[短編小説] 灯が消える時 | 妄想小説日記 わしの作文

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わたしの妄想日記内にある”カゲロウの恋”の紹介するために作った
ブログです

人が魂の灯を消す時二通りあり一つは苦しみのたうち回って死をア

ピールするから周囲にもその人間が痛みを感じていると思えもがき

苦しむ回数が増えれば死の予感を考える。

 

判り辛いのがもう一つの方で毎日測る血圧で日々を重ねる度数値が

減り例えば115だった血圧が102まで落ちる。痩せて行くが見

た目にはあまり変わらないので元気だと周囲の人には理解できない

筋力は徐々に落ちて本人にしかわからない。本人にさえ死の予兆は

現れずたまたま調子が悪いだけに思ってしまいまさか自分が絶命し

ようとは夢にも思わなかった。

 

だが予兆は確実に現れる。

夜トイレに行こうとすると家の中が電気をつけているのに妙に暗い

いつも目で見るものが霞んではっきり見えず見返すといつものよう

に見る事ができる。蚊が鳴きながら飛んでいるのが聞こえるが刺さ

れることはない。しかしノミや蚊のような吸血生物は何も考えず眼

で見て獲物を選ぶのではなく体温や鼓動、脈拍数から生死を判別し

吸血行動に移る、いわば蚊に吸われるのは健康のバロメータである

ということができる。

 

「城内さん、掃除が済んだら椅子の片づけして貰っていい?」

「わかりました」

 

学校と違い体調を心配して仕事を少なくしてくれる上司はいない。

健康診断で判断し社内健康診断に引っ掛かれば解雇し新しい労働力

を得る、それが誰でも出来るパートタイムという仕事である。

 

城内偲(じょうない しのぶ)は45歳で独身、6畳一間にキッチ

ンのアパートに一人住まいで3年前に一人で生活していた年老いた

母も他界し天涯孤独だった。

 

”なんか眩暈がする”

仕事の雑巾掛けをしながら城内は思った。

 

掃除が終わり椅子の片づけだと言うので事務所で使うロッキングチ

ェア2,3個だろうと考えていたのだが倉庫で実際に置かれていた

チェアは・・・息を呑んで言葉が出なかった程に積み上げられた椅

子をを見て驚いてしまった。およそ2,30個が整理されて積まれ

ていたのではなく上に下に横にと乱雑に積まれていたのでどこから

手をつければ、と考えてしまった。

 

”5時の契約だもんね、5時まで辛抱しよ”

5時になり仕事は途中だがあがろうとしたら上司に止められた。

 

「まさか椅子を散らかした間々帰ろうというんじゃないよね」

「契約は5時の筈です」

「だけどね、仕事を途中で帰られたんじゃ給料は払えないよ」

 

家賃が滞っている現在半日分でもカットされる訳にはいかず渋々に

業務を続けるしか城内に道はなかった。契約では残業がつかないず

17時までどう考えてみてもかたずけ終わるのは19時になりそう

だ。上役は無理な仕事をさせるのではなく同じ業務をしていたのは

20代の男子であった為余裕で仕事は終わっていた、頑張って仕事

を終わらせたのかもしれないが前例を作ってしまうと上司は違う人

でも出来ると考えてしまうものだ。

 

結局椅子を積み上げ終わったのは午後7時になり2時間のサービス

残業をしたことになり後日総務部部長から係長は大目玉を喰らう事

になる。

 

日が明けて部長は3者面談を行おうと城内が出社するのを待ってい

た。しかし30分過ぎた9時になっても城内が現れる気配がないし

欠席との電話連絡もないので係長は城内の解雇処分を決定した。

総務部長は残業分を臨時手当として支払う事にしていた、契約上は

残業としては払えず苦肉の策だったが本人の承諾が必要だった為、

解雇になった以上手当は白紙となったのである。

 

城内は眠った。

毎朝6時には目覚める習慣だが起きる事は無かった。

安らぎを知ったように城内は眠った。

 

3日後大家と不動産会社の営業が城内の部屋を訪れ家賃を払って貰

おうと訪問した。大家は城内の出社時間を知っていたので8時にま

だ寝ていた城内に異変を感じた。

 

「偲さん、会社に遅れますよ」

 

呼びかけても答えがないので仕方なく身体を揺らしてみると偲の身

体が冷たく硬かった。念の為に鼻に手を当て呼吸を確かめ腕の関節

に手を当て脈拍数を確かめる大家。

 

「竹内不動産の木下さん、警察に電話して」

「わたしこういうのダメなのよ」

「仕方ないですね」

 

おわり

 

この物語はフィクションであり実在の

人物団体には一切関係ありません