短編小説 介護のための見合い 第9編 | 妄想小説日記 わしの作文

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わたしの妄想日記内にある”カゲロウの恋”の紹介するために作った
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家まで訪ねてきてくれた担当の松宮から先方は大いに
乗る気だと聞き後は秀一郎の返事次第だということを聞いた。
そして秀一郎は承諾。松宮は先方である広瀬芳江に早速
連絡してそれから式場と日取りを決めると言い残し帰って行った

式場の手配は先方である広瀬がすべて取り仕切ると松宮から
聞いていた秀一郎と両親には不安があった。
高級ホテルとか料亭だったらどうしよう、と考えていたから
である。
今まで食事に大枚を使ったことはない桐生家族。
洋食のマナーなどまったく知らない3人は心落ち着かなく
連絡を待っていた。

あれから1週間たった快晴で頬を撫でるように心地よい風
が吹きつける5月2回目の日曜日、秀一郎と両親3人は
西新宿にあるインド料理店を目指し歩道を歩いていた。
”なぜインド料理店なんだ・・・・”
秀一郎はそう考えながら歩いた、2,3度きた事がある店で
店の店内も知っており見合いするには不適切な店と知っていた。

インド料理店、母である広瀬芳江が決めた店ではなかった。
母の芳江は高級ホテルのレストランを望んでみたが娘が
「絶対高級な店だったら行かないからね、インド料理!それがいい」
というので仕方なく娘幸子の言う通りにしたからである。
マナーに縛られる洋食レストランが嫌な幸子、だって彼女は家で
ゴロゴロと眠るのが好きな丸太女なのだから当然かもしれない
別名 干物女、マグロ女ともいう。

「対象がただいま店舗を目指し北方面に移動」
”了解”
車道には黒塗りのワゴンが停車し無線機で誰かと話ていた。
黒い車に乗る警察関係者が東京にはよくいるので秀一郎は
別段気にすることなく両親と共に歩道を歩き続ける。

「ちょっとあなた!レストランの中で仕事するのやめてくれる?」
秀一郎が向かっていたレストランその店内では怪しい男女が
テーブルに座っていた。黒いスーツとサングラス、耳にはイヤホン
どこかの捜査員のようないで立ちをする男と黒いスーツの女性
誰が見ても一目でわかる当局の捜査員のような。
「おまえこそ何その格好は?」
「あのねあなた、検事に日曜日は関係ないの。この後仕事だから」

秀一郎のお見合いがどうにも心配だった弟 光男と妻 詩織。
家を出る時はお互い仕事だと告げ二人は別行動をしていたが
学校の教室程度の床面積であるレストランではお互いを見つける
のはごく自然な事。
相手には式場へ行くなと言ってはみたもののやっぱり気になり
夫妻は来てしまったのである。

こうして怪しいものたちが待つインド料理店サラマンダーに秀一郎と
父 登美男と母 裕子の3人は店に入るのであった。
待つこと数分、中年男性と共に若い女性は入ってきた

「初めてお目にかかります、わたくし父の広瀬幸雄と申します」
「そして娘の幸子です」
二人はよろしくお願いしますというと深く頭を下げた。
席を立った秀一郎と両親の3人も同じように挨拶し一礼をし
それから全員着席するのだが秀一郎は先方の母親がいないのを
不思議に思い尋ねてみた。
「今日はお母様は如何されたのでしょうか?」
「申し訳ございません、どうしても外せない仕事がごさいまして
 本日は欠席する事となりました。」

イタリア製らしいスーツを着る父親と地味だが高級そうな服を着る
娘を見て秀一郎はやはり金持ちだなと感じていた。
確かに目鼻顔立ちがバランス良く整った日本美人であるが心を
動かすことはない秀一郎、人は仲良くなりたい嫌われたくないと
感じるから良く思われようと行動するし緊張もするがどうでもいいと
思ったら平静でいられるもので今の秀一郎がそうだった。

双方の両親は質問したり答えたりするものの当の本人たちは
口を開けることなく黙り込んだまま、質問されれれば答えるものの
積極的に質問することはない。職人気質の秀一郎と芸術家タイプ
の幸子はある意味似たもの同士だったのかもしれない。
それ故一度話しはじめれば会話もはずむのだろうがお互い相手を
知らない見合いでの席、ろくに話すことなく終わろうとしていた。

「まただめか・・・・・」
店内右奥のテーブルに座りつばの大きな帽子を被った女性が呟く
仕事で欠席の筈である幸子の母 芳江、実は同じ店内にいた。
左奥のテーブルでも肩を落とす男性とため息をする女性の姿も
内緒でお見合いを見に来ていた弟 光男とその妻 詩織だ。
「あにきぃ~~~~」
兄を心配してわざわざ来てみた弟は思わず声を出していた

秀一郎と両親、弟夫婦そして幸子と両親誰もがこの見合いは
失敗だと感じ見合いは幕を閉じる。
しかし、誰も知らなかったが運命の糸はまだ動き続けていた
結びつくために向かい2本の糸は真っ直ぐ進む。

つづく

この物語はフィクションです