[心霊][短編] 続6霊章で行方不明になった人を探せ | 妄想小説日記 わしの作文

妄想小説日記 わしの作文

わたしの妄想日記内にある”カゲロウの恋”の紹介するために作った
ブログです

異界から現世まで無事生還した柳生ひろしと耕作そして向こうから

連れてきた数人は今、東京駅のホームに立っていた。

丁度その同時刻、都内のとある大学病院の一室では意識が戻らぬ

男性の看病をしている30代のスレンダーな女性が花瓶の水を替え

る為か陶器の花瓶を持ち病室から出て行った。

この意識が戻らぬ男こそ柳生といる耕作であり看病してる女性は妻

の翔子なのである。耕作にはあまり時間がないと医師から聞かされ

てはいたがそれでも諦めることは出来ない、最後の日まで。

 

翔子はその晩、耕作に付き添いいつの間にか寝てしまった。

付き添って一晩過ごすのは以前にもあった事で特別な事などない。

だがこの日はおかしな夢をみる事となる。

 

なぜか自分は病院の1室におり淡いブルーのパジャマを着ている

とてもお腹が痛い、「そうだ電話しなくちゃ」

次の瞬間、非常階段に出ていた。眼下にはスロープが見える。

携帯電話に話しかけると心癒される男性の声、わたしは泣きなが

ら痛みを訴えてしまった。

「痛いよぉ~」

「どうしたの?大丈夫か」

「いますぐ会いに来て」

「すぐには無理だよ、1時間はかかるから」

「でも俺より他に言わなければならない人いるんじゃないの」

「・・・・」

「どうしてもと言うのならこれから行くけど」

「やっぱりこなくていい!少し収まってきたから」

「ごめんなさい、こんな時間に電話して。」

わたしはそこで電話を切った。

”翔子”懐かしい声でわたしを呼ぶ声がした、そして夢から覚める。

翔子は意識がモウロウとする中、自分の髪の毛に触れる手の感触

を感じ重い瞼を開き始めると再び自分の名前を呼ぶ声を聞く。

「翔子」

紛れもない夫、耕作の声。どんなに待ちわびた事だったろうか

ここで翔子の意識は突然戻され寝ているであろう耕作の姿を追うと

信じられない事に夫は上体を起こして優しそうな顔で微笑んでいた。

大粒を涙を流しながら唖然となる翔子だが口は開いても声は出ない。

あまりの驚きを感じた時、人間は声を発する機能が麻痺してしまう

だがそれも一瞬のことで数秒後には思考の伝達が各パーツに届け

られる。しかし涙腺だけは脳に近いからか瞬時に反応したようだ。

「あ・なた・・・」

「うわぁぁん、あなた、あなた、あなた」

耕作に抱き着きながら顔を左右に振りながら叫び続ける翔子。

 

翔子はここでふと冷静になる、耕作はまだ名前以外口から発してな

い。これは先日自宅で見た夢そっくりではないか!前にも夢から覚め

たらと思ったらまだ夢の継続中だったということがある。これは現実な

のだろうか?と半信半疑でいた。夢では場面場面が突如切り替わる、

気が付いたら耕作は上体を起こしていたのだからそう思うのも当然。

”テレビドラマであるような指先がピクリと動いてから手が動いた、なん

てことなかったしね”

ただそんな考えもただの思い過ごしだった事が数秒後に理解できる事

態が発生することになる。

「ただいま」

「嘘、本当に夢ではないの」

「夢だったら代わりに呼び出しボタンを押してと頼まないよ」

「ごめん、まだ手が痺れて指がよく曲がらないんだ。看護師さん呼んで」

耕作にそう言われてはじめて自分が何をしなければならなかったのか

翔子は”はっ”と気がついた。

数分後には信じられない事を見た顔の医師と看護師が病室に訪れた。

昏睡状態になってから3年、意識を戻した患者など過去にはいないのだ

手足はまだ普通に動かないものの会話にはなんの支障もない。

奇跡だと思わざる得ない症例なのだ。

 

それから2日後の午後1時、検査を午前中に終えて先程昼食も食べ終

わったばかり。翔子と耕作はゆっくりと会話できる時間を得た。

「耕作君が目覚める前におかしな夢を見たんだ」

「おれが出産する夢とか」

「もう、冗談言わないで真面目に聞いてよね」

「わたしが非常階段に立ち携帯電話でどこかの男性と会話してるの」

「わたしはパジャマを着ていてまるで入院患者みたいなのよ」

「会話の相手っておれじゃなくて?」

「違う、今まで聞いたことがない声だった」

「前世の記憶なのか?」

「でもね、ここの病院にそっくり。ちょっと外観が違ってたかな」

「未来予知じゃないかな」

「え、わたしが入院するという予知夢。それはないと思うよ」

「なんでさ」

「だってこの病院って改装いや改築したばかりみたいよ」

「夢で見た景色は古い感じがしたもの」

耕作はこの大学病院の改築前を知っていた、新聞やテレビで見たのだ。

ある有名な女性シンガーが事故死したのがニュースとなったからだ。

耕作が翔子に心奪われたのもそのシンガーに似ていたのが理由かも

しれなかった。

だが翔子はその事故を知らない、自分と似た人間が同じ建物で死亡した

など聞きたくないのではあるまいか。耕作は言うべきかやめるべきか悩

んでいると翔子は心配になったのか聞いてきた。

「大丈夫?」

「あ、ああ。なんでもないよ」

「辛かったら言ってね、続きは今度でもいいし」

「じゃ少し休ませて貰うよ」

「そ、そうね」

夢の話、病院での事故、女性シンガーの事はもう少し考えてから話そうと

思い耕作は別の機会にと考えたのに対し翔子はといえば病人に対して配

慮が足りなかったと自分の愚かさに反省すると同時に恐怖を覚えた。

”また眠りから覚めなかったらどうしよう”

耕作が寝てしまうのが翔子は恐かった。

 

つづく

 

この物語はフィクションであり実在の人物

団体には一切関係ありません