしの頬を両手で擦るだけだった

 

車から降りてシャッターを開ける操作をするのかと思ってい

ら専用のリモコンをグローブボックスから取り出しボタン

を押しただけでシャッターは開いていった。このリモコンを

貸してもらっていれば良かった。

 

「作業をする前にコーヒーブレイクしよ、疲れちゃった。」

「え、なに」

 

撮影だけでそんなに疲れるものなのか、帰ってきたら作業が

すぐに始められると思っていたわたしは文句のひとつでも言

いたい気分だ。

 

車を車庫というより地下駐車場に止めて降りるとすぐ手を取

拒否するのは許さないとでも言うかのように強引に腕を掴

家の玄関に連れ込まれてしまう。そして結局わたしの想

と違い母に会うこととなってしまったのである。

地下から1階に上がれる為玄関を通らず階段を上ると居間に

通され高そうなソファーで座って待っているとキッチンら

しき場所から話し声がぼそぼそと聞こえたが何をはなしてい

るか解読不能だ。母を連れて現れるサチは

 

「皆さん報告があります、わたしは遂にようやく遂にバージ

 ンを卒業出来ました。奪ったのはこの人ゆきくんです。」

「なんだって・・・」

"な、なにぃ~”

 

寄りによってなんということをそれも家族の揃っている中で

公表してしまうのだろう、わたしは母上に引っ叩かれる覚悟

だった。

だが母上は涙を流し私の両手を握るので意表をつかれわたし

なにも反応出来なかった。

 

「ありがとう、こんなに嬉しい日はないわ」

「へ?」

 

結婚前に独身の娘が傷物にされて喜ぶ親がいるとは信じがた

い。そりゃあわたしが国民的アイドルで親が熱烈なファンだ

としたら喜びもするだろう、だけどわたしは有名じゃなくど

こにでも平均的な男いや平均以下の容姿じゃないのだろうか

しかも母とは初対面の筈だ。筈だというのは19歳に25歳

から戻ってまだ数日しか経ってない、それ以前の記憶はない

サチコはキッチンで母親の手伝いで居間は弟さんと二人きり

弟さんと話すしかない。

 

「君は姉さんがよその知らない男に抱かれて平気なのかい」

「本音で話しますとやっぱり嫌なんだけど相手乃ために車を

 買ってあげる程好きだったらこりゃぁどうしようもないでしょ」

「ちょっと待ってくれる?地下室にある車ってお父さんの遺

 品だよね」

「父は車関係の仕事だったので車なんか走れば良いと考える

 人でスポーツカーには全く興味ありませんでした」

 

ではZは一体誰の車なのだろうか、そこで先程テレビ局でサ

チが親しい友人と話していた内容が蘇ってくる。サチは車を

買ったらしい、それも古い車、高価な車らしい。まるでオー

バーホールしたかのようにネジ一本錆びてないしバッテリー

も新品のようだ、そう買ったばかりの車のように。

 

「もしかしてあのZはお父さんの遺品ではなくサチの車では

 ないのか」

「そ、そんなことないよ」

コーヒーを運んできたサチコに他界したお父さんの車なのか

尋ねると呂律が回っていない言葉で答えた。

「お父さんのこと弟さんから聞いたぞ」

「ごめん、姉さん」

「う、後でプレゼントとして渡したかったのに」

 

高級車と比べる金額であれば想像がつく、プレゼントとして

渡せる金額ではない、金銭感覚に疑問を持たざる得ない。

 

母上がやってきて今日は泊まっていけるのか聞きに来た、な

んでも祝賀会を開くそうで酒を飲めるのか知りたいそうだ。

急に祝賀会を開くので買い物に行かなくちゃならないらしい

 

「ゆきくん、買いものに行ってきてくれるかしら」

「義春に頼むと余計に買ってくるから頼めないの」

「おかあさん、ゆきくんはお客様よ、頼める訳ないじゃん」

 

人から頼まれると断れない性格のわたしであるが今は車のエ

ンジンを掛ける事が最優先なので丁重に断る。車の整備をし

ようとしたら母上から呼び止められた。

 

「所要があるなら仕方ないわね、サチと行ってくるわ」

 

「ああ車なら整備屋さんに来てもらいエンジンは掛かるそう

 よ」

「ハイオク30リッターも入れたから大分掛かったけどね」

 

Zのタンクは確か90くらい入るからハイオク90も入れた

ら燃料高騰の現代ではお金が足りない、しかし30でも入れ

て貰えれば出費が抑えられる。だが結果として燃料代を出し

て貰った事に対し負い目を感じていた。車は自動車修理屋さ

んに頼んだようでわたしの要はなくなった。

 

「お母さんわたしが行ってくるよ」

「ゆきくん、一緒に行ってくれる?」

「いいよ是非」

 

出張修理代と燃料代を返してと言われてもおかしくない、母

はお金に事は一切口外せず買い物を頼んだのは体で払って

欲しいと意図があったのかもしれない。

 

「結局サチはゆきくんに買い物頼んでも一緒に行くんでしょ

 う」

「あ・は」

「姉さんフライドチキン買ってきて」

「はぁい」

 

アウディを運転する彼女にわたしはわたしがいない間モデル

仲間とどんな話をしたか尋ねてみると下世話な話ばかりと言

う。顔色が変わったのでわたしに聞かせられない話でもした

のであろうが突っ込んで尋ねることは出来なかった。

 

車内で会話が弾む間も車は進み渋滞でペースは落ちてゆっく

り走る、右折車線に入ったようで左側の直進車達はすぐ見え

なくなっていく。広い道路は3車線でこの道路は国道のよう

で国道から右折し外れるので県道へ進むのだろう。曲がれば

大きな看板があるT字路を左折すれば目的地は目前。

 

大きなスーパーのようで車は30台以上は止めることができ

うだ、入り口に近い場所は全て埋まっているため店から遠

い駐車スペースに車を停車させた。降車して歩を進めていく

と車でたこ焼きを売る移動店舗で足を止めるサチ。食べたい

けど体型維持のため食べれない葛藤があるようだ、ファッシ

ョンモデルも大変だ。わたしもたこ焼きは嫌いじゃないいや

どちらかと言えば好きなほうだろう、でもサチ見ている前で

食べるほど意地悪なことはしない。店がルールを決めている

にも関わらずトレイならなんでもいいと考える人が多い。

 

「いい加減店内に行かないと夜になるよ」

「あ、忘れていた。回収トレイ持ってきてたんだ」

 

スーパーで食品に使ってる発泡トレイは回収ボックスを設置

しているが店でリサイクルしているのではなく回収したトレ

イはメーカーに返すのである。

 

「これはカップラーメンの容器じゃないか?ゴミだよ」

「違うの?」

「これはビニール系のトレイだからゴミ」

「分けなきゃいけないんだ」

「そう分けないと従業員さんが選別するんだよ」

「知らなかった」

 

店内で寿司と刺身、オードブル、お菓子を買いワインと日本

酒はわたしが選び買ってくる。これで帰れると思っていたら

わたしの分の茶碗と箸がないと言うのでサチが買いに戻る。

 

「これ有田焼じゃないか、無駄使いして」

「安かったよ3000円だもん」

「500円の茶碗でいいんだよ」

「永く使うんだからいいもの買うの」

 

今日一日だけ使うと思っていたので安物の食器で十分だと考

えた訳だがサチは1日だけと考えず長く使うといった理由は

後日わかることになる。そういえばフライドチキンを買って

ない事を思い出した。

 

「フライドチキンを買うの忘れた」

「大丈夫心配しないで フライドチキンっていったらケンタ

 でしょ」

 

どうやら帰る途中でケンタに寄って行くらしい。でもお母さ

んは祝賀会を開くほどなぜ喜んだのだろうか、娘の純潔を奪

われて喜ぶ親がいるだろうか。燃料代と車の整備代を立て替

えたのみじゃなくご馳走になるのでは肩身が狭いどうお返し

すれいいか金で返せばいいが今のわたしに金はない、悩み

は尽きない。

家に戻り車を地下室の地下駐車場に停車させ二人で手分けし

て食べ物を下ろし1階に運ぶがこの家の構造を知らぬわたし

は玄関から行こうとした。

 

「そっちじゃないよ」

「こっちのドアから上に上がれるだよ」

 

茶色の鉄扉があったのは知ってるがてっきり倉庫だと思って

いた。

 

「もっとこの家を知ってほしいの」

「なんで?」

「留守番を頼みたいんだ」

「車はその留守番してくれるお礼よ」

 

留守番の礼に車とは豪勢な礼だが今は車の調子を見る必要が

る。頼まれた以上最後までやり遂げたい、母上が修理屋を

んだそうだが頼まれた責任から現車を確認しなければならな

かった。

 

わたしに買ってくれた車だそうだが簡単に貰うわけにはいか

ない。現段階ではまだこの家の車としてエンジンの調子をみ

たかった。

 

「エンジン掛かるか試してもいい?」

「いいわ、先に行ってるね」

 

電磁ポンプは音を奏でるのを確認してからチョークレバーを

手前に引きセルを回すと2回ほどクランキングした後エンジ

ンは咆哮しアクセルを煽ると唸りをあげた。イグニッション

をオンにすると各メーターは針を動かし気分は高揚そこにこ

のエンジン音で走りたくてたまらない気分にさせる。試運転

に行きたいが上で待っているからエンジンを止める。先に行

ったサチは来ないから怒ってるだろうと思いながら1回への

階段を駆け上がる。

 

「義兄(にいさん)フライドチキン買ってきた?」

「やだ義春ったら気が早いわ、にいさんだなんて」

 

年下の義春からみれば年上の幸男はにいさんとなる。幸子

義兄(にいさん)だと意味を解釈した、義兄となれば幸子の

夫、主人、ハズバンドを意味する。

 

「フライドチキンは買ってきたけど”にいさん”は照れるか

 らやめて」

 

6人掛けのテーブルは分厚い無垢材で出来き特注品らしく

幅1,5メートル長さ2,7メートルの既製品にはないサ

イズでテーブルの大きさを十分活用するようにオードブル

や寿司、刺身、豚汁、サラダなどがところ狭しと置かれる

長方形のテーブル左端は幸男と幸子、右端は義春と母の美

幸が座る各人のまえには四角いコースターが置かれテーブ

ルの端には誰が何を飲んでもいいようにグラスと瓶が数種

類置かれる。

 

「みんな、何飲む」

「わたしはワイン」

「なんでもいいです」

「僕はビール」

「あんたは未成年、しかも高校生じゃないの」

「そのとおりよ、ゆきくんも何か言ってやって」

「今日はお祝いなので無礼講ということで」

「幸男(ゆきお)の許可も出たので許そう母さん」

「仕方ない今日だけは目を瞑りましょう」

「やりぃさっすが兄さん、話せる」

「だからその義兄(にいさん)はやめてくれよ」

 

サチからはじめてゆきおと呼ばれると恥ずかしさよりも親密

度が上がったような気がしてなんとも嬉しい。サチも言って

から気づいたのか顔を赤らめている。サチは上目遣いでわた

しの反応を見ているがわたしが否定も肯定もしなかったので

安心したようだった。お母さんが話しかけてきたのには驚い

た、6人掛けのテーブルなのでわたしの横に座ってきたのだ

日本酒を飲んでいたわたしは母上から酌をされると緊張した

 

「サチが処女を奪われたのになんでお祝いするか不思議な顔

 してるわね」

「はい、まあ」

「あなたはご存じ?娘は同性愛好者いわゆるレズだったの」

「だから私たちはこのまま娘が処女のまま中年になると考え

 たのよ、孫の顔を見るのも諦めて」

「僕も女の人をおにいさんなんて呼べないもん」

「あなたが娘とこのまま添い遂げて欲しいけど無理示威はし

 ないわ」

「無理強いしないの?してもいいのに・むにゃムニャ」

「あはは、サチの寝言か」

 

サチは酔いで寝ている、多分この話はわたしに話したくない

聞かれたくない秘密なのかもしれない。わたしはいつになる

かわからないけれどきちんと安定した収入を得るようになっ

てから結婚すると約束した。

 

「ひとつお聞きしたいんですが家族旅行する計画はありま

 すか」

「ないわよもし計画があったらあなたも一緒だし」

「そうですか」

「なんでかしら」

「サチに留守番を頼まれてその謝礼があの車だそうです」

「ははぁん、きっと車を渡す切っ掛けよプレゼントが高価

 過ぎて受け取らないと見越した結果じゃない」

「ゆきくんは受け取るつもりないでしょう」

「当然です、高価過ぎますからね」

「だけどもう買ってしまったの、あなたの為にね」

「貰ってくれる方向で考えてみてくれない」

「熟考してみます」

 

「ところであの車はなんていう車ですか」

「修理に頼んだメカニックさんに聞いたら希少車、型式は

 PS30名前はZ432Rというそうよ」

 

この物語はフィクションであり実在する人物、団体とは

いっさい関係ありません