「また焼き魚かよ」
中学生の男の子は母の作ってくれた弁当を持って来るのだが毎日魚
が入ってくるのに嫌気が差していた。しかも他のおかずは毎日同じ
ホウレンソウのお浸しに卵焼き、糠漬けの漬物と梅干。魚は日替わ
りで変わるから母も同じじゃなければいいと考えたようだがアジの
塩焼きとホッケの干物では同じようなものだ。煮魚であれば塩焼き
と多少は区別できるのだが多忙な母はいつも塩焼き、真鯛であろう
が金目鯛、ブリでさえぶり大根は入っていたことがない。マグロの
赤身が入っていたことが有り気温上昇で身が黒ずんでしまったが元
来マグロやブリの刺身が大好物な少年は若干臭いのに食べてしまっ
たら案の定病院送りだ。
「母さんどうして肉を入れてくれないんだ」
「肉は味をつけないと食べれないでしょ、味のつけ方がわからない
のその点魚は塩を振りかけるだけでいい」
魚にも旬の魚はある、地元のスーパーで売っていないと隣の町のス
ーパーや海が近い町の魚屋まで出向き魚を買ってくる、息子として
は他の肉料理中華丼やとんかつにハンバーグ、酢豚、唐揚げでも良
いが魚好きな母はどうしても魚を食べないと気に入らない。
ところが驚愕する事態が訪れる。
学校で昼時になり”今日も魚か”と思いながら弁当箱の蓋をあけた。
春巻きにシュウマイ、餃子に春雨と中華のオンパレードで驚きと共
に嬉しさが沸いた、中学生にとって昼の弁当は期待で胸が膨らむ瞬
間なのだ。
「お母さん、今日の弁当はどうしたのさ」
「おいしくなった?」
「とんでもございません、今まで一番の弁当でございまする」
「そう良かった。明日は生姜焼きとポテトサラダに野菜炒めよ」
「料理学校に行く気になったの」
「実はスーパーでお弁当のおかずシリーズが売り出されたの」
Aセットは和食Bセットは今日食べた中華Cセットは海鮮Dセット
は欧州イタリアンEセットインド料理Fセットは定番幕の内で予約
販売となる。しかも2週間でメニューがすべて新しく改変する。
「でも毎日だとお金が大変でしょ」
「いやそうでもない、高くなったお米が入っていないからリーズナ
ブルなんだ」
一か月後スーパーへ弁当のおかずを買いに行くと張り紙がしてあっ
たので何の張り紙かと思えばお弁当のおかずシリーズは終了したと
の知らせ。予約を入れていた皆さんにはポイント還元でお詫びする
らしい。
おわり
この物語はフィクションであり実在の
人物団体には一切関係ありません