弟夫婦と両親で見合いのための登録に行きそこで断られた。
一度断っておきながら再度登録を促された弟 光男
見合いの友 担当社員をそのまま追い返す事も出来た、だが
見合いするのは兄修一郎なので光男と詩織はその場の感情
だけで返答できず修一郎に聞いてみる必要があったので
光男は携帯電話から修一郎に電話をかけるのであった。
「はい、もしもし」
「もしもし、兄貴?おれ光男だけど」
「なんだこんな時間に、どうかしたのか」
「実は先刻以前見合いを頼もうとした会社から謝罪と登録の
要請がきたんだけど兄貴はどうする?」
兄 修一郎は見合い登録に行ってなかったのではあるが
両親から失礼な対応を受けたと聞いていた。
光男は兄が当然断るだろうと思っていたのだが・・・・・
「おまえや詩織ちゃんには悪いけど俺は受けたい」
「なぜ?兄貴を侮辱したんだぞ、あの会社は」
「先日おまえの家で言ったよな、もしチャンスがあれば
出来る限り頑張ってみると!他人はまだまだ出会う
機会が訪れるというがそんなことはない。頼む光男
俺も前を向いて生きてみたいんだ、やらせてくれないか」
「兄貴がそこまで言うのなら・・・・・」
弟の光男、義妹の詩織は修一郎の現在を知らない。
低収入というだけしか知らない。
生活のために我慢し節約し時には屈辱を受けそれでも
今の人生と闘っている。
年とってくれば機会は減ってくる、若いときのように選り好み
出来る立場ではいられないのだ。
「光男ありがとうな、電話してくれて。詩織ちゃんにも感謝
しているからと伝えてくれ」
「わかったよ しっかり伝えておくから。それじゃ」
そう光男は言うと通話を終えた。
修一郎と両親のプロフィールが提出されて登録が完了し
たのはそれから2週間後の事だった。
企業見合いの友 担当松宮祥子はすぐ広瀬に連絡した
広瀬に電話すると至急FAXで相手プロフィールを送ってと
頼まれた。
複数の候補を作るべきだろうが松宮は修一郎一人だけを
紹介する、それは松宮の中である確信があったからである。
侮辱を受けた会社への登録、松宮自身さえも難儀すると考え
ていたし連絡してあって貰えないと覚悟もしていた。
こんな順調に行くのはきっと縁がある!と思えたからである。
見合いの登録を終えメンバーとなった修一郎はといえば
登録したとしても簡単に相手がみつかるなどと思っていない
それは今の自分の境遇および待遇を考えると誰も見合いを
してみたいと感がえる訳はない、家と土地はあるが両親ふたり
これから面倒みなくてはならない、それも低収入の自分と。
誰が好き好んで苦労する未来が見えるのに会おうとするだろう
結婚することを諦めていた修一郎であったが自分が見合いする
ことで家族や周囲が安心してくれればいいと考えたのだ。
見合いのことなど修一郎はあまり深く考えていなかった。
今日も帰宅してすぐパソコンに向かいブログを更新する。
ブログとはそんな面白いものなのだろうか?
ブログとは直訳すると日記である、ただノートに書く日記と
違い多くの人の目にふれるものでコメントを入れて貰える。
無論日々の日記として書くだけならばおもしろいものではない
さまざまなジャンルがブログにはあるが修一郎のブログは
自分の考えた小説を書くものだった。
貧乏な金のない修一郎が楽しみを見つけた物、それが創作小説
である。苦労して作ったものほど出来上がれば嬉しいもので充実感
もある。
そんな修一郎のブログにコメントを入れてくれるキャサリン。
はっきり感想を書いてくれる彼女の意見を真摯に受け止めていた
まだ会ったこともない顔も知らないネットだけの友人だが気持ちは
通い合うもので住所や携帯番号も教えあう間柄だった。
「ごほっ、ごほっ。」
「修一郎~今なんかやってるの?風呂洗ってくれないかい」
ブログの更新していただけなので今は忙しいなどと言えるわけない
修一郎は部屋から出てきた。
「なんだ風邪ひいたの?インフルエンザの接種行かなかったのか」
「まったく、いつも口ばかりだからなぁ」
キッチンに立ち野菜の千切りをしていた母の裕子だったが息苦しい
のか椅子に座り込んでいた。
「年取ると出かけるのがおっくうになってくるんだよ」
苦しそうにしている母親を見て心配せずにいられない修一郎。
「熱はあるのか?吐き気は?」
「風邪じゃないとおもうんだよ、熱はないけど頭がふらふらする」
「たまに息苦しくなるけどこうしてるとじき良くなるから」
修一郎は母親の代わりに夕飯を作ろうとも思ったが母は大丈夫と
言うので風呂へ向かう。
「うちにももう一人女がいたらなぁ~」
「死んだおばぁちゃんと違ってわたし一人でなんでもやらないけない
から本当、大変だよ」
母 裕子いつもの独り言である。
母親はこれまでも膝を悪くしトイレに座れなくなったり体がふらつくと
言いながらも家事はしっかりこなしてきた。漢方薬を飲むようになり
関節の痛みはなくなったようだが女一人休む事無く働く。
そんな母親を見ていると心を痛める修一郎ではあったが思うように
ならないのが人の縁というもの。
口では女手がほしいと言う母親であったが息子の結婚、とうに諦め
見合いも相手が見つかるとは思っていない。
それ故、見合いの登録は済んだが家の中では見合いに対する話題
誰もが口に出すことはなかったのである。
つづく
この物語はフィクションであり実在の人物団体とは一切ありません。