わたしは自分のバイクに市販パーツを取り付けようとしたが
いざ作業にかかると特殊工具が必要だと気がつき
バイク屋に頼むべきか道具を誰かに借りようかと悩む
そういえば以前友人のにゃんこ伯爵がわたしに言っていた
ことを思い出した、彼は常日頃から自分のガレージを
自慢しており困ったときはいつでもおいでと言っていた
のを。
わたしは早速携帯電話で友人に電話をしてみると
「今日はこれから出掛けるから無理、そうだね
今度の火曜日17時以降だったらいるからそれで
どうかな?」
「いきなりじゃ無理だよね~、じゃ火曜日ということで」
特殊工具と言っても小さい道具なので借りてくれば
済むのではあるがわたしは友人自慢のガレージを
一度でいいから見てみたかった、友人曰く
道具はなんでも揃ってると鼻高々に言うので
実際に行ってみてその鼻っ柱を挫いてやろう
その思いが強かったのだ。
ところが・・・
仕事からそのまま彼のガレージを訪れ目にしたものは
驚くべき工具の種類と数。
中央には畳2ジョウくらいの作業台、その上には
ボール盤と80ミリ万力を頂点とする大小さまざまな
万力、右の壁には6ミリから32ミリまでのソケット
ラチェットハンドル、ユニバーサルジョイント
エクステンション、ずらりと並んだ両口スパナと
両口めがねレンチ。
初めて見る人にはただの自慢と思うかも知れない
だが使い慣れた人にしかわからないけれど
壁に掛ける事によって人目で探す工具を選べる
し片付ける時も一目瞭然なので合理性に富む
左の壁には大小のドライバー数種類、エアインパクト
ドリルなどの電動工具と塗装用のエアツールまで
ありまさしく工具の山といったところである。
「おお、あった。これこれ」
わたしは数ある工具の中から今日訪れた目的の
8ミリヘキサゴン12,7ボックス用ソケットとエクステ
そしてスピンドルハンドルを手に取った。
壁に陳列したボックスソケットはただ順番に並べて
あっただけではなくサイズの数字と品名が壁に
書かれておりはじめて見るものにもすぐ選べる。
「なんだそれだけでいいのか?」
友人の伯爵はあきれたように言う
「これだけで十分だよ」
と答えたわたしに不満足なのか友人は車を駐車
してある背後のドアを開けてなにやら持ってきた
バイク用のレーシングスタンドとバイク専用ジャッキ
である。たかがフレームスライダーをつけるだけ
なんで大袈裟とは思ったが折角の好意に水を
差す事はせずただ友人に任せようと考えた。
任せたのが大きな間違いだった
彼は工具こそ持っていたのだがあまり使用した
ことがないようでレーシングスタンドをかけるだけ
なのに試行錯誤を繰り返しリアタイヤを上げるの
に約20分も時間を費やしてしまう。
作業が終わったのは工具をとってから1時間後の
ことだった。
”おれがやってれば10分でできたのに”
2本のボルトを緩めて再び違う種類のボルトをつけ
変えるだけのごく単純な作業というのにだ。
「そうだ折角だから奥の部屋も見て行くかい」
友人は突き当たりにあるドアを指さしてそういった
ドアには”立ち入り禁止”と表示がしてある。
「立ち入り禁止となってるけどいいのかい」
「友達ならば見てもらいたいものがあるんだ」
にゃんこ伯爵は微笑みながらわたしにそう答えた
ドアを開けると薄明かりに照らされ鈍く光る物が
日本刀から西洋の剣は長さ別に壁にかけられ
サバイバルナイフから出刃包丁まである。
ガラスケースにはライフル銃やマシンガンに
コルトやルガーそしてS&Wの拳銃が陳列
武器好きなわたしにとっては菓子の家に思えた
見ているだけでも心がワクワクしてくる。
「やっぱりなぁ、喜んでくれると思っていたんだ」
「ちょっとコーヒーでも入れてくるからゆっくり
見ていてくれ、でも置くの部屋には決して
行っては駄目だから注意してくれ」
伯爵はそういい残してガレージから姿を消した
が人間というものは駄目と言われれば逆に
興味を示すもので別段、気にはしてなかった
ドアに惹かれてしまう。
奥にあるドアはつや消しの黒、さらには
大きくまる秘と書かれ”あけて下さい”と
頼んでるようにもわたしには思えた。
「ちょっとだけならいいだろう」
武器が好きなわたしだったがそれよりも今は
見たいという好奇心のほうが強くドアのノブ
をゆっくりと廻していく。
”ギィイー”
不気味な音をたて開けるには力が必要な堅い
ドア。手探りで照明のスイッチをつけると
そこでわたしが目にしたものは・・・
右には中世の城で使われたであろう、カーテンで
四方を囲まれたベッドと壁掛け式のランタンは
ろうそくの代わりにLED型ろうそくで柔らかい
明かりを室内に照らし出す。
だが左の壁にはただカーテンが覆われていた
●秘と書いてあったからすごい部屋かと思っていたが
見てみるとただの寝室かそれとも伯爵秘伝の裏本
もしくはAVテープでもカーテンの向こうにあると
でも言うのか
大抵こういう場合、オカルト映画などでは
開けないほうが良かったと後で後悔する事になる
開けようかやめておこうか躊躇する気持ちはあった
けれど結局わたしはカーテンを開けてしまう
カーテンを開けるとそこには人型の女性らしき裸体
が数体、目を閉じた状態で置かれていた
ご丁寧にも頭上には名前を刻まれたプレートつき
死体かそれとも精密に作られたダッチワイフなのか
近寄ってよく見ようとした時、背後に人影を感じた。
「みぃ~た なぁあー」
わたしはその声でふと背後を振り返り友人を見て
身の毛が逆立つのを感じる。友人は手に出刃
包丁を持って立っていたからだ。
”殺られる”
そう覚悟をしたわたしではあった、が友人は
「見られちゃったものはしょうがない、見られ
たくなかったんだけどねぇ」
「じゃやっぱりこれは死体なのか」
「あっははは、そんな訳ないだろ。生きてるよ
みんな」
生きてる人間ということはここにある女性は
すべて友人が拉致して監禁している
そして友人は結局犯罪者ではないか
「自首しよう、今ならまだ刑もたいしたことはない」
「なんで?本妻と妾達なのに自首しろと」
伯爵はそういうがわたしにはどうしても納得できは
しない、なぜならブロンドやプラチナヘアーの
西洋人が目の前に立っているからだ。
その後友人の奥方に話を聞いてみたら彼女は
「え、道具と言われて不愉快じゃないかって
だってわたしのガレージにも伯爵と数人の
男が道具として装備する時あるから」
呆れた夫婦である、でもそれは他人から見た
考え方であって当人たちは理解し仲も
悪くないからこれも夫婦のあり方なの
かもしれないとわたしは思ったのである。
この物語はフィクションであり実在の人物には
一切関係ありません