短編小説 報復代理人 山羊八寛 その3 | 妄想小説日記 わしの作文

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わたしの妄想日記内にある”カゲロウの恋”の紹介するために作った
ブログです

突然の訪問者に驚く山羊であった。
若い女性を部屋に迎えた事など初めての経験
どうすればいいのか考えてみると、とりあえず
パンツ一丁とTシャツ姿をなんとかすべきだと思った。
そう寝起き同然であるから洗顔も歯磨きもしていない

「ちょっと待ってて」
そう女性に言うとタンスの引き出しから新しい下着と
Tシャツ、そして繊維がほつれてボロボロのジーンズ
を取り出しパンツを脱ぎ始めると

「キャぁーーー、何するんですか!」
このようなシュチエーションに慣れていないだろう女性
は顔を紅く染め両手で目を隠そうとしている。
しかし山羊はなぜ竹井美沙子が怒声を上げてるか
理解不能だった

「何って着替えるんだけど」

「だからって若い女の子を前にして普通パンツを
 脱ぎ始めませんよ、他の部屋にいくとかズボンを
 履くとかします。」

「そんな事言ったって俺のうちだし部屋、他にないし」

山羊の言葉を聞き美沙子は思った。
”だらしない、こんな男大嫌い”
”部屋は臭いし吐く息もニンニク臭い、部屋は汚物
 いやいや核廃棄物だわ”

「わかりました、向こうを向いてるのでちゃっちゃと
 着替えてください」

そういうと180度回転した視線の先に目が点となる
視線の先の壁には喘ぐ表情をした女の顔が。
ポスターなんて甘いものではなく壁一面に描かれた
女の顔がこちらを向いて大きく口を開けていたのだ

美沙子は向きを変えようと思ってはみたが顔の向き
を変えようとしたら大嫌いな男の股間に下がる
腐敗したホットドッグを見てしまう気がして怖かった。

ホットドッグには被毛を備えた黒いカビが覆っている
とイメージできたから腐っていると思ったのだ
美沙子はそう思っていたがホットドッグというより実際
はドブに浸かった亀仙人なのだが・・・

「お待たせ~」

「あのぅわたしが言うのも失礼なんですが顔まだ
 洗ってませんよね。もしや歯磨きもしてないのでは?
 話をするまえに洗ってくるのがマナーではないかと
 わたしは思うのですが!」

「はぁーーーーーい」
投げやりな返事を返して使いっぱなしの食器で
溢れる流し台で歯磨きをする山羊。

”食器に歯磨きの泡と涎が落ちてるし・・・”
「あ~汚い」
美沙子は思わず言葉に出してしまった。

美沙子の出した声に歯磨きしながら振り返る山羊
口を真っ白にして差し込まれた歯ブラシ
口の中からよだれが歯ブラシを伝って床に落ちていく

”ポタッ ポタッ ポタッ”

「山羊さん、床に落ちてるよ~~」

「ふぁにが?」

美沙子は床がなぜ白い染みになってるか理解できた
こうやって毎日歯磨き粉を床に落としてるせいだ。
最低男である山羊の行動を無視しよう、見ないように
しようと決めた美沙子ではあったが音は聞こえてしまう

水道の蛇口を回したのか水道が勢いよく流れる音
コップに注ぎうがいを始める音
不快に思っていても仕方ないので効果音だと思う
ようにして聞いてみると意外と面白いものだと美沙子
は思っていたのだが・・・・

数回うがいをして吐き出した後、再びうがいをする音
次は吐き出す音がするはずだと待っていたのだが
そこから音は途絶えた。

シーーンと一瞬流し台は静寂。
まるで突然時間が止まったように音は何もしない

”ゴクゴクゴクン”

美沙子が考えもつかなかった音が発生した
何かを飲み込んだ時に発する音を聞いたのだ。

”信じられない・・・最低~”
歯磨き後のうがいでその水を飲み込む人間がいる
とはこれまでの人生で聞いたことがない
山羊という男に対して不信感は募るばかりの美沙子
憎悪さえ抱き始めていた。

「お待ち同様でした」

どうやら洗顔を終え身支度も終わったようで山羊は
戻ってきた。がどうせ汚い格好だろうと嫌そうな顔で
振り返るとそこにはスーツを着てきちんとした男が
そこには立っていた。

唖然とする美沙子を尻目に先程とは打って変わる山羊

「で今日いらっしゃった用件はどのような事でしょうか」
「公用に関することならば署のほうまでおいでください」

「いえ捜査に関する事ではないのですがお聞きしたい
 事がありまして、刑事さんならご存知かと思いまして」
そう美沙子は話すと続けて
「刑事さんは報復代理人て知っていますか?」

美沙子の口から報復代理人という言葉を聞くとは
思っていなかったので驚きは隠せない山羊。
公(おおやけ)に知られてない報復代理人である
から一般市民の美沙子が知っているとは思えない
それなのになぜ知ってるのか・・・
山羊の沈黙に異変を感じ取ったのか美沙子は尋ねた

「刑事さんどうかしましたか」

「い、いえ なんでも。」
「その報復代理人とは一体何者なのですか」

「今ネットで評判になってる、恨みを代行してくれる
 人らしいのです。」
「それでわたしもちょっと気になっていたので刑事
 さんに聞いてみただけなんですよ」

「もしやあの午前零時にならないと現れないサイト?」

「あはは違います、わたしもちらっとHP見ただけなん
 ですが所在地や電話番号まで載せてあり全うな
 仕事をされてる人らしいんですよ」

どうやら自分の仕事を知られてはいないと山羊は安堵
してみたがよりによってなんで報復代理人の名前を
使って仕事をしてるのか疑問も残る。

「今日来たのは報復代理人について尋ねたいのと
 もうひとつ刑事さんに頼みたい事がありそれは
 刑事さんに同行してもらいたいと思ったからなんです」

「報復代理人のところへ?」

「ええさすがに一人で行くのはちょっと怖いもので」

いつもそんなに多忙ではない山羊だがいくらなんでも
報復代理人の本物が偽者のところへ行くのはまずい
だろうと考えた。確かに偽者を問い正したい気持ちは
あったのであるが。

「こうみえても結構多忙なんですよ刑事って奴は」

「駄目でしょうか?」
残念そうな顔して可愛らしい声で言う美沙子だが
一人呟くように言葉を続けた。

「あの女性もこんな刑事さんが担当だったんだろうね
 不憫だわ」

「え、あの女性って?」

「犯行に及ぶ前日から刑事さんに頼んでいましたっけ
 あのストーカーに恐怖していた若い女の人」
「確か事件後警察は報道から叩かれましたよね」

「もしわたしが一人で行って事件に巻き込まれたら
 友人の新聞記者は黙っているかしら」
 
「・・・ ・・・ ・・・」

山羊は軽く脅迫されている気がしてならない
警察を解雇される自分の姿をイメージしてしまう

「わかりました。同行させて貰います」


つづく

この物語はフィクションであり実在の人物
団体には一切関係ありません