太陽の光で普段は明るい見慣れた景色なのに光がない
夜になると見慣れた景色が変わって見えたりすることは
ないだろうか。輝くことのない墓石が月明かりで異様な
輝きをみせるように。
田園地帯に広大な敷地を持つ屋敷が建っていた。
高い垣根に囲まれ大きな木々が立ち並び門からは家の姿を
見ることができない。近隣の人は気味悪がって近づこうと
しない恐怖の館がそこにはあった。
建物はコンクリートで作られた洋館であり壁を覆いつくすように
張り付いたツタの数々。ツタの影響か壁はところどころヒビ割れ
がしていた。
洋館前は広い庭となり倉庫らしい建物もある
この館に住むものそれは悪魔か化け物か・・・・・
「ああ~今日も不採用の通知がきたよ、これで何社めだった
かなぁ?履歴書代や写真代も馬鹿にならないというのに」
大きな家に住むのは化け物ではなく仕事にあぶれた
無職の男が一人で住んでいたのだった。
封書は3通届き2通はすでに開封しベッドの上でくつろぎ
ながら最後の封筒を破り便箋を見てみると
「赤板元禄様、ご多忙のところわが社への応募ありがとう
ございました。熟慮に熟慮を重ね選考した結果、今回は
見送らせて頂く事となりました。ご容赦お願い申し上げます」
・・・・・・・・・
「嘘つきやがって!!何が熟慮しただ!!くそ~~」
男の両親は事故で死去し遺産として家だけは残してくれたが
僅かな両親の貯金があるだけで男は金に不自由していた。
雇用保険を貰っていたのでなんとか食いつなげる程度で
早く次の仕事を見つけなければいずれは飢え死にする
早く仕事を見つけるために一日4社の面接を受けたが
すべて断れていた。
当人にやる気があっても思うようにならないそれが職探しで
ある。だが赤板元禄42歳は諦めない!
家の仏壇に線香をあげて今日も休む。
「とうさん、かぁさん今日も駄目だった。でも頑張るよ」と
大きな洋館は一人で住むには大き過ぎるもので自宅で
ありながら自分の部屋以外にも部屋があり静寂を保つ。
自宅なのに恐怖感は沸いてくる。
赤板はこの日寝ていると足がどうにも落ち着かない
理由はわからないが両足が異様に軽く感じてどうしても
眠りにつくことができないでいた。
それでもなんとか眠ろうとはしていたのだが、
ベッドに入ってから何時間経っただろう、部屋の外に
何者かの気配をベッドの中で感じていた赤板だった。
誰も来ることがない家は突然訪問者の合図を継げる
ドアを叩く音が静かな家に響き渡る。
”コンコン”
時計を見てみると午前2時、丑三つ時と言われる時刻である
人間はこんな深夜訪ねて来ることはない。
幽霊の存在など信じてはいなかったがベッドから出る勇気は
ない。どんなに自分を誤魔化してもやはり怖かった。
そして再びドアを叩く音は聞こえてきた。
”コンコン”
「赤板くん、いるんでしょ?」
自分の名前を呼ぶ女の声。
この世の物ではないと思っていたので怖かった赤板
名前を言われ自分の知り合いだと安心したのではるが。
彼女はいないものの基本、赤板は大の女好きであったので
相手が誰かは知らないが彼の足は自分の意思に関係なく
進んでいった。男という動物は視力聴力に反応して
下半身は動くものなのだ。
ドアの前まで来てから冷静になって考えてみると彼には
訪ねてくる女性の知り合いがいない事を思い出し開錠する
のを躊躇する。
「寒いわぁ~早くあけてくれないと凍っっちゃうわよ」
確かに今日は関東に珍しく大雪が降っていたので寒い。
家の中にいても外で西風が吹きつける音も聞こえる。
話す幽霊などいないだろう、深夜に訪れなければならない
諸事情があったのかもしれないと考え直し赤板は
ドアの鍵をあけた。
ドアを開け目の前にいたのは40過ぎの女性と60代の男性
女性は真っ白だが青みかかった顔色で血の気が通っている
ようには見えない。男性の目も虚ろで視点が定まらない様
だが女性の顔には見覚えがあった。
「あなたもしかしてヤードの友紀子さんでは?」
「でも確か病院で不慮の事故死した筈だよね」
赤板は一気に自分の血が引いていく気がし固まってしまう。
「うん、そうなの!わかってくれて嬉しいわ」
「生前わたしとブログで仲良くしてくれた赤板君に会いたく
なって。君の事を父に話したら一度会ってみたいという
ので父も一緒に連れてきてしまったのよ」
「・・・・え・・・・・」
確かに赤板には以前ブログである女性と交流があった
だが彼女は派遣の事務員だと言っていた。
歌手のヤードなんて彼女から聞いたことは一度もない
そこで試しに聞いてみると
「じゃ君はレイコさん?」
「うんうん。そうなのよぉごめんね嘘ついて」
訪ねてきた女性が何者で自分とどういった関係なのか
知ることはできたが・・・・・・
”父親まで連れてくるなよ!!”
”おとなしく墓の中で成仏してろって”
幽霊に訪ねてもらっても喜ぶ男はいない、けれど
赤板はヤードのファンでもあったので嬉しい気持ちもあり
心の中では複雑な心境に。
つづく
この物語はフィクションであり実在する人物とはなんら
関係ありません