「なぁマヤふと思い出したんだけどおれと出会う前にメル友が
いたって言ってたよな」
「ああ云ったよね」
当時はてっきり男だと思ったがマヤから同性愛と聞きそして
母君からも一生男性と恋愛するなど諦めましたと聞いた事を
思いだしそこから導き出されるものは:相手は女性ということ。
そもそもおかしい話だ同じ年代だというのにがん患者、独身で
たぶん二人が同性愛好者。しかも一人は早朝携帯電話で話し
た痕跡があり些細な事故で転落している。さらにはふたりが子
宮削除手術を受ける必要があったという。
「おまえ2月ごろ自分が眠れないからと友人に早朝から電話を
掛けた事ないか」
「え。それは・・・言えない」
「だったら質問を変えてみようか、おまえは以前からK大で診て
貰ったよな、蒲池幸子がK大で診察受けたのは偶然なのか」
「あはは、凄い偶然だね」
「もういいじゃない、お母さまがご飯出来たって言ってるよ」
マヤはどうやら切れかかってるようで口調がところどころ強調
して口にだしている。
わたしはマヤの死後母君から臓器提供するために死亡時刻を
誤魔化し嘘をついて申し訳ありませんと謝られたことがありだと
したらわたしがコメント入れてたのは母なのか疑心暗鬼しもしか
したら当人はわたしのブログにコメント入れる前に死んだ幸子か
とさえ思いもした。わたしの携帯にマヤが病院から泣き言を訴え
る日があったから代わりに母君が代返したのかとさえ思ったもの
だ。しかしそれは無理な話である、娘とわたしの間柄を熟知して
いなければ出来ない話でまして電話で泣き叫ぶのは出来ない。
「てっきりマヤが蒲池幸子だと思っていた時期もあるよ」
「きみは馬鹿だね、大体マヤと名乗る女が君のブログに書き込
みしたのって幸子さんが他界してからでしょ」
「今は別々の人格というのがわかるよ、会社帰りに電話した時の
声もマヤは独特だものな」
わたしは毎日のように仕事が終わるとマヤに電話した、カエル
コールというやつだ。特に一日の出来事や変わった事を話した
訳でもなく他愛ない内容でお互いの生存報告や帰るといった
業務報告じみたもの。一日中寝たきりのマヤにとって短時間だ
が掛かってくる電話が嬉しかったようで声が喜びを物語る。
わたしとしては一人家で退屈に過ごしわたしの帰宅をネットで
待っていると考えたから電話を掛ける事にしたのが始まりだ。
未婚で命の灯が消えようとしているマヤに少しでも多くの経験
をさせてやりたく自分の出来る可能な範囲でカエルコールを経
験させてあげたいとの想いもあった。
二人して当時の電話を思い出してみるとくだらない事ばかりで
友達で通話してるというより恋人以上結婚5年以上の夫婦みた
いな会話だったかもしれない。マヤは思い出し顔を赤くしながら
一人で笑っている。
「あの時、あなた本当に立ションしたでしょ」
「ああ。あんときはもう家の敷地だからな我慢しなくて良かった」
「電話越しに放水する音聞こえたんだよ、ため息するんだもん
聞いてて恥ずかしくなっちゃった」
夕食が終わり寝室というほど立派ではないわたしの部屋で二
人ベッドに腰かけ話している。挙式あげてすぐ送り出された特
攻隊員と妻、無事戦場から戻った夫が妻と再会したような間柄
だったので話したい事はたくさんありTVを見る暇があれば話す
ほうが楽しい。
「なに泣いてるんだよ」
「だって・・・あんな恥ずかしい歌わたしの為に一人で歌ってくれて」
恥ずかしい歌とはアニメ”じゃりん子チエ”の主題歌。
♪トラのふんどし ヒグマのぱっち ムカデの歯ブラシぶら下げて
チャブス山でドンコ釣り エテ公が真似して赤っ恥♪
「だってマヤおれと一緒に歌いながら畑で作業してくれるって」
「あの時は言ったわよ、でも実際には無理」
自分の為に恥も外聞もなく夕方一人で歩きながら歌ってくれた
かと思ったらマヤは嬉しくもあり哀しくもあった。
こんな事ばかり話していると時間の経過は早い。夕食後談話に
入ったのでまだマヤも入浴していない筈で入浴を勧めた。
「風呂入ってこいよ」
「ここで待っていてよ、すぐ戻ってくるからね」
「何言ってるんだ、一緒に住んでるだろ」
「あっそうか、一緒に入ればいいんだよ」
「手術跡痛くないのか」
「幽霊じゃないんだからそんなのないよ、お風呂で確認すれば」
柿渋石鹸を見て及第点をくれたようだがまた石鹸を作ってくれる
らしく目標が見えたようだ。一旦目標が見えたマヤは一緒に入浴
している事など意識はなく石鹸作りの為にパソコンで計画作りし
たいようだ。何も着ず素っ裸でパソコンを操作するマヤ、傍にいる
こっちが恥ずかしくなる。
おわり
この物語はフィクションです