短編小説 災害の哀しみと喜び | 妄想小説日記 わしの作文

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わたしの妄想日記内にある”カゲロウの恋”の紹介するために作った
ブログです

史上最大の台風が直撃し瓦礫の町となった神奈川県黒磯市で
一人の女の子が叫びながら歩いていた。
「まっまぁーーー、どこぉ~~」

年は6歳くらいだろうか泥水で汚れた服を身につけ涙を手で拭ったのだろう、目は泥で汚れた可愛い女の子。
歩きながら右向いては叫び左向いては叫ぶ。だが返事はない
町は鉄砲水と強風で倒壊し町のあちこちに瓦や柱、アルミサッシ、割れたガラス窓が道を塞いでいる。
それらを避けて女の子は歩き続けていた。
泣き疲れても歩き疲れても休むことはしない少女。

するとそこに40歳くらいの女性が少女に向かって声をかける
「ゆみちゃん、!!ゆみちゃんでしょ」
・・・・・・・・・・・・
「わたしよ 隣の家のおばさんよ」
「良かったぁ、無事だったのね。パパやママは一緒?」

「おばちゃぁ~~~ん わぁあああああーーん」
「ママ、、いないのぉ。一生懸命探してるのぅ」
その言葉を聞いた女性はすべてを把握し少女を不憫に思ったのだった。

「ゆみちゃんがんばるのよ、きっとママはみつかるわ。
 わたしもがんばるからね」
励ました女性ではあるが少女のママはもう戻ってこないとわかっていた。そして自分も娘二人と両親と夫が行方不明となっており少女に言った言葉は自分自身を励ます意味で言ったのだ
女性の瞳は涙で溢れていた。

隣の女性の提案で二人で探そうということに同意した少女。
水はまだ完全に引いておらず用水路と道路は雨水のせいで見分けがつかず少女ひとりだったら溺れてしまうことだったろう
だが大人の女性と一緒なので
女性は少女を誘導して危険を回避する事ができた。

遠くに1級河川が見えていたが傍にいくにはあまりにも危険
遠めで河川を見ながら下流を目指し歩いていく二人。
なぜ下流を目指していたかといえばもし流されたのなら下流に流れていくからである。
歩きながらも少女は叫ぶことをやめなかった。
「ママぁあーーー。どこぉ、返事してぇえ」
「もう悪いことしないからぁ~いい子にするからぁ」

瓦礫と化した町で人を探してる人はこの二人だけではない
あっちもこっちも大きな声をだして叫ぶ人、家の瓦礫を数人で動かし埋まってる人を助け出そうとしてる人々。
多くの人たちが助けを求めていたが救援はまだ到着しない

泣きながらも歩き続けていた少女と女性は1台の車を見つける
イエローの2ドアハッチバック。
泥まみれになり室内にも泥や砂があるその車を見た少女は
「あああ、これママの車だよぉ~」
確かに女性も見覚えがあったイエローの車。
「間違いない?似た車って一杯あるよ」
「ママのぉーー」
泥が積もった室内には誰も乗っていなかったが少女はママの名前を呼び続ける。
その姿を見て女性は泣かずにはいられなかった。
この車を見つけた時点でもはや少女の母親は絶望的だと思えたからである。
もうすぐで陽が落ちるので移動しようと少女にいってみるが
少女はここを動こうとはしない。

真っ赤な夕日が大きく見えた時だった。
夕日の影から人影が見えその影は少しづつ二人と車に歩み寄ってくる。
だんだん近づいてきた人影は片足に包帯を巻き松葉杖をつき
束ねた長い髪とスカート。
「ゆみぃいいいい~~~い」と大きな声で叫ぶ

「まっまぁあああ~~~」と叫ぶと少女は一生懸命走っていった
松葉づえをついた女性も転ぶように少女のもとに走る。
そうこの女性こそ少女の母親
少女が探していたママその人であった。

諦めかけていたのは少女だけではなく母親も娘を失ったと
思っていたので二人の喜びは尋常ではなかったのである。
抱き合う二人に時間は止まっていた。
いつまでも泣きながら喜びあう母と娘にとって今が大事なのだ

隣人である女性は二人の喜び合う姿を見て眼は熱くなるのを覚え眼を押さえた両指の隙間からは熱く清らかな涙が流れては落ちていく。

二人の再会に喜んだ女性であったが
その数日後、自分の夫と娘の遺体が見つかった。



この物語はフィクションです