いつも車で通る道、だが今日に限って徒歩で進んでいた。何度
通っただろうか、知った道なのに違和感を感じるのは何故なの
だろう。黒い土を踏みしめ歩き続けると低い欄干の橋が現れる
だが赤い筈なのに黒い、車線がなくなり木の節が橋下駄に見え
る。橋の幅も狭く人のすれ違いが出来る程度で車が通れる幅で
はない。街灯がないせいで橋を渡る足元が暗く月明かりだけが
頼りだ。川が水で満たされるのを教えるようにカエルが闇の中、
合掌している。
おかしなことに道路脇に白いガードレースがある筈なのに消え
ている。視界を妨げるススキがユラユラと穂先が風で靡き自生
しているのも妙だ。暗い橋を渡っていくと様子がおかしい女性
がコチラヘ昔歩いて来る、まっすぐ歩けないのか左右に蛇行し
ながら歩いているし髪を纏めているようだが風で髪の毛が流さ
れるところをみると乱れているようだ。突如女性が振り返ると顔
燃やしながら走ってくる、暗い中傍まできてようやくわかったそ
れは顔の直径が1メートルもある異形のモノだった。恐怖でっ身
体が動かず逃げることも出来ない。女性はこちらへ助けを求め
走り寄ってくるのかと思ったが女性は欄干から川へ飛び込み2
度と浮かんでくることはなかった。浅い筈の川だが飛び込んだ女
性は足先まで水没したということは水深2メートルはある。女性が
浮かび上がらないと確認した異形のものは走り去って行った。
今見たものを昔明治生まれの祖母から聞いた事があった。
物の怪ではないが血縁関係にあったおなごの一人で頭が弱かっ
たせいか狐に化かされ橋からおっこちて死んだだよ。
祖母も若く大正時代の事だったらしいがこの目で見たものは決し
て狐が化けたものではない、妖怪と言ってしまえば妖怪かもしれ
ないが神と妖怪は紙一重の気がしてならない、八百万の神(やお
ろず)と古くから日本では言われているが八百万も神がいたら到
底容姿が同じであろうはずがない。
気が付くと上には見慣れた天井が見える、どうやら夢を見たらしい
”どうして起こしてくれないんだマリ”
寝坊したのをマリと言うメス猫のせいにした。
おわり
この物語はフィクションであり実在の人物
団体には一切関係ありません