[短編小説][創作] 魂を呼ぶ副生産組合員 | 妄想小説日記 わしの作文

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わたしの妄想日記内にある”カゲロウの恋”の紹介するために作った
ブログです

生産組合員は地域から順番で決めるのであるが正副とは組合長、

会計を差し組合員の中から選出するのだが人望、経験で選ばれる

わけではなく個人に時間的猶予がある人間がなる。誰しも報酬が

ない仕事を請け負うのは嫌なのだ。

 

「まったく一人で30人分だと・・・・」

 

組合長が家へ来て用意するのは60本あればいいだろうと言った

のであるが一人で2ケース買うのは簡単なことではない。一人ボヤ

くのは農業をやりながら会社務めしている50才になる久能重光だ。

前任者との引継ぎで金は預かっているから身銭をきる必要はない

が草焼きや草刈りなどの地域の仕事の度、ビールやお茶などの飲

料水やつまみを用意するのが会計の役割である。

 

地域での仕事は生産者が老化し年々参加者が減っている、子供た

ちが引継げばいいが収入の安定しない農業では外へ働きに出かけ

農業にはノータッチであるから農家は年々減っているのが現状だ。

しかし農家を継げとは言うことが出来ないのは親である自分達が

会社務めをしていたからに他ならない。会社務めしていた頃には

地域の仕事をしなかった為自分の息子にやれとは言えないのだ。

 

重光が自宅で晩飯を食べていると外で人の声が聞こえたので仕方

ないなとは思ったが玄関の鍵を開け玄関の扉を開けてみるとなんの

反応もない。確かに声を聞いたのだが人の気配はなかったので自

分の聞き間違いかと思う事にした。

 

「久能さんいませんか」

 

今度は確かに久能と聞いた、しかし玄関を開けてみるとやっぱり誰もいない狐に抓まれたとはこういう事なのだろうか?重光は幽霊の存在を否定しているわけではなく見た事は無いが肯定派である。ガンで他界した婚約者も出来る事なら会ってみたいと考えている。重

何故婚約者が会いに来てくれないのかと考えているがそれは違う。重光の気持ちの持ちようで婚約者を見る事が出来るのだ。重光

まだそれを知らない、見る術を知らない。もし婚約者を見る事が出来ればきっと重光に会いに来た霊が見えたことだろう。

 

重光は夢の中で婚約者と家で生活し農協が主催する婦人部の研修旅行へ送りだした夢をみた。だが目覚めた重光の視界には自分の部屋の景色とは違い白い部屋でカーテンが仕切られLEDの小型照明がいくつも点いている。頭部裏側の壁面には電子機器がつき手首には紙のリストバンドそして左腕には点滴のパイプがささる。重光は病室に寝ているのを悟った。記憶を辿ってみると地域の仕事で草刈りをやったのだが”あの範囲で3人はきつかったよなぁ”と広い範囲を草

したことは覚えているが仕事が終わった時の記憶がどうしても

い出せない。

 

”君は倒れたんだよ”

 

頭に直接響くその声は脳に直接話しかけてくるもので耳がら聞こえ

音声ではないと感じた。目を凝らしてみると呆けた人物が次第に

半透明となり立体的に見えてくるとその人物が懐かしくもあり愛お

くもある人物であることを理解した。

 

「もしかしてわたしが見えるの」

「ああ見えるよ、1970年代の古臭いヘアースタイルとか」

「・・・そりゃちょっと酷くねえぁか?第一声がそれか」

「そんな事より俺は倒れた?なんで」

「びっくりしちゃったわよ、見ていたらいきなり倒れるんだもん」

「心臓が弱ってたみたいね」

「そっかぁだからすぐ疲れたんだ、血圧高かったからな」

「出も良かった、てっきり一緒にあの世へ行くのかなと思ったりし

 て」

「おかえり」

「なんだって?今なんていった」

「もう一度言ってごらん、おねえさん怒らないから」

「い・や・だ」

 

他界した婚約者久代と逢うことに喜びを感じどうして話せるのか疑問に思わなかった重光であったがこの時にはこれから起こることを考えもしなかったのである。

 

ところが夜が更けてくるとカーテンの隙間から隣のベッドに人が寝ているのが見え知らない間に入院患者が来たのかと思った。そしてナースコールを押したのかナースがやってきたのであるが扉が開い

形跡がない、しかもそのナースの顔は青白く移動は瞬間移動しているように素早い。もしかしてこのナース死者かもとは思ったが実

したのは次に見た男だった。その男は年の功でいえば70を過ぎ

たくらいだろうか引き戸が締まり切った状態に関わらず扉を通り抜けて病室に入って来たので頭を出して寝ていた重光は布団を引っ張

布団の中に潜ったのである。

 

「うわぁああzz」

 

突然布団を捲られた重光はてっきり霊体に布団を剥がされ恐怖で

叫び声をあげてしまったが、布団をはぎ取ったのは帰ってきた久代

だった。

 

「叫ぶほど驚かなくていいじゃない」

「どこ行ってたんだよ」

「れ、霊が・・・」

「あたしだって幽霊なんですけど、ウフフ」

「その鼓膜に直接笑いかけるのはやめてくれ」

 

正直久代が死者だったことを重光は忘れていた、死者と人間の様に話している自分て滑稽だなと思いながら霊が複数いると訊ねてみる

と久代は不思議そうな顔で質問に応えた。久代にしてみれば今更何を言ってるのか、朝から普通にいたぞ?と言いたかったのだが敢え

て重光に反論しなかったのは久代の人間性だろうか重光に逆らわないそれは生前から変わらぬ久代の誓い。

 

「わたしがいるんだから他にも霊がいて当然よ」

「そう言われればそうなのだが」

 

退院の日が決まり帰宅する準備をしていると久代は何故か2セットずつ用意している、ハブラシが2個コーヒーカップが2個箸が2個と茶わんが2個まるで新婚さんの新居への引っ越しのようだ。

 

「そういえば昨日の晩いなかったけど毎日が暇じゃないのか」

「失礼ね、こう見えても多忙なの。長い事霊をやってると責任ある

 立場 に押し付けられて本当はやりたくないんだけどね」

「ふ~ん忙しいだったら無理しておれの傍にいることないのに」

「それは駄目きみを監視していないといけないのよ」

 

重光には多忙だと言ってみたが言うほど多忙ではなく霊村の幹事長

だがどちらかと言えば暇な役職だった。無論重光は知らない、重光

重光で久代に言ってないことがある。久代に教えると絶対行くと

言うに決まっているし霊である久代が一緒に行くとなると他の人に

どんな悪影響を与えるかわかったもんじゃない。そのような理由で

久代に研修旅行の誘いはどうするべきか迷っていた。ところが

 

「こんにちわ」

「御苦労さまです」

 

久代はナースと挨拶したのだ。

 

「おい今の人間のナースだよな」

「死者のナースが昼間からウロウロしてないわ」

「なんで人間のナースと普通に挨拶できるんだ」

「変?」

 

人間でも霊力が高い人間だったら霊と普通に会話できるかもしれない重光はそう思い込んだが再び看護師達が久代とすれ違い挨拶を

してきたので驚いたのは挨拶だけではなかったからだ。

 

「今の女の人みた?」

「色白で綺麗な人だったよね」

 

どうかんがえてもおかしい、確かに霊能力がない人にも霊体が見える場合はあるが会話まで普通の人間みたいに話せるなどと見た事も

聞いた事もない。雪女は人間化して好きな男性に会いに行ったと民話ではそうなっているが実際に人間化できる霊がいるのだろうか疑問に思った重光は久代にぶつけて見た。すると久代は少し考え込んだ後ゆっくりと語り始めたのである。

 

「あんまり話したくなかったんだけど気づいてしまったら話すしか

 ないよね」

「確かに人から普通に見えるし会話もできる、でも生き返った訳で

 ないのよ。食事はできるけど眠る事はできない基本的には霊体

 だからね」

「上級霊になるとそういうことができるようになる?」

「それはないわ、上級霊でも出来ない」

「ではなぜ?」

「それはあなたのお陰」

「お、おれ?」

「そうあなたには霊を実体化できる能力(ちから)があるのよ」

「そんなちから持ってるとは知らないぞ」

「今は気づいてないかもしれないけど何れ実感できるようになる」

 

病院から退院して自宅に戻り3日経ったある日の事家で夕食をとり

久代と今度の研修旅行に参加するか相談していた時のことだった。

 

「こんばんは」

「どちらさまですか」

 

重光より10才くらい上の60代くらいかその年齢に知り合いは無

覚えはなかったがどこかで見たような気がした。

 

「わしじゃよ、徳次郎じゃ」

 

両親がよく”徳ちゃん”と言っていたのを思い出したがあの爺さんが

死んだのは80代の筈、しかも他界したのはとうの昔だったであるから信じる事はできなかった。百歩譲って徳次郎爺さんだとしても何の為に現れたのであろうか。

 

「実は草刈りに困っているようなんで手伝い出来ないかと思ってな」

「それは大変有り難い申し出に嬉しく思います」

「声かければあと2,3人は集まるじゃろ」

 

3人で広い範囲をやらなければいけないと諦めていたところだが3

増え草刈りは楽になった。徳次郎さんと英太郎さんに源蔵さんの

人で3人とも明治生まれだが60代である、それからというのも

が副をしている減るばっかりだった生産組合は霊たちのお陰で

他所とは違い逆に増え40人になった。草刈りは確かに仕事が捗り

良い事ばかりの様だが今までビールは1ケースだけ買えば良かった

のだが2ケース買わなければいけなくなった、それが重光の泣きたい処だろうか。明治生まれは酒が強かった。

 

おわり

 

この物語はフィクションであり実在の

人物団体には一切関係ありません