岩の上を上っていくのでてっきり上りが続くのだと
思いきや大岩の裏側をとおり梯子で下っていく
たいした長さの梯子ではないので前を向き一段
また一段とゆっくり降りて地面に着いた。
再び樹林帯の登山道を木々を縫うようにして
高度を上げて登っていく。岩と岩の間には梯子
を橋のようにして掛けてる場所もありスリル満点
橋の長さは2メートルくらいなので慎重に歩けば
問題はない。
さらに上っていくと目の前には鎖場
高さ3メートルくらいだろうか、2本の鎖が垂れていた
古びたさび色の鎖のほうはほとんど垂直
もう一方は岩が微妙な段差を作り鎖がなくても
登れそうだと思い新しい鎖のほうを選ぶ。
岩を登り登山道を歩いていくと視界は開け
そこには見上げるような高い大きな岩盤が
聳えたっていた。鎖が垂れている岩盤は
亀裂が縦に入りコンクリートの壁のようだ。
ここでカメラを取り出し撮影していると
後方から年配の夫婦らしき二人組がきた
二人は以前も来たらしく以前は、と話す
奥さんのほうは腕のリーチが短いので
無理だと言うと旦那さんは巻く道がある
と教えている。
わたしは旦那さんに道を譲り傍観してみる
ただ撮影するだけでは距離間が出ず比較
する対象物が欲しいと思ったのだ。
撮影した後、わたしもカメラをザックに入れ
長い鎖場を登りはじめてみる。
亀裂に足を突っ込むと足場を確保でき手は
亀裂の隙間に手を入れ3点支持は可能。
岩盤は高さ20メートルであり普通の感覚
でいると怖くて登れないものだが岩登りする
人というのは落ちることは考えない。
目の前を岩を攻略して上に行くことしか考え
ないので高度による恐怖よりも登ることに
一生懸命となるのだ。
岩を登り終えると先ほどの夫婦が休憩して
いた。「お疲れ様です」
二人にそう言われたので「ありがとうございます」
とわたしは答えた。
ふと旦那さんのザックや靴を見てみると
ザックはドーターで靴はガルモント。
夫婦そろって初心者じゃないことがすぐに
わかることができた。
「以前店で靴を薦められたんだけど4万以上
もするんじゃ高くて買えなかったんだよね」
旦那さんはそう言うのでメーカーを尋ねると
「スカルパだったと思う」
「この靴ですか?」
わたしは自分の履いてる靴を見せると
旦那さんは頷いた。
風向きが変わり雲行きも怪しくなってくると
奥さんは早めに切り上げようといい始めた
わたしも休憩する前に山頂を撮影したいと
考え再びカメラを取り出した。
撮影を終えザックをおいた場所に
戻ってくると夫婦はコンロでお湯
を湧かしていた。コーヒーを飲むらしい
”いいなぁ”
私はコンロどころかマグカップさえない
あるのはコンビニで買った飲料と
おにぎり2個のセットだけであった。
ただ救いだったのは夫婦が飲んでいた
コーヒーはレギュラーコーヒーではなく
普通のインスタントコーヒーだった事か。
この70代の夫妻といろいろ話をしてみると
百名山はすべて登りきったという。
旦那さんは後立山連峰にある”八峰キレット”
そして”不帰(かえらず)のけん”
穂高連峰の”大キレット”も登ったという。
わたしは心底「凄い人」だと思った
下界だと70代は隠居なのだが山では
70代といえども現役なのだ、この人達
を前にわたしはまだ駆け出しだと思い知った。
夫妻はザックを背負い下山は渓谷を回る
という、わたしはピストンなのでここで別れ
となった。そしてわたしは山を降りた