映画本ベスト part3 | 映画、その支配の虚しい栄光

映画、その支配の虚しい栄光

または、われわれはなぜ映画館にいるのか。

または、雨降りだからミステリーでも読もうかな、と。

または、人にはそれぞれ言い分があるのです…。

次に洋画篇。

流石、ハリウッド。メイキングなどは徹底したものが多々出ていて、どれもこれも面白いが、

 

■トッド・マッカーシー「ハワード・ホークス」

ホークスの伝記。幼少期から監督作一本一本を丁寧に記した大著。ちなみに梅本洋一訳のホークスのインタビュー本は誤訳だらけのクソ本。

 

■ロジャー・コーマン「私はいかにハリウッドで100本の映画をつくり、しかも10セントも損をしなかったか」

コーマンの自伝。意外と堅実なのが楽しい。シェリー・ウィンタースはコーマンについて「大きな映画を作ることには自信がなかった」と語っているが、マキノにしろ、こういう職人さん、いい加減に映画を撮る人の話は超面白いね。

 

そういう意味で、

■トリュフォー「ある映画の物語」

「華氏451」のメイキング。トリュフォーとオスカー・ウェルナーとの確執が面白く、映画製作のいい加減さがよくわかる。「間に合わせの芸術」とトリュフォーは言う。

 

一方で、

■ヒッチコック/トリュフォー「映画術」

■ドナルド・スポトー「ヒッチコック 映画と生涯」

■スティーブン・レベロ「メイキング オブ サイコ」

ヒッチコックの嫌なやつ、セクハラじじい、サイコパスぶりには驚き、一方でその緻密極まりない演出にさらに驚ろかされる。

 

■「メイキング オブ エイリアン」

公開当時、雑誌「バラエティ」にクリス・フォスやロン・ウェブによる宇宙船などのイラストやコンセプトアートが載ったことがある。40年後にそれらに再会できるとは。

そのようなイラスト、図版も豊富に楽しめる上、「エイリアン」の企画から完成、公開までの詳細きわまりないメイキングが実に興味深い。

驚いたのは、アルドリッチが監督する可能性が高かったことと、ウォルター・ヒルの役割の大きさ。オバノンが「ウォルター?一体何をしてたのかね」とクサしていたのを読んだ覚えがあるのだが。

 

■シドニー・ルメット「メイキング・ムービー」

ルメットが書いた演出指南書といった感じ。映画哲学や社会を語るのではなく、極めて具体的に映画製作の実際を語ってくれる。

 

■「ディレクティング・ザ・フィルム」

これも同様。様々な古今東西の映画監督による実際的な言葉集。

 

■ジョン・アーヴィング「マイ・ムービー・ビジネス」

これは珍しい。ラッセ・ハルストレムの傑作「サイダーハウスルール」の映画製作、主に脚本作りを原作者が語る。

アーヴィングはあまり文句をいうこともなく、様々な監督によるシナリオ作業と、ハリウッドビジネスを静かに見つめる。

 

■スティーブン・バック「ファイナル・カット」

通常のメイキングなら悪役になることが多い、スタジオの人間から見た、かの「天国の門」の舞台裏。

巨大ビジネスとしての映画業界が見れるのも面白いが、ユナイテッド・アーティスツを倒産に追いやったチミノの完全主義者ぶり、放蕩三昧ぶりが凄い。

 

■「マスターズ オブ ライト」

撮影監督へのインタビュー集。専門的、技術的な記述が多いが、それでも、というかだからこそ楽しめる。

 

以上、つらつら挙げてみた。

中でベスト3を無理くりあげると

 

■ヒッチコック/トリュフォー「映画術」

■「映画監督 神代辰巳」

■蓮實重彦「監督 小津安二郎」

 

ってことになるが、これじゃ、あまりにも普通すぎて面白くないので、

 

■スティーブン・バック「ファイナル・カット」

■ドナルド・スポトー「ヒッチコック 映画と生涯」

■ロジャー・コーマン「私はいかにハリウッドで100本の映画をつくり、しかも10セントも損をしなかったか」

■「市川雷蔵とその時代」

■高橋洋「映画の魔」

 

でどうでしょう。