わたしはこれでも霊能力がある、そう今までは思っていた。
あの女が部屋に現れるまではへたな除霊師よりも強いと
自分勝手に思っていた。
あれは日本列島に前線が掛かり大雨が一日中降ると天気
予報で言っていた週末の土曜日、日が落ちて夜に深い闇が
訪れようとしている午後の11時、夕方から一層雨が強く打ち
付け9時を回るころには雷が轟暗い闇を時折雷が轟音を伴い
光りを放つ。わたしは11時過ぎはまだ眠りにつけず心霊ドキ
ュメント番組を見ている。折しもTV番組には雨の日撮影した
投降者がいたようで大雨の中夜の神社での撮影された動画
を放送していた。カップに載せたドリップコーヒーにお湯を注
いでいると突然テレビの音は消え同時に部屋の照明も落ちた
停電だ。
真っ暗な部屋の中、手探りで箪笥の引き出しを引くと引き出し
のなかからヘッドランプを取り点灯させコーヒーカップにお湯を
注ぐ、わたしの部屋のポットはエアーポットなので給電が停止
してもお湯は出る。電気で保温させる安いポットなので電気が
止まってから時間があまり経っていない今ならばまだお湯は
冷めてないから今の内ならばドリップコーヒーはまだ飲めると
考えたわたしはとりあえずコーヒー入れる事が最優先である
と考えた。ドリップコーヒーは入れるのに時間がかかる、ヘッド
ランプは直接TVを照らしていないもののライトの光は僅かに
TVにも当るようで暗い中であるにも関わらずTVの存在を認識
させた。電気が通っていないTVの画面は黒い、あえて見ようと
は思っていないがお湯をカップに給湯させているとどうしても
視界に入ってしまう。一瞬何か白い物体がTV画面に映ってい
る気がしてライトを当ててみるが電源の入っていないごく普通
の液晶テレビの黒い画面のままだった。
照明がまったくない部屋でコーヒー㋾飲んでいたら激しい眠気
に襲われどうしようもなく眠い、飲みかけのコーヒーは床に置い
たままわたしはベッドに横たわり手探りで布団をかけると考える
思考は止まり心は安らいだように眠った。眠っていたわたしは
頬に冷たいものが当る感触を2度感じ眼を閉じたままに手で頬
を触ってみるとぬるぬるとした粘り気がある。外は相変わらず雨
が降り続いているようで雨音はし、これは雨漏れだと自分を納得
させ眠りつづけようとした。そういえばヘッドランプはどこに置い
ただろうか、気になると探せずにはいられないわたしは手探りで
寝ている状態から手の届く範囲で腕を動かしてみるもそれらしき
物に指が触れる事は無い。
「ここにあるよ」
夢か?目は閉じているが意識はある、確かに聞こえた女の声に
わたしは目覚めない訳にはいかなかった。
「え!」
声を発してから意識を徐々に戻していくと暗闇にも視力は徐々に
慣れていき暗いながらも物の存在感程度はわかるようになった。
ベッドの上で横たわるわたしの目前には横たわる女の顔があった
のだから恐れと驚きでわたしの心臓はどんどん鼓動を早めていく
”南無阿毘陀仏”と心の中で唱え片言の般若心経を歌ってみると
次に眼を開いた時には女の姿は消えていた。停電は復旧し照明
が点灯して部屋が明るくなったのだがなぜかTVの電源がついて
画面は砂嵐が映っている。
しかしテレビで映っている砂嵐に違和感を覚えた、砂嵐は一定に
動くのがふつうだがテレビ画面の砂嵐の動きは不規則だった。
さらに砂嵐は途切れ途切れになり中心が円のように丸くなってい
ったと思ったら人の顔へと変化した、痩せ気味の女が髪の毛を
広げて俯き加減だった顔が上を向いた。
「きゃあっははは、ぎゃっははは」
窪んだ瞳の奥から白い瞳孔を見せ女は高笑いをする。逃げたと
思った女は移動しただけで逃げたのではなかった。当然リモコン
ボタンで電源を切ろうとしたがリモコンは反応しない、テレビの電
源を切る為にはテレビ裏のコンセントを抜けばいい。だが・・・
その為には女が映りこんでいるTVに近ずかなければコンセント
に手は届かない、まさかテレビから出てくる事は無いと考えたわ
たしは不用心にもテレビ画面の前に覆いかぶさるようにしてコン
セントの電源プラグを指で掴んだ刹那、わたしは首を絞められて
いることを理解した。テレビ画面から女は手を出してきたのだ。
「くわっ」
激しい締め込みにわたしの意識はモウロウとなり倒れてしまう。
朝になり気が付くと坂井泉のCDだけが部屋に散乱していた。
事故死した有名人に対しファンは幽霊でもいいから出て来て欲
しいと願う、わたしも願った。幽霊でもいいからここが問題なのだ
幽霊とは必ずしも綺麗な状態で現れるとは限らない、事故死で
あれば損傷の激しい状態で現れる可能性もあるのだ。女霊が
現れるようになってからわたしの部屋は死体の腐る悪臭が漂い
ここ数週間というものまともに寝た事がなく生気もなくなった。
悪臭は霊のせいだと思っていたが爪が抜け落ち髪の毛がヌケタ
自分の身体が腐りはじめているとようやく気が付いた。
わたしはあとどれくらい生きられるだろう?
この物語はフィクションであり実在の
人物団体には一切関係ありません