[心霊][短編小説」続2 霊章で行方不明になった人を探せ | 妄想小説日記 わしの作文

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わたしの妄想日記内にある”カゲロウの恋”の紹介するために作った
ブログです

耕作と柳生はブルートレイン”死兆星”に上野駅から乗り終点の金毘

羅駅に着いたのは朝の5時だった。しかしあまりにも静かすぎる駅周

辺に不信感を抱いた柳生はズボンのポケットから数珠のような腕輪

を取り出した。数珠ではない、数珠のように丸くはなく角がある四角

形で約1センチ四方の石に穴を開け十数個に紐を通し腕輪状にした

ものだ。

 

「柳生さんそれは数珠みたいですけど天然石ですか」

「金ないから手作りだけどね」

 

多彩な色の石だけどただの石に紐、それも魚釣りに使うような青い

ナイロンを撚り合わせた安い糸を通しただけの数珠、なんて惨めな

数珠なんだ、とても効力があるとは思えない。だが今そんな事を言

うのは適切ではないと耕作は口には出さなかった。

柳生は数珠の紐を指の付け根に掛けて石を指で掴むように数珠を

持つと今まで夜明けの明るさだった景色は漆黒の闇へと変貌した。

凍てつくような寒さが手を突き刺す感覚、まるで丑三つ時みたいだ

 

「耕作君、以前ここへ来た時も同様の時間だったんだよね」

「はい、それが何か」

「耕作君は朝だと思ってるだろうけど実際の時間は今深夜なんだ」

「そんな馬鹿な・・・」

「君が信じられないのも無理はない、ここは悪霊達の住処そしてこ

の駅というか村の住人は悪霊なんだよ」

「そしてこの大理石、黒曜石、水晶、瑪瑙などの天然石が魔を退け

る神の力いわゆる神通力を発生する源でもある」

「霊能力じゃなくて神通力?柳生さんあなたは一体何者です」

「神じゃない、けれど神に護られている者とだけ言っておく」

 

今まで日中だと思っていた耕作は自分が大きな間違いをしていた

と考えたのかここから先に行くのは不安で仕方ないようで駅から

は出ようとしない。

 

「耕作君、きみは今非常に危険な状態で肉体から魂が離れかかり

このままじゃ死んでしまう、君は先に進むしか道がないんだよ」

 

”ひ・ひ・ひ・ひ。来るんだ、こっちへ来るんだ。”

その声は駅前方の薄暗い森の中から聞こえてきた。耕作にも聞こえ

たようで柳生が耕作の顔を見ると彼は真っ青な顔で立ち尽くす。

今まで自分は生きてると思っていたのに突然、柳生から死にかけて

いると言われ戸惑っている最中に聞いた耳に直接響くような低い声

”おそろしい”耕作は初めて血の気が引く感覚を味わったのである。

 

「じゃ行こうか」

「で・でも・・・」

「嫁さんを取り戻すんだろ」

 

耕作は今日ここへ来た当初の目的を忘れていた、自分の状態なんか

関係ない。妻を取り戻すのが最優先でその為には怖くても先に進む

必要がある、例え妻が既に死んでいたとしてもここから進む行為自体

無駄に終わることはない。なぜなら結果がどうあれ自身が納得いくから。

柳生は耕作に自分の石数珠を渡し山へ向かって歩を進めていた。

数珠を渡され耕作から見る景色は早朝から深夜へ変化し柳生の言った

今は深夜、その言葉を信じるしかないと思っていた。木々が林立する暗

い森へ二人が近づくと白いものが見えた、目を凝らしてみるとそれは白

い手のひらがゆっくりとこちらを誘うように動いている。

 

「あれは手じゃないですか、木々の間からいくつも・・・」

「そうだね手招きしてるよね」

 

耕作が柳生の横顔を見ると怖がっている様子は微塵もない。森林に手が

多数伸びているのに平然とし当たり前のように感じているのか。この余裕

は一体どこから来るのか、この自信は一体なんなのだ。

 

「柳生さんは今まで除霊の経験があるんですか」

「先刻も言ったけど俺に霊能力はないんで除霊や浄霊は出来ない、けれど

消去ならできるよ」

「え、消し去る事ができるんですか」

「おれの力じゃないからどこへ消し去るのかわからんけどね、地獄へ送るの

かそれとも魔界へ送るのか定かではない」

 

前方には真っ暗の森が待ち受ける、ポッカリ大口あけた闇。夜の街中とは違

い山の暗闇は電灯もない、月明かりも届かない真っ暗闇。その暗闇の中二人

は土と石の未舗装路をを歩いていく。耕作は何かの気配を感じたのか不意に

足を止め目を見開いて柳生の背後を指さした。

 

「や、柳生さん。う・う・し・ろ」

 

柳生が振り返るとそこには・・・

濡れた長い髪を顔に張り付かせた着物姿の女が立っていた。さすがの柳生も

突然の事に驚いたようで足を滑らせ膝をついてしまう。

 

「お、お墓を・・・・立てろぉお~」

「お墓だって!?おまえマヤだろう」

「まったく、いつも言ってるだろう。いきなり出てくるなって」

 

柳生がそう言うと女は濡れた長い髪をかき上げ悪戯っぽく微笑んでいた。

お辞儀をする耕作を尻目にマヤは表情を真剣な顔に変え忠告する。

 

「あなた、ここは危険よ。いくらあなたでも生きて帰れないかも」

そういうと今度は耕作の方へ顔を向けたマヤは言葉に怒りを込めて

「君も偉いところへきてしまったわね、ここは心霊スポットなんて生易しい

場所ではない。人は近づいてはならない禁忌ともいえる場所、神によって

隔離された異次元の世界」

「心配するなマヤ、自分でもそういう場所だと思っていたよ」

「まぁわたしが何を言ってもあなたには無駄だと知ってたけど」

「まだあなたに死なれては困るからわたしも憑いていく」

 

二人の男と女幽霊は真っ暗な登山道を一歩一歩登って行く、呼吸が荒くな

る二人の男は余裕で笑顔さえみせる女にイラつく心は隠せず不快感を顔

に出して。

耕作と柳生そして他界した妻で今は幽霊のマヤ、一行は板と杭で土を留め

た簡素な階段を登りしばらくすると山道は一変、直径1メートルはあろうかと

いうような杉の大木が林立し道は傾斜がきつくなり太い根が地中より顔を出

し登山者の歩行を妨げる、いや根を足場にして登りやすくしてるとも言える。

駅を降りてからすでに1時間は歩いているだろうか、登り初めにはあちらこち

らで木の隅から覗くように見ていた怨霊や悪霊は突然見えなくなり空気が重

く感じられたのがここでは消えた、代わりに何かが押し迫ってくるような圧迫

感を一同は自分の身体で味わっていた。

 

「まや、あそこでこちらを見てる奴らを確認できたか」

「うんいるね、あれは天狗だね」

「天狗?心霊スポットになぜいるんです、天狗は神話の産物じゃないですか」

「耕作君、君が廃村はね心霊スポットよりもっと悪い、悪霊というより邪神が

作り給うた異世界なのさ、異次元のね」

「その廃村ももうじき現れる筈だよ、門番の天狗がいるのが見えたから」

 

マヤは腕を水平に上げ人差し指を伸ばし一点を凝視する

「ほらあそこに見えるよ」

暗闇の中、暗闇よりもっと黒い影が大きく揺れたかと思うとそれは建物を形

成し暗闇にいる筈なのに真黒な湯気、モヤを放っているのを全員が見えた

現在ではすでに見ることのできない茅葺きの屋根は今にも崩れて落ちそう

木を切って作られた天然木の柱、腐りきり穴の開いた板の壁が恐怖を誘う

そのような民家、物置小屋が多数点在する。そうここが廃村なのだ。

柳生は自分の天然石数珠を耕作に渡し言い放った。

 

「耕作君は絶対にここから動いては駄目だ、後は俺に任せてくれ」

「その天然石には摩利支天、天照大神、スサノオウノ尊の力が宿ってる

神通力だから君を護ってくれるから」

と言い残し村へ向かって歩いて行った、その背後をマヤは空気の如く進む。

 

つづく

 

この物語はフィクションであり実在の人物

団体には一切関係ありません