[心霊][短編小説] 続4 霊章で行方不明になった人を探せ | 妄想小説日記 わしの作文

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わたしの妄想日記内にある”カゲロウの恋”の紹介するために作った
ブログです

吉祥天は愛、繁栄、福徳を授ける神とされ美しい容姿を持つ。マヤとて

目は大きくバランスのよい顔立ちをしているが小顔で顔の中心に顔の

各パーツが集まり輪郭とのバランスがいい吉祥天には敵わない。

吉祥天に対する元夫、柳生のオドオドする動作を見て嫉妬してしまう。

 

「あなたは一体何を口籠っているの?わたしと初めて会った時にさえそ

な表情見せなかったじゃない。吉祥天が好きなの?」

「だってマヤ、こんなキレイな女性見たことがない。まるで女神様みたい

 じゃないか」

「だから、女神じゃない」

「あらまぁ」と微笑む吉祥天。これがまた笑顔が美しい、誰もが心奪われ

しまうのだ。

 

異界で当地の管理者である吉祥天と会うことが出来たのだが動き回る主

をただ待つのも邪魔なゲストのような気がしたのでマヤと柳生は人間が

席するテーブルにつき自分たちも何かを注文しようと考えた。向かい

 

あわせで座った二人であるが柳生は照れてしまって頼むことが出来ず、

の姿を見てマヤは苛立ちを感じてしまい柳生を叱咤した訳だ。吉祥天

の笑顔に心奪われた柳生を見てマヤの両手は強くコブシを握っていた。

 

注文し立ち去る吉祥天、ここでは吉祥寺と名乗ってるらしいがマヤが心

の中で”もう来るな”と思っていた事を吉祥寺は・・・実は存じていた。なに

せ神だから。人間的な感性で注文した料理が届くまで今しばらくかかる

だろうと考えた柳生はここにいる人間たちに話を聞いてみたく周囲を見回

すとまだ食事中の人が数人、さすがに食事中の人に話を聞くのは躊躇し

柳生は周囲を見回したと書いたがここは異界であるから人間世界に

あるメイドカフェのような特定の建築物内にある一室と違い広大な空間に

ある為、テーブルとテーブルはかなり離れている。目視出来たのは数人

しかいなかった何度も周囲を見渡した結果、明らかに食べ終わって寛い

でいる風の中年男性が一人いた。いたのだが自分の席からは20メート

ルくらい離れている、どうするか迷う距離だった。メイド達の動きを見ると

まだ料理が来そうにないと振り返って確認し中年のテーブルに向かう事

を決めた。

 

 

「ちょっとお邪魔してもよろしいですか」

「どうぞ、どうぞ」

 

中年男性は初対面にも関わらず穏やかな顔で着席を許してくれた。中年

男性と柳生は同年代くらいだから相手も心を許したのも一因かもしれな

い。

 

「わたし、まだここへ来て間もないので誰も話相手がないんですよ」

 

柳生はここにいる人間たちはなにが原因でここへ来たのか、また帰りた

意思はあるのだろうか聞きたかったのでどうすれば話を引き出せるか

考えていた。その為には嘘で固めた話では信憑性に欠けると考え出来る

限り真実を話さなくてはならないと思っていた。またこちらから言わなけ

ばならないとも考えた。

 

「そうなんですか、どうりで初めて見る顔だと思いました」

「呪術者に呪いかけられましてまさかこの様な場所まで飛ばされるとは」

「神隠しじゃないんですか」

「ええわたし、除霊をする仕事をしてましてね。仕事中にです、あなたは

 神隠しに合われたんですか」

「ここにいる人達って大方、神隠しに遭遇した人ばかりですよ」

「じゃぁわたしが初めてですかね」

「いいえ、向こうに優美香って女性がいるんですが確か彼女も心霊スポ

 ットでと」

”そうか彼の奥さんは優美香さんって言うのか”

 

彼(耕作)から頼まれて来たが妻の名前も知らない、顔もわからないとこ

こへ着いてようやく気が付き悩んでいた折だった、まさかの収穫である。

柳生は以前依頼者に頼まれ四国で呪術者に呪われた事、呪術者だと思

い込んで行ったが実はその老婆が巫女で結局狗神が現れ敗北したこと

を話した。

 

「そうなんですか?私の場合は家にある稲荷様、鳥居もあるんですがそ

の前に物置建てたのが悪かったみたいでここへ落とさたという訳ですわ」

”それはちょっとおかしい”

 

柳生の内にいる不動明王は疑問を感じていた、通路が多少遮断された

くらいで神仏がその家の主に罰を下すとは思えない。もし罰を与えるとす

れば本尊もしくは身内に害を為したからではあるまいか。そこで不動明

王は柳生の口を借りて聞いてみる事にした。

 

「人の通る道と神仏の通る道は異なります、通常鳥居は道路方向に向け

て建てられそこが神仏の通る道となる。でも社(やしろ)及び鳥居が住居

との兼ね合いで道路方向とは異なる方向へ行かなければならない場合

もある。その場合は人と神仏の通路は2通りになる、神仏の通った後は

地面が乾いてサラサラしているからすぐにわかる。さて本題に移ると貴

殿は物置を建てたと言われましたがその際に太いケヤキなどの天然木

を切断してはおるまいか?」

 

「ええ古くから生えている2本のクルミを切りましたが」

「左右に2本ある太い天然木、大抵そこに神仏が宿りその木々が入口を

 示すのだ鳥居は人間が作った建築物に過ぎない」

「そうなのですか?切っている時樹液が赤いような気がして躊躇してま

 した」

「でも今更どうしようもないけど」

「もし貴殿が帰りたいと願うならば大木になる落葉樹を2本植えなさい」

「ありがとうございます」

 

柳生は目前の男は帰宅したいのだと考える。続けて質問する、今度は

柳生の意思で聞いてみる。

「そちら、ご家族はおられますか」

「両親は他界しまして身内は妻と妹夫妻だけです、妻は一人で何してる

 のだろうと思うと妻が不憫で・・・」

 

柳生はこの場合どう言えばいいのか言葉が出ず詰まってしまった。

中年男性は妻との生活や思い出を思い出したのか、目から光る涙が頬

を伝って落ちる。

 

「帰りたい、妻のもとへ。何でもします、それで家へ帰れるなら」

「すいませんわたしは只の人間に過ぎないのでお力にはなれません」

 

興奮気味に訴えかけてくる男性に対し柳生は静かに答えた。この異界に

来て内なる不動明王と意思の疎通は出来るようになったが柳生は敢えて

自分の事を人間だと言った。神仏と名乗るのは時期尚早との思いも有っ

たが連れて帰ることができるのか現時点では確信がなかったのだ。

 

この異界で過ごす人間達は誰もが到着してから現在までどの程度月日

過ぎたのか知ることは出来ない、ここでは夜の訪れはこない。永遠に

明るく眠くもならない従って日替わりがまったくわからないのだ。

1週間かそれとも数十年経過したのか、中年男性は果たして帰宅して喜

びに浸れるのかそれは柳生も考えが及ばない事であった。

 

つづく

 

この物語はフィクションであり実在の人物

団体には一切関係ありません