短編小説 介護のための見合い 第8編 | 妄想小説日記 わしの作文

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わたしの妄想日記内にある”カゲロウの恋”の紹介するために作った
ブログです

「幸子!いる?」
とマンションのドアを叩く50代の女性。
ドアのロックを解除する音が聞こえドアは開き部屋から
出てきたのは長い髪をしたスッピン顔の30代女性だった。
「おかぁさん、いつも言ってるじゃない!突然こないで
 前もって電話してって。」
怒る娘と娘のダラシナイ姿をを見て母親も不愉快だった。

「幸子、なにそのダラシナイ格好は・・・。もう少し女らしく
 しないと嫁の貰い手ないでしょう、もう三十路なのよ」
「放っておいてよ、わたし結婚する気なんか毛頭ないの」

社長を生業としてその後継者を作るべく娘には20代の頃
から何件もの見合いをさせてきたがそれが災いとなり
娘 幸子はウンザリして結婚する気も失せていた。
母親が見つけてくる見合い相手は高学歴のエリートでは
あったが頭や容姿が優れているつまらない人間ばかり
だったから。

「また見合いさせるつもりでしょ、どうせまたエリートね
 何度やっても同じだからお見合いしても無駄よ」
「エリートだったら無駄なんだね、じゃ高給取りではないけど
 人間味溢れる個性的な男性だったら?」
「そ、それは・・・・・・・」

幸子はエリート呼ばれる人種が嫌いになってしまったのだが
思いやりのある優しい人間の男性には惹かれる。
内心ではそんな相手とお見合いしたいと考えていた、そこを
見抜いたように母が言ったので返す言葉が見つからない。
会社のことばかり考えていた母親から思っても見なかった
事を言われ幸子は驚くのであった。

エリートと呼ばれる人間、なぜそこまで幸子は嫌なのか
見合いで多くのエリートたちと会ってきたからではない
理由は自分の仕事を理解して協力してくれるそんな男性
をパートナーにしたかったからである。
幸子の仕事はインテリアアーティスト、家の室内を顧客の
要望でローマ宮殿風あるいは神社仏閣のようにデザイン
設計する芸術家と言っても過言ではない。
センス、感性、臨機応変した考え方が出来る相手を協力者
に求めていたのでエリートでは無理だと考えていたからだ。

「とりあえず今日は帰るけど見合いには絶対に出席させる
 からね」
見合い相手のプロフィールを入れた封筒を幸子に渡すと
母の芳江は帰っていった。
この芳江こそ 見合いの友社 で担当した男性を叱咤した
社長業をする広瀬である。

絡みあってほどけなかった運命の糸は今一本の糸となり
結びつくために動きはじめた。
動き出した糸は誰にも止めることはできない、糸と糸が
結び終わるまでゆっくりではあるが動き続ける。
それが運命の相手というものなのだ。

見合いの友社 担当社員松宮祥子は上司である課長木下
に経過報告をするため会議室で会っていた。
「松宮くん、桐生さまに登録して貰えたようだね。おめでとう」
「ありがとうございます。」
課長からの指示は果たした松宮であるがこれで終わりではない
どうしても桐生にパートナーを見つけ事例を残したかった。

「課長、広瀬様に桐生様を紹介しこれから桐生様に連絡を
 するところです」
「広瀬様はなんと言われたのかな?」
「希望道理の相手が見つかって喜ばれておりました」
「おお~そうか、もしこの縁談が決まるようなことになれば
 大きな話題作りになる。社長賞も出るかもしれないから
 頑張ってくれ」
「気を引き締めて頑張ります」
課長から励ましの言葉を貰い微笑む松宮。
桐生修一郎に相手が見つかったと知らせなければいけない
担当の松宮は電話だけで伝えられないと思っていた。
直接修一郎と両親に自分の口から伝えなければ、と
桐生家に電話をしてみると偶然にも両親と修一郎は
今日 出かける予定はないと言われ訪問する事にした。

「こんにちわ、見合いの友社 松宮でございますが」
「はい、どうぞどうぞ中へ」
桐生家3人とも結婚は諦めていたのでそこに一筋の光を
与えてくれた松宮の訪問が嬉しくて仕方なかった。
取り分け一番喜んでいたのは母親で自分たちが客だという
のに松宮のためにわざわざケーキを買ってきたくらいなのだ。

「松宮さん、あなたが嫁に来てくれればいいのに」
松宮は容姿端麗で気遣いも出来ていたので母は好感を
持っていた。
「おほほ、おかぁさま。そんなわたしなんて」
修一郎に好感を持つ松宮であったがこの家に来るのは
あくまでも仕事であって私用ではない。

「まぁどうぞ召し上がってください」
母 裕子にそう言われても”はいそうですか”と頂くわけにも
いかず取り合えず相手方のプロフィールを見せる。
相手方のプロフィールといってもコピーしたものではなく
松宮が綴じ込み式に作ったお見合い写真である。
「いえ 取り合えず相手方のお写真をご覧ください」

3人は相手方の広瀬幸子という女性のプロフィールと
写真を覗き込むようにしてみると驚いてしまう。
想像に反し美人であり尚且つ年収800万なのだ
さらにご両親は会社を経営する資産家。
”うちとは無縁の世界に住んでる人たちだ”
父母と修一郎の3人はそう考えていた。

「松宮さん、何かの間違いではないですかね?」
「いいえお父様 先方の広瀬様にはきちんと修一郎
 様のプロフィールを見せた上で先方のご両親も承諾
 されております。」
松宮は修一郎に質問を受けたとき困らないように
細かく広瀬芳江に質問し落ち度がないようにしていた。
「松宮さんおれ養子には無理ですよ、長男ですからね」
「問題ありません、先方様も後継者として望んでは
 おられません。ただ老後を面倒みてくれればと」

修一郎と父母は考え込んでみると松宮は
「一度会うだけ会ってみてもいいのではないでしょうか?」
「失礼ですがまだ結婚するかどうかもわからないのに
 悩んでも仕方ないのではと」
確かに松宮の言うとおり実際に会ってみなければ相手方が
どう返事をするかわからないし自分達も会ってみないと
相手がどういう人間なのか判断することは出来ない。
修一郎は何よりこれから先、見合いしてくれる相手が出来る
 のかと不安に思えていた。

「父さん、かぁさん 俺 見合いしてみるよ」
「そうか、おまえがそういうならやってみるといい」
父親の登美男はそう答えたが母親は納得できないようで
「う、うん」と口を濁した。
こうして修一郎の見合いは決まったのであるが修一郎は
幸子という相手の名前 に言霊を感じた。
”どこかで聞いたことがあるような”と

つづく

この物語はフィクションです