短編小説 戦死者報告役 | 妄想小説日記 わしの作文

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わたしの妄想日記内にある”カゲロウの恋”の紹介するために作った
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昨晩、ドキュメントテレビで戦時中の人々の思い、徴兵された気持ち という番組を見て思いついたのだが
検索すると”メッセンジャー”という海外の映画があるではないか
戦死者報告役の映画である。
映画を見たわけではないので内容はわからないがわしが作る文とどうちがうのだろうか・・・・・・

戦死者報告役というものが戦時中にはあった。
戦争に出兵するわけではなく日本国内での仕事なので楽な仕事だと思われたことだろう。だがこれはやった事ある人しかわからない苦悩や辛さ、悲しさがあるのだ。
残された家族は幼子一人だと知っていても知らせるのがこの仕事。父親の帰りを待っていた7歳の少女に父親が死んだことを知らせなければいけない。
遺骨もなく遺品もないそれでも遺族に伝えなければいけない。

兵役よりも辛い仕事に柏太一に白羽の矢が立った。
友人、知人、親戚筋には徴兵で出兵していった男たちがいた
自分に彼らの戦死報告を遺族に伝えることができるのか?
そんな葛藤はあったが拒否は許されない。
嫌でもやらなければいけないのが戦時中の日本であった。

「貴様か柏という男は」
鬼の憲兵隊の隊長である大岩雷太が柏の元にやってきた。
「貴様は遺族につまらぬ事までいっておるらしいな。連行する」
そういうと柏は憲兵隊に連れられて憲兵隊本部へ。
本部へ連れて行かれた民間人や兵隊に待っていたのは拷問
だからといって憲兵に反抗する事も許されない。

柏はロープで縛られ宙吊りにされた。
「貴様!戦死者報告というものは余計なことを話してはいけないと報告者心得に書いてあっただろう。」
「腑抜けた貴様の精神をたたき直してくれる」

憲兵隊はそういうと憲兵の二人が木刀で交互に柏を打ち続けた。
「うぎゃぁーーー、、」
叩かれるたびに悲鳴を上げる男。
皮膚はだんだん赤みを帯びそして出血していく。
柏が悲鳴をあげようが涙を流そうが手を緩めることはない憲兵
あまりの痛みで失神すると水を頭からかけられ傷口が沁みる痛みで意識を取り戻すが再び打ち付けられる。
たとえ拷問中に被疑者が死亡しようと憲兵隊は責められることはない憲兵隊は法律だともいえたのだ。

こうして拷問に耐え続けてやっと柏は開放された。
1時間は打ち続けられたかもしれない。開放されても立つことはできず気を失い柏の上司が部下を連れて引き取りに。
この時勢、密告は当たり前で自分以外気が許せなかった
だが、柏は人の道だからと己の信念を押し通したのである。
その結果がこれだ。

それから数ヶ月経過し柏も立派な戦死者報告役となる。
以前は報告のたびに流した涙もいまは枯れてしまった。
あまりにもおおくの悲しみや人の死を見すぎてきたせいだろう
そんな柏でも知り合いや隣近所の人へ報告する時は心が痛んでいた。

「規則を犯してないだろうな」
鬼の憲兵隊が戦死者報告部へ監察にやってくるとみな目を伏せる。目をあわすと因縁をつけられるからである。
憲兵隊 隊長が柏の背後で立ち止まったので柏は生きた心地がしなかった。また何か言われるのではないかと
隊長は背後から手を伸ばすと一枚のはがきを手にした。
戦没者の名前は大岩竜一と書かれていた葉書を
その葉書を手に持ち震えていた隊長を不思議に思い柏は
「その方が何か?お知り合いでしょうか」

「い、いやなんでもない」
葉書を元に戻すと出口に向かって歩き始めていった憲兵隊
柏は葉書をもう一度見てみると隊長と同じ苗字であったのに気がついた。”もしや”

その日の夕方柏は家への帰路についていると土手で憲兵がひとり座っているのを見つけしばらく憲兵をみつめていた。
その憲兵が寂しそうに座っていたので興味をそそられたのだ。
柏の視線に気づいたのか憲兵は横顔を見せると
あの柏を連行した憲兵隊の隊長であった。

「隊長さん、もしや葉書の方って隊長さんの親族では・・」
「だまれ。」
鬼の憲兵隊といわれるその隊長が威厳を損ねることは出来ない。弱いところを見せることは出来ないと思っていた。

「隊長さん、ここにいるのは自分と隊長さん二人しかいません」
「悲しい時は悲しむものが人間というものです。」
「わたしは今まで多くの友人や知人を戦争で無くしました
 悲しむ人間を馬鹿にしたりすることはできません」

「貴様はわたしを恨んでいないのか?ひどい目に合わせたというのに」
柏の思いが大岩に通じたのだろうか、大岩隊長はゆっくりと話し始めた。
大岩竜一は隊長にとってたった一人の身内であった。
憲兵として威風堂々な兄を誇りに思い自らも志願した弟
連絡するといつも”おれは絶対死なない”と言っていたのに。
そんな弟を回想して弟の笑った顔や怒った顔を思い出して
一人土手で悲しんでいた大岩だった。

「あの葉書はわたしが貰おう。竜一の遺族はわたししかいない」
「私たちの両親は東京大空襲で亡くなった。」
大岩も悲しみを乗り越えていたのだとわかり柏はやっと理解できた。鬼の憲兵隊長と恐れられてはいるが実は優しい男なのだと。

柏はそれからも戦死者報告を続け戦後になってもやめることはなかった。相手から知らせないでほしかったと言われても
戦争で負けたのになんで息子が死ななければいけなかったとか夫を返してと遺族から非難されようと。
それが戦争で死んでいった人々に対する自分が背負うべき十字架なのだと。

この物語はフィクションであり登場する人名団体は一切関係ありません。