[心霊][短編小説」続3 霊章で行方不明になった人を探せ | 妄想小説日記 わしの作文

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わたしの妄想日記内にある”カゲロウの恋”の紹介するために作った
ブログです

耕作という男から「妻を探してほしい」と頼まれて来てしまった山中

今は走ってないブルートレインに乗り到着した駅はどこだかわから

ない、廃村というので単なる心霊スポットだと思っていたから引き

受けたのだが現地へ来てここが異界であるとわかってしまった。

今、柳生は自分の甘さに後悔し家に帰りたいと思っていた。

他界した妻のマヤに背中を押されては引き返すこともできず歩いて

いたのである。余裕をみせた振りしていたこの男、実は暗闇が怖く

夜一人で歩くことはない。年齢と共に低下した視力、目の悪さが幸

いだったようでよく見えないから怖くなかった、ただそれだけの理由。

 

目前に迫る廃墟、そして廃村。今 柳生はこれからどうしようかと考

えていた、耕作には神通力があるというような事を言ってはみたが

自身にはたいした力もなく幽霊を消去したことは一度もない。ではこ

の男のウソだったのかといえば実は嘘ではない。柳生自身、気づい

てはいないが柳生に憑いている物の力だった。柳生はそれがどんな

存在なのかは知らなかった、ただ護る者がいることだけで。

 

柳生とマヤは一軒の朽ち果てた民家に近づくと民家のガラスが割れ

た引き戸その向こう側からこちらを覗く人ならぬモノがいるのが見えた

口髭とあご髭、ギョロッとした大きな目そしてそそり立つ長い鼻。

 

「天狗だ、天狗だよマヤ」

「あれは神通力を持つ大天狗だよ」

仏教や宗教にあまり関心のない柳生は天狗の伝説しか知らないので

天狗に種類があると知らなかった。そこでマヤが言葉を投げたのだ。

 

大天狗は自分の存在が人間に見える筈がないとタカを括っていたが

柳生の言葉に焦りを感じたのかガラス戸を勢いよく開け飛び出した。

大天狗は楓の団扇(うちわ)を柳生に向かって一振りすると突風が起

こり柳生の身体は吹き飛ばされ樹齢100年ほどのケヤキで頭を強く

うち意識を失ってしまう。大天狗はなおも攻撃する様で気絶した柳生に

向かって歩いていくとマヤが進路に立ちはだかる。

 

「この人物に手を出すことは許しません、わたしの名前はマヤ。前世の

名前は摩耶夫人、転生した忉利天(とうりてん)と言えばわかりますか」

 

マヤは忉利天が人間に転生した者だった。摩耶夫人とはブッダの

実母でありブッダ(釈迦)を生んだのち7日で他界しその後、天とな

り仏として人間に崇められている。いくら大天狗と言えども三十三

天とは格が違いすぎ毅然とした天狗の顔に弱気の色は隠せない。

天狗の主(あるじ)も三十三天のひとりだったせいもあるが。

大天狗が天を相手に攻撃を躊躇していたその一瞬、マヤの背後か

ら輝く光の帯が出現し大天狗の首は瞬時に切断され大天狗はその

場で後ろへ倒れる。マヤの背後には輝く冠を頭にかぶり右手には

長い刀剣を持つ柳生とは違う人物が立っていた。

 

「われは不動明王である、身の程を知れ」

柳生を護るモノそれは仏の一角である不動明王だった。

 

不動明王とは悪魔を下し、仏道に導き難い者を畏怖せしめ煩悩を

打ち砕く神仏である。その形相は怒りに満ちたものと言われている。

 

マヤは首を落とされた大天狗を見つめ怪訝な表情を浮かべていた

「・・・・・」

 

柳生いや不動明王とマヤにとってこの異界は未知の世界である、悪

霊、術者が施した結界さらには神の封印さえも打ち破ることが可能

ではあるがいくら壁を打ち破っても道がわからなければ先に進む事

は出来ない、そこで道案内が必要だった。マヤは大天狗に教えて貰

おうと考えたからこそ大天狗に警告したのである、神仏には呪文の

詠唱など必要なく新選組ではないが悪即斬(あくそくざん)が可能なの

だ。だというのに不動明王は一撃で大天狗を斬ってしまった。

 

「出しゃばり不動よ、其方のせいで計画が破綻したわ」

「早く引っ込んで夫に変わるがよい」

 

同じ天といえど不動明王と釈迦の母である摩耶と同格の筈がない。

マヤに命令され不本意ながら不動明王は柳生の体内に吸い込まれ

て消えた。マヤは大天狗が絶命したと考えた訳だが大天狗は消滅し

たかというとまだ身体は倒れたまま、瞼を閉じた頭部は突然瞳を見

開き大天狗の巨体へと飛んでいく。首と身体が接合すると大天狗は

起き上がりマヤと柳生に向かって平伏した。一瞬は驚いたマヤであっ

たがすぐに冷静さを取り戻し、状況をすぐに理解したのかもしれない。

この場所は大天狗にとって家、所在地みたなものだから当然なのだ。

 

「マヤ様が此処へおいでになるのは先刻から承知しておりました、で

すがわたしの千里眼を持ってしても不動様までいらっしゃるとは予想

できませんでした」

「先程のご無礼どうかお許しくださいませ」

「先程の事は不問に致します、ここからはお願いですが道案内して頂

きたいのですが構いませんか」

 

意識を取り戻した柳生は二人の会話を聞きながら考えていた。

”そうかおれを護ってるものは不動というのか”と。

人間的な思考で柳生は道案内だから一緒に同行してくれるものだと

思っていたが歩くそぶりも見せずただケヤキの大木目がけて右手を

差し出しただけ、ただケヤキの背後が白金(プラチナ)色に激しく輝き

あの光に中へと言う。柳生は大天狗の言うことを信じていいのか、と

いう迷いはあったし不動って誰?そしてなぜ自分を護っているのか。

考えてはいたが今はたとえ罠だったとしても前進あるのみ、光の向う

では大軍が手ぐすね引いて待っているとしてもだ。

 

柳生とマヤはプラチナの如き眩しい光源に近づいていくと光は拡散し

二人の身体を銀色に照らし出す、ものの数秒で光は消滅。そして二人

の視界には色とりどりで鮮やかな花があたり一面に咲き乱れていた。

黄色、赤、白の3色スミレが肩幅程度の狭い通路、両側に咲き続き通

路には白い天然石が敷き詰められていた、キラキラと光っているので

大理石や花崗岩ではないだろうか。まっすぐに伸びる通路は遊歩道か

平坦な遊歩道をひたすら歩き続けると突然視界が広がり遠くに池のよ

うな湿地帯が見える、池と違うのは背の高いスイレンとガマの穂が池を

覆い隠すように密集して咲いていたからだ。

風はほとんど吹いていないがバランス悪い形状のガマの穂先は揺れる、

そのせいで隣に咲いてるスイレンもまた揺れる。こうして湿地帯すべてが

揺れているように見える。

 

二人は遊歩道を一気に駆け下りて今湿地帯の外周に作られた遊歩道を

歩いていた。あちこちで光が弾き飛んでいるのを柳生は見たのだろうか

 

「なんだあの光は」

「なんだろうね、近くへ行ってみようよ」

 

二人が光の発生する場所へ近づいてみると数人の男女がベンチに座っ

て手を動かす動作をしている。親指を突き立て拳を握り上へ腕を振り上

げると光の玉が飛んでいきその光は人に当たると弾け飛ぶ。

 

「なんだこれ?でも懐かしい気もする」

「わたしも、昔どこかで見た気がするんだけど思い出せないわ」

 

するとどこからともなく声が聞こえてきた。

「Good piguと言うそうで彼らは”グっピグ”と呼んでられます」

 

このような場合に声をかけてくるのは大抵管理者の部下であり管理者

自ら出てくることはない、そもそも柳生にはこの異界の管理者が何者

なのかまったく想像出来ないでいた。だが前世の記憶があるマヤには

大方の見当がついており三十三天のうちの誰かではないかと考えた。

声がした直後、空気が動き何者かが出現する兆候が表れたかと思った

瞬間、背が高く強いオーラを纏う女性を中心にして両隣に数人の女性が

柳生とマヤの目前に出現。中心の女性は煌めく光を放ち長い髪の上

頭頂部には銀色の冠、王冠というより形状はティアラに近いモノを被る。

 

「あなた、もしや吉祥天ではないのですか。なんですその恰好は」

 

マヤが驚いたのも無理はない、まさかこの場所に吉祥天が現れるとは

思っていなかった、そして神の衣装ではなく着ていたのはメイド服だった

のだ。

 

「お待ちしてましたわマヤ様、そしてまさか不動様が来て頂けると考えて

もおりませんでした」

 

黒字に白い大きな襟とヒラリとするミニスカートを着る吉祥天の容姿と言

葉がとてもアンバランスで人間界なら笑ってしまう場面ではあるが元とう

利天である摩耶に笑顔はないどころか不快感を示していた。

 

「近頃は人間の信仰心も薄れ天界は不景気の嵐となりわたし共も致し方

 なくこのような下賤な服装を嫌々着て仕事をしているのです」

「そうですかねぇ、嫌々とはとても思えないのですが。と言うよりも生き生き

 してられませんか」

「いやですわ、不動様。」

 

遠くで人間の男性が天のメイド隊を呼ぶ声がしたと思ったら駆け足で走る

吉祥天とメイド隊に柳生とマヤは唖然としてしまう。

メイド隊の仕事ぶりを見ているとまるで秋葉原のメイドさんと同様である。

お客のオーダーを聞いてメイドは紙に記入しているのだ。

 

「吉祥寺さん、バナナパフェと愛のこもったオムライスをください」

「ハートはケチャップと生クリームどちらがよろしいでしょうか」

「では生クリームでお願いします」

 

湯気の立つオムライスがテーブルに置かれると吉祥天は生クリームのホ

イップを取り出し黄色の卵焼き表面に生クリームを絞り出しハートの文字

を描き出す、だがそれで終わりではなかった。吉祥天は自分の胸の前に

両指でハートを形どり”ハートにキュン”と、さらには片足を後ろに跳ね上げ

微笑んでいる。

 

「あの人、絶対嫌がってないだろう。マヤもそう思うだろ」

「・・・・・」

 

フリフリのある可愛いメイド服を着る、それもあまり関心できる事ではない

しかし許せる範囲ではある、しかしあの節操のない動きと表情は天として

如何なものかとマヤは怪訝な表情をして見つめていた。マヤが吉祥天に

注意を促そうとしたところで柳生はマヤを宥める事にした、ここへ来た目

的それは三十三天の指導ではない。あくまで耕作の妻を探す為なのだ。

この時点で柳生は大事なことを忘れていたのである。妻だったマヤにも

生前言われていた事”あなたはいつも詰めが甘いの”と。

 

つづく

 

この物語はフィクションであり実在の人物

団体には一切関係ありません