[短編小説] ジャガイモ学 | 妄想小説日記 わしの作文

妄想小説日記 わしの作文

わたしの妄想日記内にある”カゲロウの恋”の紹介するために作った
ブログです

6月の雲が多い晴れた日、収穫途中の広大なジャガイモ畑で30人を越える20代から70代、老若男女、着ている服も農作業の人もいれば私服姿の服装もいる人達が集まっている。小太りの40代風の男と少し年上と思える痩せ気味の男が揉めている様にみえる。

 

「わたしの知識で良かったらどうぞ吸収していってください」

「ふん、5年ジャガイモを作ってるんだ今更得る物なんてねえ、芋なんざ埋めておきゃあとは勝手に育つんだ」

「勉強して向上しようとしない方はお帰りになって結構ですよ」

「ワタシなんか20年作ってるんだ、日吉先生はそのわたしが認めた人、気に入らないなら帰るんだね」

「ああ、そうするぜ」

 

来ている来場者のほとんどが日吉の名声を訊きつけ自らが志願して

応募までしてジャガイモの講義を受けに来たが中には受講者のなかに運がいいのか悪いのかたまたま選考に残り日吉の名声を知らぬものが紛れ込んでいる訳だ。

 

日吉秋碑(ひよし あきひと)はジャガイモをつくりはじめてまだ8年だが全国でプロ農家も認めた唯一の男、天候不順で誰もジャガイモが不作の時でも日吉だけはコンスタントに毎年同じ大きさのジャガイモを出荷しているので平時なら単価20円くらいのところ単価300円の時もあった。ではなぜ日吉だけ詳しいのか普通にジャガイモの勉強をしてなれるものなのか、人と違うところは日吉が生物のDNAを基礎とし基礎がわかれば敵がわかるというのが日吉の理論である。野菜だって生物の仲間でDNAによって体を形成している、食べ物は生物によって違うが野菜だって食べ物が存在し動物とは食べ物の種類が異なるだけなのだ。一般の農家さんはそのことを理解しておらず水だけで成長していると考えているがまずはそこから考え方を改める必要が

あると日吉は考えている。

 

「う、いかん」

 

日吉はそう言うと腹を押さえジャガイモの枝を2本千切り持って畑の端を走り始めた。隅まで150メートルはあるだろうか隅へ行くと人が大勢集まってるにも関わらずいきなりズボンとパンツをズリ下げ一昔前便器で座った格好で座ると畑に便を吹いた。ジャガイモの葉で尻を拭くと残ったジャガイモの葉を使い汚物を隠すように葉を載せ冷静に戻ると現実に戻り恥ずかしい気持ちだけがやってくる。恥ずかしいが請け負った講義から逃げる訳にはいかない、歩きながら考えた、前代未聞だぞ講義する教官が講義しようとしながら中断してトイレに駆け込むなんてそれも野グソしたなんてこりゃツイートで拡散されてもしかたないなと思った。

 

「お待たせしました、御見苦し処をお見せしまして申し訳ありません」

「・・・」

「ぷっかわいい」

「先生、尊敬する先生に人間らしいところがあって安心しましたよ」

「人間だもんそんな事もあるさ、でも講義はしっかりやってくださいよ」

「誠心誠意、真心をこめて説明するつもりですから御心配には及びません」

 

老若男女私服で着ている人が多く特に若い女性はファッションセンスをアピールしたもので畑と違い一目で綺麗な女性だとわかるそんな若い人達が少なくない中で日吉は野グソをしたのである。ちなみに本日の参加者は30名、多い日は100名に上るため少なくて良かったと考えた日吉であった。さて気を取り直して出席の点呼をしていく、すると参加者から質問が出た。

 

「先生本日の参加費はおいくらになりますか」

「特に決まった値段はないですよ、無料でもいいくらいですからお気も持ちで結構です」

「良かった、女房が出産間近なものであまり高額だったら辞退も考えていたんです、1000円でも構いませんか」

「十分、十分です」

「先生もっと欲をだしてください、受講の相場は3000円くらいですよ」

「わたしも3000円用意してきました」

「私も3000円が相場だし、第一先生の講義は3000以上の値打ちがあると知人から聞いております」

「そうですかねぇ」

「そうなのでしたか、でしたら妻の出産が終わり次第残り2000円は必ず後日お支払いしますのでご勘弁してくさい」

 

講義がはじまりまずは収穫から話ははじまった。日吉は参加者全員に収穫するタイミング例えば葉が枯れた、葉が黄色くなった、葉に斑点ができた時どの意見にも日吉は反対意見を述べず肯定的に聞こえる。

 

「どの意見も間違いではありません、しかし商売人としては保存を考えねばなりません、枯れた状態や枯れ始めた状態では劣化する事しかありませんがまだ葉が緑化してあれば成長する可能性があります

、雨で大きくなる可能性がありますしまだ生きる可能性を残してあります、従って売り物であれば元気なうちに芋を販売すべきなのです」

「では実践的な話に移りますが皆さんはジャガイモを掘る場合スキなどつかいますよね」

「はい、芋と芋の隙間に草が生えて芋に芽がでないと草の範囲が広がりスキじゃないと畝が残ってしまうのです」

「それはですね、あなた方は基本を間違えているからですよ芋間の間隔が広すぎる間隔が狭ければはっきり言えばスキはいらない間隔狭ければ草は生えないし手で芋を掘るだけで畝はくずれます」

「スキで掘るとどうしても堀残しが生まれるんですよ」

「まだ掘る途中の方もいるかと思います、作ってしまったのであれば変更はできずやり方を変える必要がありますね」

「いいですかみなさん、掘るいもを数えたことはないでしょう、平均一株10個芋ができますから数えてみてください、その際どんな小さな芽でも数える事をわすれないで頂きたい。先程平均は10個だと申しましたが7個小さな芽でも13コ芋が出来る場合もありますから決して思い込みで判断してはなりません」

「先生スキだと右掘ってそれから左を掘るんですがどうしても堀忘れが発生します、どうすれば良いですか」

「なに簡単なことです手で掘ればいいんですよ、手で掘れば土の硬さ

を確認できますから硬くなれば芋は育ちません。芋を掘った後でスキを使えば効率的に作業ができます」

「先生ありがとうございました、先生の言う通りやってみます」

 

全員がプロ農家なので本気で勉強にきているせいか言った訳ではないが全員ノートと筆記用具を持ってきていた。今の質疑応答はもちろん勉強になると判断したのか全員がメモ書きした。

 

「先生に質問です、芽かきと土寄せはセットだと聞きましたが肥料をあげるとおもいます、先生はその際どんな肥料を与えますか」

「追加の肥料ですね、追加する場合私は肥料を与えません」

「確かに追加で肥料を与えるのは出資を抑えなければならない

農家にとってダメージになりますが立派な生産物のため致し方ないのではないでしょうか」

「考え方の転換をすれば安い金額で化学肥料と同様の効果を期待できるのですよ。うちは化学肥料は使わずに米ぬかをつかいます」

「え、でも先生の家は米を作ってませんですわよね」

「精米機はもっています、玄米を農家で買えば米ぬかは無料で手に入りますからね」

「でしたら先生、うちの米買ってくださいよ」

「農家からは原価で譲ってもらてますが御宅にそれが可能ですか」

「すいませんちょっと厳しいです」

「あはは、仕方ないよ」

 

このように何か恩を売ればメリットとして自分に帰ってくると人は考える

実力者に対し損得勘定度外視で手をあげる人間はいるものだ。

 

 

「だったらうちの米はどうですか30キロお代はいりません」

「後が怖いね、フランス料理をご馳走しろなんて言われそうだ」

「そんな事は言いません、先生確かジャガイモを掘るアタッチメントをつけたトラクターをお持ちでしたよね」

「ありますよ金子さん、でも大型特殊を持っていないと貸し出しはデキませんよ」

「昔は35馬力のトラクターを持っていたんで持ってますよ」

「ほう、だったらお米貰うんであれば燃料代はいりません」

「それは駄目だ先生、レンタルだったら1万は取られます」

「レンタル代はいりません、燃料代だけで貸します。しかもお米30キロもくれるというのであれば何もいりませんから」

「先生は整備は苦手でミラーを変えるだけで人に頼ったと聞きました、だったらオイル交換しときますよ」

「燃料より高くつきますよ」

「いんです、ジャガイモは5反やってるんでじゃがいもから回収します」

「お米貰ってオイルまで出して貰うのは気が曳けるな」

”先生小さな声なんですけど市場の件覚えてますか?”

「・・・」

 

”あの時わたしも市場に居て一部始終みておりました”

”わたしが市場の者からもう来るなと言われたのを知っていると”

”ええ、わたしも市場のやり方には立腹してたのであれからすぐ市場を変える決心したんですよ”

”そうでしたか”

 

「先生そろそろお昼かと思うのですがお手伝いしましょうか」

「お弁当じゃないの?」

「違うのよ、先生自ら作られるランチでとっても美味しいんだから」

「良く知ってるね」

「ありゃもう11時ですねこれは忙しくなるな」

 

農家は朝が早いたいてい11時半だが11時の家もあるくらいでいつもは計画的に進むのだが今日は朝から突発的な便意が発生するなどタイムスケジュールはガタガタでいつもは昼食の準備に45分使うのだが今日は30分しかないが時間を押してしまったのは自らが作った事で受講者には一切の原因がない。コメは1升焚きの炊飯ジャーを使うが早くても40分はかかるから既に間に合わない、米を洗って準備に10分残り20分

では味噌汁作るのが関の山でおかずを作る時間はない。

日吉秋碑(ひよし あきひと)がひとり時間が足りない昼食つくりに悩んでいると一人のおとこが声をあげた。

「みんなで美味しいご飯を作らないか」

「キャンプみたいで楽しそう」

「言っておくけど僕は料理が得意なんだ」

「洗いものならわたしの任せて、皿の準備もできるわ、ウェイトレスだもん」

「じゃぼくは先生が監修してください、僕は先生の指示通り動きます」

「火加減の調整役もいるでしょう、わたしにやらせて貰いたい」

「わたしは洗い係 野菜ならどんなものでも洗うわ」

「みんなありがとう、感謝しかない」

 

総勢30人半分の15人は調理にまわる残り15人で部屋の掃除を請け負った。言い出しの金子は調理のまとめ役として調理の順番などを指示

一見すると簡単なようだが日吉と同じ技量を持っていないと出来ないから難易度は高い。ご飯はいつも同じ分量を炊いている日吉が水加減をした、最近の電子炊飯ジャーは釜に目盛りが有り誰でも炊けるがやはりおいしく炊くには経験がいる。金子は日吉と料理のレベルは同等でそれは

味噌汁の味付けから一般の調理レベルとは違う、そもそも30人以上の鍋物なんて普通作った事は無いがにも関わらず1回で水の量を決め野菜の分量もやったことがあるように見ただけで決めるので女性陣から尊敬の眼差しを送られた。違うグループでカレーを作ろうとしてる、カレーには自信がある彼女でもこの分量では勝手が違うみたいだしそもそも一般に売っているルーの分量で足りる訳がない、一般のルーではせいぜい5人分がいいところここでは30人分つくらなければいけないのだ。

 

「どうしたの?」

「あ金子さんいいところへ、カレー作りたいんですがルーがなくて困っています」

「金に糸目をつけない料理ならばルーを使うでしょうが節約して大量の料理を作ろうとしたらあれを使います。あ、ほら御覧なさいありましたよターメリックが」

「カレーを作る香辛料ですね、聞いた事があります」

「他の香辛料もきっとありますよ」

「でもわたし原料でカレーを作った事がないんです」

「分量ならわたしが教えてあげますよ」

「不思議だったんですが金子さんはどうして大人数のお料理を作れるのですか」

「じつはわたし、以前相撲部屋にいましてね」

「なーるほど」

 

出来上がった料理はチキンカツを使ったインド風カレーと生野菜そして鶏肉を使った南蛮風トン汁、カレーに味噌汁はどうなのかと思われたが日高昆布で味をまろやかにした味噌汁は意外とカレーに良く会うと好評だ。

カレーは辛いが辛いだけではなくコクもあり本職がつくるインドカレーに負けていない味で参加者の舌を唸らせた。美味いカレーを食べた後

誰がいうこともなく各自睡魔に襲われ1時間の昼休みは寝てしまった。

 

「ファーア、皆さん起きてください、はじめますよ午後は室内で座学をやります」

 

おわり

 

この物語はフィクションであり実在の

人物団体には一切関係ありません