登山中滑落した企業のトップである東条厳太郎は自らの命を顧
みず助けに来てくれたのが波島との出会いだった。何度か会う
ようになり気心も知れ誰にも話した事がない娘を紹介する気に
なった。誰にも紹介しなかったのは理由があり呪いの所為で娘
の全身はシミがある。生まれながらのシミその呪いを掛けたのは
使用人として東欧家で雇われていた英国人女性エルミアローゼ
ックで些細な失敗からエルミアは解雇され行き場を失った彼女は
飢餓から死んでしまった。死ぬ直前、東条に呪いを掛けていた。
呪いには身体中のシミだけではなかった、25歳の誕生日に命の
火消える。そして結婚しシミがほとんど消えた華憐はあと数時間
で実家である東条家で25歳を迎えようとしていた。源太郎と香
那江には娘の最後くらいは同じ家で面倒みて最期は娶りたいと
思ったのも一因だったようだ。
彰人はその晩東条家にある硬めのマットレスで華憐と一緒に寝
ている。深い眠りに入っていくと夢をみた、ひとり暗い森の中で
彷徨っていると森の奥から甲高く響く金属音が聞こえてくると歩
を進めていった。草木を掻き分け更に奥へ進むと抱き着いても
腕が回せないような巨木の前に人が立っていた。さすがに暗い
森で声を掛けるのは気が引け木の木陰から覗いてみると金髪の
老婆が金づちを振り下ろし釘を叩いている。その先には藁人形。
はじめて見た丑の刻参りに驚きぬかるむ土に足を取られ滑って
しまった。夢から醒めたのは朝5時、ふと横をみると華憐は胸を
抑え苦しそうにしていた。夢に現れた金髪の老婆こそエルミアロ
ーゼックという元給仕、藁人形は華憐に見立てたと彰人は思った
「華憐、華憐、どうした大丈夫か」
「ん、う、気持ち悪いし身体が怠い、寒い・・・」
華憐の額から前髪を除けオデコに手のひらを当ててみると確か
に熱い気がする。今は微熱といったところだが死の呪いならば
悪化すると思うのは両親を含め誰も同じだった。居間で東条夫
妻と病院に連れて行こうかと相談するとどんな医師だろうと治せ
ないという厳太郎、華憐は諦めてと言う香那江に対し彰人は諦
めきれる筈がない。救急車を呼ぼうと電話を掛ける彰人の手を
止めたのは居間のドアを開けた人物がいたからだ。
「なにか酸っぱい物が食べたくて」
「おい歩いて大丈夫かよ、寝ていなくていいのかい」
「無性にグレープフルーツとか夏みかんが食べたくなった」
そこで思い当たる節があるように香那江が微笑みながら華憐に
訊ねてみると華憐は図星だったように頷き香那江は確信したよ
うだ。
「もしやトコロテンや中華サラダが食べたいんじゃない」
「どうしてわかったの?」
救急車を呼ぶ必要はなく華憐を病院に連れて行くことを勧める
母香那江に彰人は理解出来なかった、死の病なら救急車を呼ぶ
べきだと考えていたからだ。何がなんだかわからない厳太郎が
妻の香那江に聞いても明快な答えを貰えず要領が得ない。
「あとね病院に連れて行ったら内科は駄目よ、産婦人科に連れ
て行ってね」
「なぜ内科じゃないんですか、産婦人科ではわからないと思いま
すよ」
「行けばわかるわ」
産婦人科など行った事がなくどこにあるのかわからないので義母
に聞いてみると紹介されたのが岩国産婦人科という病院だった。
桃色の建物に対して病院内はベージュの壁、床はピンクのソフト
タイルそして濃い目のグリーン色のソファーが現実世界から抜け
出したと思わせる。待合室で待っている男性は彩人しかおらず周
囲は女性で固められていた、彩人としては場違いな場所にいる気
がしてならないのも当然だ。
「待った?」
「いやそれほどでもないよ、でなんだって」
「おめでとうございます、ご懐妊ですって」
「なんだそれは?」
「わかんないよ、ご懐妊ってなにかしら」
「ご懐妊という病気なのかな、でもおめでとうとは一体」
「こんな本くれたんだよね。妊婦の心得だって」
「・・・おまえいくらエッチが好きだからってやましい仕事しようとし
てるんじゃないだろうな」
「ちん婦の心得って」
「やめてよ、何それちん婦って読むのは違うんじゃない」
「新しい嫁だからしんプじゃない」
「ぷっ、」「ぶわっっはは」と近くに居た女性達はみな噴き出した。
産婦人科が何する場所か子供さえ知っているしご懐妊の意味を
知らない成人カップルがいるとは思えないと考えたら夫婦漫才か
2人組コメディアンしか考え憑かない」、そう二人は芸能人と思わ
れていたようだ。死の病の不安から真顔で話した彰人が笑に輪
を掛けた。意図せず笑われた時は恥ずかしく居たたまれないも
ので彰人と華憐は病院を小走りで出て行った。東条家には車が
3台ありプロボックスという商用車を借りて病院まで行ってきた。
このプロボックスはハイブリッドであるから燃費はすこぶるよい。
モーター駆動とエンジン駆動を使い分けるもので状況に応じて車
が駆動を変える。
「この車って動いてるの」
「今は電気で動いてるから音が何もしないんだ」
「赤信号に変わったよ」
華憐は助手席に座るのがはじめてらしく何かと彩人に警告する
手助けのつもりだろうが運転する彩人にはわずわらしい。
「ほら、歩行者が渡ろうとしてるよ」
「おまえちょっと黙ってくれるか、気が散る」
隣に文句を言ったので前に停止しているトラックに気が付かなか
った、なんとか寸前で止まることができた。
「彩人の運転て危ないね」
「・・・」
東条家に戻るとすぐに母親の香那江が玄関から飛び出してくる。
妊婦だと医師から言われれば大抵新妻は大事にされるものだが
妊婦やご懐妊が知らない夫彰人は不愉快さのせいで妻を気遣う
ことはできなかった。
「で、どうだった?」
「ご懐妊ですって、なんの事なの?」
「とりあえず家の中に入って、ほら彰人さんも早く」
母香那江に同行してダイニングへ入ると8畳間だったキッチン
ダイニングが隣の洋室との仕切りを外され広大なスペースに
変わっている、15人は座れると思われる映画でみるような貴族
の食堂とも思えるくらいの細長いテーブル。すでに鳥の丸焼き
やサラダ、魚料理にオードブルと置かれているのにまだまだ料
理がメイド達により運び込まれている。
「おかえり、でどうだったかな」
「ご懐妊といわれたそうですがなんでしょうか、この料理は何事
です?」
「ケーキもあるのよ」
ケーキというならば誕生日や何かの祝い、そうなると彰人と華憐
は顔を見合わせて不思議な表情をとっている。
「大体ご懐妊ってなによママ」
「あら知らなかった?赤ちゃんができたのよ」
「わたしに、嘘よコウノトリが運んで来るんでしょ」
「ペリカンじゃなかったっけ」
「ペリカンでもコウノトリでもない、華憐のお腹の中に赤ちゃんの
卵が出来たの」
「ご懐妊や妊娠は赤ちゃんが出来たって事なんだよ」
両親から妊娠した祝いをされるものの彰人は複雑な想いだった
父親になる事への不安ではなく出産するにかかる費用でもない
夢でみた老婦人の丑三つ時参りで華憐がこれからどうなるのか
華憐の未来を考えると妊娠したといって喜ぶ気になれなかった。
朝起きて華憐が気持ち悪い、微熱があったのは妊娠の所為だと
香那江から言われたが本当にそれだけなのかと疑心は消えな
い。25歳で死ぬといった義父東条源太郎と英国人女性エルミア
ローゼックの間に何があったのか詳細は聞かされていないのも
彰人の脳裏を悪い予感で安心が出来ない。
海が近いリゾート地で彰人は別荘に美人と宿泊した。見覚えが
あるスタイルから華憐とばかり思っていた、というのも目覚めた
ら自宅のベッドだったので夢だったと気が付いたのであるが華
憐だったと言える確証はない、なぜなら夢に現れた女性の顔は
霧に覆われたように暈されていたからである。夢占いでは見た
夢には意味があるという、夢では砂浜で追いかけっこをしたし
別荘ような建物内ではその女性と水着で談笑したがそれ程妻
の華憐と海へ行きたくはない。毎晩のように妻の全裸を目奥に
焼き付けているから今更水着姿を見たいと思っていないのだ。
夢で見た風景を考えていた時である、ここ数年電話をしてなか
った母の静子から突然の電話が掛かってきた。華憐と結婚し華
憐が身籠ったと母にも父にも彰人は教えていなかった為驚いて
しまった。若い頃から母には結婚したい娘が出来たら紹介しな
さいときつく言われて来たが人に知られる訳にはいかなかった
それは東条厳太郎の意思を尊重した結果だった、仮にも彼女
の父親であり結婚した今では彰人にとって義父だから頼まれた
事を守りたかった故自分の両親にも華憐のことは言わなかった。
だが以前の時と今は状況が異なり今の華憐は誰に紹介しても
恥じる女性ではない、いやそれどころか美しいので誇れる女性
そして妊娠したことにより自分の両親に言わないのは人の道か
ら外れると思った。妻が妊娠したとうことは両親が初孫ができた
事を意味する。
「彰人あんた、彼女出来たら紹介しに来いよ」
「彼女なんていないって」
「嘘つけ先日若い女の子と一緒に歩く姿をみたぞ」
あまり外を歩かなかったが今のマンションを決めた時には二人で
マンションを初見しなければならなかった、その日だろうと思った。
「彼女はいないさ、でも妻ならできたよ」
「な・・なんだって」
「至急連れてきなさい」
「いやそれが今は無理かな」
「なんでよ」
「妻は、いや華憐て名前なんだけどさ、その可憐をあまり連れまわ
したくないんだよ。まだ安定期に入ってないからさ」
「安定期?まさかあんた」
「えへへ、パパになるんだ。かあさんはババだね」
「・・・嘘じゃないだろうね、わかった日にち掛けても絶対来なさい
わかったね」
「華憐に相談して体調がいい日にするよ、前もって連絡する」
「待ってるよ、二ヒッハ」
華憐に母から彰人の実家へ来るように言われたと相談してみる
と明日でもいいから行きたいという、だがバスや電車で体調が
悪い妻を連れて行くのは良い事ではないしかといって東条家か
ら車を出して貰うのも気が引ける。彰人は会社まで自転車で通
勤しているので車は持っていない、そこで車を買う決断をしたが
今すぐ乗れる車を売ってくれる自動車会社は有り得ない。登録や
申請そして整備などで2週間はかかるものだ。納車まで待ていた
ら華憐の体調がどうなるかまったく予想できなかった。母には行
くと言ってみたが交通手段がなく困っているとマンションに来客が
やってきた、前回も義父の指示で迎えにやって来た東条家のメイ
ド長を務める長倉という白髪頭の気品溢れる中年男性だった。出
産祝いに義父は車をプレゼントしたいそうでメイド長の長倉が納車
の手配をしたそうでディーラーの営業マンに場所を教えたそうだ。
地下駐車場まで彰人と華憐が降りて見ると白く光る車体、光るスリ
ーポイントの光るマークは誰でも知っているメルセデスの特徴的な
シンボルだ。国産車のコンパクトカーとさほど大きさは変わらない
車をあまり知らない彰人なのでコンパクトカーと思ったのも無理は
ないだろう。彰人はあまりよくみなかったがリアゲートには”AMG”
のエンブレムがあった。
「華憐、これから行くか?」
「お、おいどうした大丈夫か」
先程まで元気な華憐だったが急に俯き何も話さなくなった。
「あ、はっは、はははは、あっはっっはは」
「おいどうしたと言うんだ」
「25歳で命の灯は終わる呪いはまだ終わっていない、身体の中
から新たな息吹が聞こえるがまさか無事生まれると考えてはお
らぬだろうな」
「死の病は消す事ができぬ、それがサダメよ」
「だれだお前は?」
彰人が訪ねるとそこで華憐は気を失った。気絶した華憐を介抱し
て15分経過すると瞼が開きはじめ起き上がろうと手をついた。
「うう~ん、どうしたの?なにかあった」
「いやなんでもないよ」
「車があれば今すぐでも行くんでしょ」
「いやそれがさ、かあさん急に閉めっきりに間に合わないから
今日は執筆に忙しいんでまた次の日にして欲しいんだって
身勝手な女だろ」
「そうなの?仕方ないじゃない」
彰人の咄嗟に思いついた嘘だった。魔女に乗り移られ呪いは
続いているなど華憐にいうことなど出来なかったのである。
彰人が華憐の掛けられた呪いに苦悩している6月7日の昼過ぎ
同時刻の東条家に来客が訪れていた。80才を越える老婆は厳
太郎に迎えられ書斎のドアを開けた。会話の内容を誰にも知ら
れたくない秘密の密談するときに厳太郎は書斎で話す事が多い
どうやら初対面ではないらしく久しく会ってなかった友人、弟子と
師匠の間柄にちかい関係らしい。
「ご無沙汰いたしております」
「わしでも解けなかった魔女の呪術が解けたのか」
「まだ25歳で死ぬという死の病はまだわからんのですが身体中
にあったシミはきれいに消滅したのですよ」
「なんと!赤子からあったあのシミがのう」
「誰がなおした、あのシミはいかなる霊能者でも呪いは解けなか
ったというのに」
「それがですね娘の結婚相手、現在では娘の夫そして孫のパパ
になります。わたしもじいさんになりますな」
「あの子が結婚したというのか・・・それに妊娠もか」
「それで妊娠祝いとして本日車を贈ったんで今頃喜んでおるでし
ょう」
「それは豪気なことじゃ」
「おまえは知らんだろうがエルミアローゼックとは大魔女ベティロ
ーゼックの孫なのだ、日本における呪術など大魔女の呪いか
ら比べれば稚技に等しい。大魔女の孫であれば強力な呪い」
「あのエルミアがそこまで強い呪術を掛けられるとは知りません
でした」
「あの釈迦王はいかなる呪いも撥ね退けたと言われる、その婿
殿も仏陀に近い存在に思えるわい、会ってみたいの」
「そうであれば死の呪いとて婿殿ならば、いや婿殿と交わった娘
の華憐も同様の力が授かったかもしれん」
「仏の生まれ変わりだと?」
「いやそうは思わないんじゃ、神の眷属かもしれんし一体何者で
あろうか」
彰人本人に呪いを退く力があるとは思っていないから死の病に
頭を抱えている。
彰人の実家は東条家や住むマンションから遠く離れ静岡県の大
井川にある。直線に伸びる高速だったら2時間だろうがどうして
も迂回しなければならない。なぜなら北アルプスや南アルプスと
いった3000メートル級の連峰があるからだ。地図でルート検索
しても4時間20分かかってしまう。ルート検索とは法定速度でス
ムーズに走った場合であり実際には休憩したり食事したり渋滞も
あるので時間よりおおくかかる。朝7時に出発しても着くのは昼
午前中に到着したいし帰途に着くのは夕方出ると夜10時帰宅と
なる。今日実家へ帰らないのは華憐の体調を考えてのことだけ
ではなく手ぶらで実家に帰る訳にはいかない、彰人でさえ久しぶ
りの実家そして一人で帰るのではない初対面の新嫁華憐も連れ
ていくのだ。妻の印象を悪くしたくはないと彰人は考えたからの
理由であった。
「こんにちわ」
予定では10時到着だったが9時に静岡県の実家波島家にやっ
てきたが返答がない。父は奥の山道という青果店があるため居
ないのは想像していたが母の静子さえいないのはおかしい、事
前に何時ごろ着くと約束通り電話していた。だが玄関の鍵がしま
っていないところをみると所用で出かけたがすぐ戻るのではない
かと彰人は考えた。
「彰人広い庭なんだね」
「ああ先祖が代々農家を営んできたらしいが祖父の代から
八百屋をはじめ父の喜代張で2代目なんだよ」
「彰人が継がなくてもいいの」
「兄貴がいるんだ、今はブラジルへ農業研修に行ってる」
「なんでも帰国したら農業をやりたいんだって」
「そうなんだ、勉強してるなんて凄いじゃない」
久々の親子対面に息子の嫁との初対面まだ生まれていない孫
との面会で喜代張と静子は張り切り店を臨時休業し町のスーパ
ーまで買い物、大井川の村は山村で生活に最低必要な食品し
か小売店の池谷食品店では扱っていない、そして小説家である
静子はあまり料理が得意ではない。食品だけでも大量に買い軽
の後部座席は食品と酒の瓶に飲料で一杯になってしまった、悲
鳴をあげるエンジンで上り坂をやっと登り帰宅してみると大井川
では見慣れぬ外車が停めてあり驚いた。静子はレース経験があ
った為すぐにメルセデスベンツだと気づいた。
「ベンツだよこれ、一体誰が来たんだろう」
「また土地を買いたいってきたのかな」
「静子もうすぐ来るんだよな」
「そうなんだよ、どんなお嫁さんかしら胸躍るわ」と
家に上がると10畳ある居間に知った顔とTVで見る様な綺麗な娘
がいたので二人が驚いたのも無理はないしベンツに乗ってきたの
が息子夫婦だったというのも信じられない。彰人としては家に不似
合いといえる8人は座れるであろう大きな食卓がなぜ置いてある
のか疑問に思っていた。
「父さん今日は誰かくるの?」
「何いってるのかしら、お前たちが来たじゃない」
「わたし達のためにご用意されたのですか」
「うんそうらしいね」
「先に紹介してよ彰人」
「ああそうだったね、東条華憐さんだ」
「え東条?籍いれたのになんで別性なの」
「おれも波島の姓を名乗ったほうがいいと思うよ」
「古いな父さんは、最近じゃ夫婦別性が流行っているんだ」
「そうなのか」
母の静子は台所で買ってきた食品の惣菜や寿司の開梱しなが
ら今聞いたばかりの東条という苗字がどこかで聞いた気がして
気になってならなかった。昔から東条内閣など東条といえば裕
福な家の代名詞だが最近どこかで聞いた気がしてならない。
静岡の山深い村では地上デジタルに変わったおかげで視聴で
きるTV局は少し増えたが最新ニュースを見れる環境ではなく
そこで喜代張はインターネットTVを導入した。光ファイバーの敷
線工事が完了したのは数日前の事。TVをつけるとニュースが
映し出され山梨で新技術を使った農業を紹介している。
「あれパパだよ、彰人」
「本当だおとうさん(義父)じゃないか」
「おとうさんてあれは東条厳太郎じゃないの」
「東条厳太郎といえばくつも会社を経営してるグループ企業の
トップじゃないか。その人が彰人の義父?」
「お父さんうちに新聞が取材にきたらどうするか」
「野菜買えば話してやるというぞ。おまえも今本買えば特典で
取材に応じてやればいいだろう。」
「あそうね、使えるものなら猫でも使えというものね」
「そりゃ違う、使える物ならコンニャクでも使えとは独身男の諺だ」
最後の財閥と言われ大富豪とも言われる東条一族これから親
戚付き合いすると思うと喜代張は眩暈がしてくる。結婚した以上
嫁の実家東条家の豪邸へ行く機会もあるだろう、そんな時に何
を着ていくべきか静子の頭は重くなるし血が逆上し青褪めてしま
う。失神しそうになるのは一人娘と結婚したことで将来後を継ぐ
可能性を考えてのことだった。今はまだ嫁のことをまったく知ら
ない、知らないままでは居られないのが嫁と姑の関係で知るに
は質問して聞いてみるのが手っ取り早い手段であろう。
「華憐さんあなた特技ってあるの?」
「容姿しかないんじゃないだろうか、箱入り娘だから」
「お前には聞いていない、華憐さんに聞いているんだよ」
「そうですねぇ、夜伽かしら」
「あ・あなた古風な言葉しってるわね」
「先日なんて何度逝ったかわかりませんでした、もう彰人が気持ち
良くて」
「気持ちいいから腰の筋肉が柔らかくなっちゃったみたいで」
「お、おいもうその辺で」
「おれちょっとトイレに・・・」父親は逃げたようだ。
「近頃じゃ彰人の指を見ただけで濡れるせいか芯が熱くなるみた
いで困っています」
「梅をみると涎がでますね、そんな感じをなんていいましたっけ」
「条件反射かしら」
彰人は母親に言っていい事と悪い事の区別が付かずにごめんと
耳打ちした。そこまで言わなくてもと考える彰人とは違うのが母
多くの場合夫婦間の夜は聞かされることはないので親としては
不安のひとつになっているのではないだろうか。赤裸々に答え
る嫁ではあるが彰人に対する気持ちを知り喜々する気持ちも
静子にはある、言い方を変えれば浮気は絶対しないと華憐が
宣言するようなものに思え嫁がすべてを日向にだしたのであれ
ば義母である自分も影からでようと考えたのだった。
つづく
この物語はフィクションであり実在の人物
団体には一切関係ありません
