「痛い、とても痛い」
足は折れているようだ、腕もねじれ手首が変な方向に
向き、右目は飛び出して垂れ下がってる
腹には衝撃をうけたせいで穴が開き赤褐色の液体も
流れ落ちている。
自分にはどうしようも出来ないのでただ暗いこの空間
で痛みに絶えながらもじっとするしか出来ない。
”カチャ カチャ”
”ギィーー”
隣人のドアが開く音が聞こえてきた。
隣にはアメリカ帰りの眩しいくらいに派手な衣装を
纏うヤンキー野朗がいた。
おいらを見るときにはいつも見下した視線を浴びせる
いけ好かない野朗でおいらとは性格が合わない
”キュる キュル”
”ドドン 弩ドン”
やかましい雄叫びをあげる、まるでおいらに当て付ける
ように。暫くしてから下品なヤンキー野朗は出かけて行った
”ド、ド、ど、ド”
珍しく反対隣のイタリア帰りである貴婦人も出かけるようだ
美しいブロンドを風に靡かせ見るものを酔わせる貴婦人
彼女もまた小屋から出て行った。
孤独だ、おいらの目の前には暗い闇しかやってこない
木の壁で四方を囲まれどういうわけか床だけは金属
照明がないのでどこも真っ黒でしかないのだが
何もない小屋の中、だがたったひとつだけ物が置いて
あるそれは頭に被る丸い帽子でバイザーつく。
いつも真っ暗なので今がいつなのか、季節は何なのか
おいらには皆目わからない。
生まれた時からこの小屋に住み着いたのではない
主(あるじ)が店でおいらを見初め数週間経過して
からおいらはこの小屋へやってきた。
ここへやってきたときは一人で寂しかった気持ちも
あったが雨に打たれ外で寒い仲間
ビニールだけをかけられ風が吹くと足が冷たい仲間
などに比べれば雨が入ってこないので幸せと感じて
いた。しかし大自然の中を駆け巡れない今、おいらは
籠の鳥に過ぎない。
以前は週一回は主がここへやってきておいらの面倒
を見てくれたり一緒に走り回っていた。幸福だった
主(あるじ)の姿を見なくなってからどのくらい月日が
経過したのかはわからない。最後に主と走り回った時
大きなトラックにおいらはどんどん迫っていった
危ないと感じた瞬間、おいらは大きな衝撃を受けた。
薄れ行く意識の中で
”ピーポー、ピーポー”
とサイレンの音が近づいてくると思っていた。
主がこれほどおいらを放っておくのは変で
主の身に何かあったのかと思った時もあった。
だがおいらは信じたい
主がその内笑顔でおいらを迎えにきてくれると
閉ざされてコンテナボックスの中でただ主人を
待ち続ける一台の大型バイク。
コンテナに置かれた
ヘルメットが血で染まっていたことなどバイクは知らない
主人があの日の事故で他界したことなどバイクは知らない
コンテナの中でただ主人を待っていたバイク
扉を開ける人がいなくなってから2年が過ぎようとしていた。
フィクションです