[短編小説]  虹乃苔箸 | 妄想小説日記 わしの作文

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わたしの妄想日記内にある”カゲロウの恋”の紹介するために作った
ブログです

7色の虹が大地に掛かる時、7福神がやってくる。古来ではそ

う語り継流れてきたが今は知る者がいない。

 

神奈川県の宮ケ瀬に虹の大橋という長い橋がある。1985年に

出来上がった橋で宮ケ瀬ダムでできた人造湖宮ケ瀬湖に掛か

る橋のひとつ。全長330メートルという長い橋で高度があるせい

か飛び降り自殺が絶えず自殺防止のために2段フェンスを設置

それでも尚自殺は起こる、付近ではバイクの死亡事故や集団

自殺に死体を遺棄したりするせいか心霊スポットろして有名に

なっている。水位が減少した際には湖底に沈んだ村や道路が

姿を現し道路標識が錆びていなかったのは宮ケ瀬の不思議と

いえる。湖底に沈んだ廃村であるが住民と和解し多くの村人は

移住していったが必ずいるのが家と離れるのを拒否する人々だ

2001年にダムは稼働開始したが時代は昭和から平成、令和と

移り変わりその間に起こった事件や事故に廃村が関わった証

拠はない。深夜湖面をみると哀しむ老婆の姿を見た元村人の

一人がいたそうだ。

 

50代の山が好きな男性川端康之は長野県にある戸隠山を目

指し深夜相模湖インターから中央高速に乗ろうと一般道で宮ケ

瀬に向かって走り続ける、この日はどういう訳か1台も宮ケ瀬

を通る車は見なかった。深夜だとしても必ずいるのが走り屋と

言われる者達が車で来るのが通例だった。深夜2時に心霊ス

ポットとして知られる虹の大橋を渡るのは聊か気遅れするもの

まして前後を走る車はいないしすれ違う車もない。雨が降った

後だったせいか霧が視界を奪う。霧がでると街路灯の光は揺

れ動くように見えヘルメットのシールドは水滴がつくので定期

的にふき取らねばならない。橋を渡りヘルメットのシールドを拭

く為に仕方なくバイクを停止させた。橋さえ渡れば幽霊にあう事

はないだろうと安心したせいかもしれない。すると・・・

「こんな夜更けにどこへ行きなさるね」

「わっ、」

近くに民家はなくもうちょっと先に喫茶店があるだけで道路と木

々だけがあるそんな場所で人が現れる筈がない、しかも今は

丑三つ時。

「なんだお婆さんですか、てっきり・・」

「てっきりなんじゃね?お化けかと思いなすったか」

幽霊が現れたと思ったがどう見ても足がきちんとある老婆で

着物も近年に流行した柄だったので幽霊ではあるまいと考えた

それに顔色も特別変な感じではなく血色がいい顔色だった。

 

「戸隠山を登ろうと思ってましてね」

「あんなに遠いところまで行きなさるのかい、へえそれは」

「この近くに住んでるんですか?」

「ちょっとそこを下ったところにわしの家があるじゃ」

「家が傍にあるんですか、まだ住む人がいたとは知りませんで

 した」

「寄って茶でも飲みなさるかの」

「場所が遠いのでゆっくりもしてられないんですよ」

「同じ県民なんでまた今度寄らせて頂きます」

「水はたっぷりあるからの、へへへ」

 

ヘルメットを被りなおしたら老婆の姿は見えなくなった。見えなく

なったのは消えた訳ではなく霧が濃くなったせいで見えなくなっ

たのだが消えていないと立証するのは出来ない。消えていない

かもしれないし消えたかもしれないと言う事それは幽霊か現世

の人間なのかということだ。老婆と別れ鳥居を通り413方面へ

の分岐点に差し掛かると霧はあっと言う間に消えた。

 

中央高速で100キロ巡行で行こうとしたが意外と疲れを感じる

そこで110km/hに上げて巡行すればエンジンにもライディング

にしても安定してると感じる、長野自動車道へ出る頃には燃料

の残量が心細くなり身体も空腹感を感じる。ヤマハ製ではある

が純国産ということではなく海外にもヤマハの工場があり逆輸

入であり国内の規制はない、だがレギュラー使用といいながら

も国内と海外ではオクタン価の違いからパワーや始動性が異

なるため国内ではハイオクが必需となりハイオクを使い始めて

から始動性が格段に上がった。バイクでは高速料金こそ軽自

動車と変わらないが13~15km/lは痛い。

 

睡眠時間2時間程で深夜0時に家を出て4時間程で戸隠に到

着したのではあるがバイクでは仮眠がとれないし登山の準備に

も時間が掛かる更に山中では7時間ほど歩かなければならな

い。登山強行であり事故を起こしても当然とも思える山行だろ

う。登り4時間下山に5時間縦走ではないにしても周遊コース

なので同じ登山道は通らなかった。下山では足が疲労で限度

を越え動けなくなった時遭難する事を回避するため取りあえず

一歩動かしてみようと考えるとなんとか動くことが可能となった。

下山しバイクのところまで戻るとここまで来たのであれば有名な

戸隠そばを食べてから帰宅することにした。さほど特別うまい

蕎麦ではないが蕎麦をたべると先程乗った路線バス運転手が

告げた事を思い出した。

 

「宝船にのって七福神がやってくる」

そういえば戸隠山で会った女性も不可思議な事を言っていた。

「大和タケルの命なら七福神と会うのが宿命」

今から考えると女性はわたしをヤマトタケルの命と思っていたの

かもしれない。タケル、タケ・ル?タケはイタリアへ行った。そう考

えたら人違いではあるまいか。そばを食べていると大きな揺れと

ともに轟音が鳴り響き店の外では消防自動車や警察車両が戸

隠神社方面へ向かって走り去るのが店の窓から見えた。大地震

が起きたのかと思ったが揺れはそれ以降起こる事は無かったが

表に停めたバイクが無事か心配だった。外に出てみようと席を立

ったが顎に白髭を蓄えた老人に腕を捕まれ店を出る事を止めら

れてしまった。

 

「外で何が起こっているんですか」

「遂にその時がきたのじゃ、山が燃えておる」

「山火事ですかね」

「山火事になるでしょう、戸隠山が噴火したんですわ」

 

先刻アリの戸渡りで会った髪の長い女性が現れ教えてくれた。

店内で悠長に蕎麦を食べている場合ではない、隣で食べてい

る人にも噴火の事を教えなければならない、声を掛けようとし

たが様子がおかしい。口を開けたまま箸で蕎麦を持ったまま

動かないのだ。変な客がいたものだと考えるときどうするかと

いえば店の者に訊ねる、ここでは近くに給仕の女性が立って

いたので呼んでみたが背を向けたままで身動きしなかった。

「時間を止めたから外へ出てみるといい」

「外で何が起きているんですか」

「何が起きているかはその目で見ればわかるでしょう」

3人で店の外へ出てみると角刈り頭で背の高い男が高校生の

襟首を掴んだまま静止するのが見えた。路線バスの運転手が

何かで胸を貫かれ運転席に座ったまま絶命している。空中で

は真っ赤な球場のものが尾を引き停止しているのでこの火の

玉が運転手の胸を貫いたのだろう。他にも腕がなく仰向けに

倒れている男や顔を2か所も撃ち抜かれて死んだ女性がいた。

 

「あれはもしや火砕弾ではないですか」

「戸隠山は噴火しただがこれは始まりに過ぎない、浅間山や妙

 義山、両神山など次々と噴火していくだろう」

「多くの人がここで犠牲となりました、これからも全国で多くの人

 が死んで行くでしょう。止められるのはあなただけです」

「わたしにそんな力はありませんよ、人違いしてられる」

「お主はヤマトタケルの命であろう」

「タケはイタリアでイタリア人女性と幸せに暮らしてますよ」

「だったらお主は誰じゃ?」

「人に者を訪ねる前に自分達の素性を明かすのが道理ではな

 いですかね、失礼な人達ですね」

「・・・なぜ人間如きに言わねばならぬ」

「まぁまぁ老師様、いいじゃありませんか」

 

時間停止などはじめて見たのでタダモノじゃないと思っていた

人知を越えた技など出来るのは人間以上の存在、だとしたら

仙人なのかと予想した。しかし女性の言葉は想像以上であっ

た。

「我らは天、人間達が言う7福神とは我らのことです」

「七福神様がなぜヤマトタケルの命を探しているのですか、七

 福神とは仏の一門だと理解してますがタケル様は古代の神

 ではありませんか」

「今は詳しく言えませんがアマテラス様の意思なのです」

 

天照大神とは各地の神社で敬われている神で我が近所の神

社でも主神として崇められている、わたしはその神社の町代だ。

アマテラスとは晴女の象徴であり天の岩戸に閉じ込められ太

が姿を隠したと伝説が残る、対してわたしは雨男であり天空

に向かって手を翳すと雨が降ることから阿夫利山の不動明王と

言われたこともある。七福神の二人は多くの人々が死にゆくの

を止めたくはないかというがどうでも良い事で自信が死ぬ事さ

え臆するものではない、故に人類が死滅しようと心に留める事

はない。しかしこの場にいる人だけは助けてあげたい、そう思う

のは自分に関わった人や同じ場所で空気を吸った人が死ぬ姿

を見たくなかったのである。雨男のわたしは小説家の先月8月に

齢53才となったシガナイ会社員、人からは小説家の大先生にそ

っくりな名前と言われるのが自慢でそれだけしか取り柄がない。

 

「お前は何者だ」

「わたしは無能な会社員、川端康之というものです」

「つまらん男だな、そんな男がどうしてタケル様の知り会いだ」

「タケがタケル様だという確信はなく別人かもしれませんよ」

「老師様ただの人間に私共がわざわざ会いに来た筈ござりませ

 ん、タケル様の波長を関知したからこそ、この者と話したのす」

「そうだった、ただの人間に我らの姿さえ見る事ができぬ。川端と

 やら是非お願いしたいがタケル様をヤマトの国へ帰る様に言っ

 て貰えぬか」

「七福神からの願いとあれば聞きたいところですが、最近は彼と

 音信不通なんですよ申し訳ない」

今まで静寂だった店の中、ところが突然調理場から金属や陶器

のブツカル音が聞こえ近くのテーブルからも蕎麦を啜りながら

会話している女性客の声が聞こえだした。女性店員が注文を聞

きに歩き廻るのも見えるのでふと振り返るとそこには二人の姿は

消えていた。先程外で見た角刈り男は黒いダボシャツに赤い腹

巻きしているのでヤクザな男としか見えずそんな男が高校生相

手に怒鳴っている。

 

「こらぁ裕司、女の子と一緒に泊るとはどういう了見じゃ」

「うるせいや、おれだって高校生やんか、責任の取り方くらい知っ

 とる」

「なんじゃと~」

「桃さん、桃さんここじゃやめときなよ」

「ジョナサンは黙っててくれ、うちの問題だ」

 

口調を聞いていると親子喧嘩らしい、客の迷惑にもなるだろう

癒しを求めてこの蕎麦屋へきたわたしには男の響く怒鳴り声が

我慢ならず仲裁をこころみようと近寄ったら・・・

「なんじゃきさん、」と胸ぐらを掴まれたが男は私の顔を見つめる。

わたしにもこのぶっきら棒な男に見覚えがある気がした。男は額

に手のひらを当てて考えわたしは顎を掴むように手で握り顔を俯

き考えていると男は思い出したのか手を叩いた。

 

「おお、吉原で会った川端くんか」

「吉原?遊郭には行った事ないですけど」

「トルコだよ今じゃソープと言うんだったな」

「ああ、あの人斬り桃さんか」

「なんだよ桃さんは川崎へ通う前は吉原に行ってたのかい」

「人斬りって・・・」

高校生カップルは人斬りと言葉が出て平静ではいられなく二人

はヒソヒソと話し始めた。裕司としても父の犯罪など母から聞い

た事もなく初耳だったのだ。若いドライバーが車から音楽を身体

も響き揺れるように音を出すのを見た事あるだろう、男の声は超

低温で店内を揺らいだ。

「やめてくれよう」

わたしはその声を聞いた途端耳の中は鼓膜が太鼓の打棒で何

度も叩かれる気がした。

「だって女の子が言ってたよ、あの人の相手した子は斬られたか

 のように動けなくなり女斬り桃さんと呼ばれる人だって」

「息子がいるんだからよ、昔の話はそ・の」

 

どうやら大型トラックの運転手をしながら全国で女性をナンパして

は降られ続け川崎でその鬱憤を晴らすべく7輪車というのをしたら

しい。だが息子がいるということはどうやら一人の女性を射止めた

ということで目出度いことだ。

「川端さんだったっけ、桃さんは嫁さんの悠花ちゃんにべったりな

 んだぜ、あっはは」

「松下くん、それは違う。悠花が僕一筋なんだ、いやぁ困ったも

 さ、モテル男は辛いなぁ」

「桃さんの髪形がやけに綺麗に刈ってあると思わないかい」

「悠花ちゃんがこまめに切ってるからだよ」

「どうりでよく刈ってあるわけだ、でなんで松下さんはベレー帽な

 んですか」

「それはそのだね、訊かないでくれたまえ」

 

松下と桃次郎に川端そして桃次郎の息子裕司そして彼女の亜

鄭那ではひとつのテーブルに座れず畳が敷いた座敷へと移

したのであるが何かがおかしい、人生を50年以上生きていれ

ば常識というものがある、時の移り変わりで日本人の生活環境

にも変化が生じるもので例えば蛍光灯の変化がある筒状の蛍

光灯から近年では小さなLEDライトを複数つける照明の変遷だ。

変化に追従できるのは徐々に進化しているからであり極端に

変わるものではない、ここの畳で使われているい草の色のよう

に極端に変わるものには違和感を覚える。テーブルに置かれた

新聞が目に入り番組欄をみてみると長野TV以外に地上波がな

い、まぁ地方にはよくある事かもしれないがドイツニュースやフ

ランス釣り番組といった衛星放送といった番組欄もある。新聞を

開くと21年東京オリンピックで失敗し大きな犠牲をだし大統領

が罷免されたとする記事を見つけた。ただコロナではなくカペラ

という感染病に並行する異次元でありもうひとつの現在。

 

「桃次郎さん、遅くなってごめん」

「仕事してるから仕方ねぇよ」

現れたのは桃次郎の妻悠花だがどうみても演歌の大御所さゆ

りにそっくりで話し方や音声容姿までも瓜二つと言える程似てい

る。息子に怒る姿もあの人ならこう怒るといった風に怒る。

「桃次郎さんそろそろ時間よ」

「もうそんな時間か、ジョナサン行くか」

「どこかへ運送なのかい?」

「そうじゃねえよ、あはは、またな」

 

わたしが死んだように寝ていたので店員の女性から起こされた

そこではじめて夢をみていた事に気が付いた、俳優の文太さん

と会話するのは初めての事でわたしとしては同じ映画に出演し

たように思え嬉しい夢だった。ただの夢ではなく同じ刻だが現

代とは違う歴史、違う進化をした異次元だったようだ。もし先程

あった七福神が肉体から抜け出し魂として会ったというならヤ

マトタケルの生まれ変わりにも会える筈だとわたしは思った。

23年2月4日に大雨が降り午後から晴れると虹が現れると七

福神が云ったことだけが妙に脳裏に刻んである。

 

深夜0時に家を出発し帰宅したのは夜の23時で8時間も山中

彷徨っていた所為かベッドにはいるとすぐに眠りに入った。

時刻は深夜3時、わたしは夢をみたようだ。長い髪をたくし上げ

上で大きな纏まりをみせる会った事も見た事もない美しい女性

が両手を差し出して微笑む。

「やっとあなたに会えた、もうすぐ一緒にくらせる。向こうで待っ

 ているわ、待っているわ、あなた」

目覚めると夢だったことにきがついたが見知らぬ女性なので一

体何者だったのかはわからないがここ数年女性から微笑んで

接しられたのはない自分、夢とは言え微笑む女性が現れた

事がとても嬉しい。

 

2023年1月新しい年を迎え10年ぶりに初詣した、久しぶりに

博多からおせち料理を注文したおかげで正月はおいしい料理

が食べられる。2022年の大晦日は数年ぶりに大雪となり窓ガ

ラスは雪が付着し視界を奪う、吐息を吐いて手で擦ると白いガ

ラスが手の形に溶けて景色を見せる。家屋の屋根や木々に車

などすべてを白く彩り特別おもしろいものではないが白い憧憬

というもの見慣れたものではなく新鮮でもある、熱燗を飲みな

がら見るのは一興。だが一時ならばいい、降り続けば雪かき

という作業が待っている。雪が降る寒い1月、冷える寒さを耐え

偲び2月を迎えようとしていた。

 

おわり

 

この物語はフィクションであり実在の人物

団体には一切関係ありません