[短編小説]介護のための見合い 39編 | 妄想小説日記 わしの作文

妄想小説日記 わしの作文

わたしの妄想日記内にある”カゲロウの恋”の紹介するために作った
ブログです

秀一郎と幸子が樹海駐車場まで戻ってくると何やら人だかりが

出来ていた。赤灯まわした白黒ツートンのボディカラーから

警察官のパトカーであることがわかった。さらに赤いカラーの

消防自動車も数台停止していたので自殺者が見つかったの

かと誰しもが考える、幸子と秀一郎もそう考えた。

 

「いやだわまた誰か死んだのかしら」

 

「俺も人のこといえないのだが・・・」

 

 

平日にも関わらず駐車場にはやけに人が多く騒然として

いたが二人は死体が発見されたせいだと疑問には思わな

かった。駐車場に停められた車は地元ナンバーは少なく

関東圏の品川、横浜、習志野、川越、銚子、湘南が半分

残りの半分は浜松、名古屋、長野、山梨、岐阜。

通常他県ナンバーは確かにあるがこれほどさまざまな

ナンバーが集まることはないのだ。

 

二人は駐車場奥にテントが張ってある事を見つけた

テントには青木ヶ原自治会と大きく書いてあったので

地元の有志による捜索活動のように見えた。

しかし二人から遠くて二人にはわからなかったがこの

テント内に実は二人の大切な友人がいたのである。

その人物こそこの駐車場へ多くの人々を導いた女性

であり人々の心を揺さぶる”激”をネットに投降した

人物、HN名「リラ」であった。

が、たとえ近距離にいたとしてもお互いを認識する

ことはできなかっただろう。なぜならお互いに面識が

ないからである。それがネットの関係というものだ、

なのではあるがちょっと観点を変えて考えてみると

実際に会って話をしないからこそお互いに本音を

晒しだすことが可能ともいえる。

 

でもどうしてリラの言葉でこれほどを人間を動かす

事ができたのだろう?ざっとみるだけでも100人は

いる。リラは著名人でも芸能人でもない、普通の会社

に勤めるパートタイマーで普通の人、言葉もごく在り来たり

では一体何が原因。

自己中、見ても見なかったふりして通り過ぎる、他人に

冷たい社会風潮。確かにそんな人は多い

しかしである、誤解してはいけない。

この日本に於いて金は出せないけど労働力なら出せる

人の為に何かをしたい、困っている人がいたら手を差し

伸ばしたい。そう考える人々も少なからずいるのだ。

リラの言葉はそういう人々の心を抉ったのである。

 

[激] 心の蝋燭に光を灯そう(ともそう)

ある男性が樹海へはいりました、彼を追うべくわたしの

友人で彼の婚約者である彼女も樹海へ

末期がんの彼は彼女のために一人樹海に入り

まだ知らぬわが子の存在を知らせるために彼女は樹海に

みなさんのお力をお貸しください。

私たちは樹海駐車場へ今から3時間後に集まります。

「みんな、助けて。お願い」

 

当初リラが駐車場へ到着したときは首都圏組の数台だけ

ぽつりぽつりと現れるヘッドライトも地方組のグループ

メンバーだけだった。公示は無駄に終わったのかと思った

数分後、1台また1台とライトが輝き車は西から東からと

列を作って現れだした。

その後、メンバーを先頭にグループ分けして樹海へ突入

修一郎と幸子が駐車場へ戻ってきたのは最初のグループが

突入してから30分後くらいだった、すでに時刻は朝の6時。

 

ここで時間のずれを感じてるかもしれない、秀一郎と幸子が

帰宅を決意したのは実は夜明け前だった。

光が差してきたので二人は夜が明けたと思ったに過ぎない

光の正体はさちこを筆頭とする二人を守護する霊と樹海の

土地神によるものだったのだ。

 

 

「リラさん、確認しますが探し出す女性って長い髪でスレンダー

な細身の女性でしたよね。あそこで立っている女性みたいな」

 

テント内では一人の若い男がリラに質問をし女性が立っている

方向を指さした、集まっている人達の視線は1点へ向けられた。

 

「ええ そうね、似てるわ」

「ねえ悠里どうかな」

 

「遠くてよくわからないけど似てるわ、でもまさか」

 

違う時間、違う入山口にそれぞれが入り会って戻ってくる

など不可能、なぜならここは広大な樹海なのだ。

会える確率は0.1%以下である。

 

 

「リラさんところで隣の女性は誰ですか」

 

 

「いけない、紹介がまだだったわね」

「名前はユウリ、病院の医師で彼の担当医だから

この中で唯一彼と彼女の面識がある人物よ」

 

ここで普通ならば悠里が自己紹介するべきなのだ

が事態は急を要していた、悠里は焦っていたのだ。

 

「ごめん今は悠長に自己紹介してる暇はないわ

彼秀一郎さんにはあまり時間が残されてないの

痛みに耐えかねて自殺するかもしれない、

みんな急いで見つけて」

 

 

「あのうすいません」

先ほど最初に”あの女性が似てる”と声をあげた

若い男が再び手を挙げて話しかけてきた。

 

 

「な・に」

 

威嚇するような悠里の口調にたじろぎながら

も男は続けて声にした。

「さっきの女性の隣にはよく見ると黒い服を

きた男性らしき人が見えるのですが

足を痛めている雰囲気の人です」

 

「いないよ」という悠里に対し多数の人が

わたしも見えたと言っている。悠里は

近視だった。

”まさかいるはずがない”

”二人が会える訳がない”

これはデータに基づくものでも人の思い込み

医師としては絶対にやってはいけない事

それが悠里の心得でもあった。

 

 

「わたしと誰か2,3人一緒にきてくれる」

 

悠里とリラを先頭に男女5人で駆け寄ると

汗にまみれて疲労困憊の秀一郎と幸子だった

 

 

「先生、靴が泥んこです」

秀一郎の第一声は悠里の履いたライトブルー

のパンプスを見ての事だった。

だが今の悠里には身だしなみに気を配る余裕

なく受け流した。

 

苦笑いで話す秀一郎に対し幸子はただ会釈する

のみだった、それだけでも感謝の気持ちが悠里に

は伝わってきた。

 

 

「もう、あなた達一体何をやってるのよ」

 

悠里の言葉とは裏腹に頬を流れる涙が叱咤では

ないことを物語る。そして秀一郎は小さな声で

謝った、「ごめんなさい」

 

「見つかったぞ」

 

誰かが大きな声で叫ぶと同時に駐車場では歓声が

上がり喜びで樹海の森は包まれた。そこではじめて

この群衆が秀一郎と幸子を探すために集まった事

を秀一郎と幸子の二人は気づくことになった。

 

しかし二人を気遣ったものは人だけではない

誰も気づくことはなかったが森の片隅から見つめる

人物らしき影が数人、一番前に立つのが幽霊のさちこ

その顔は微笑んでいた。

 

 

つづく

 

この物語はフィクションであり

実在の人物、団体には一切関係ありません