M&Aアドバイザーの日記

M&Aアドバイザーの日記

なかなか外部から知ることができないM&Aアドバイザーの仕事をリアルにお伝えします

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ある会社から声がかかりました。


「M&Aを検討中で、ついてはアドバイザーを選定しようとしている。いくら(←報酬等のこと)で受けてくれるか見積もりを出して欲しい。」とのことです。


ビューティーコンテストと呼ばれる手続きです。見積もりを出させてもっとも安いアドバイザーに任せる手続きです。本来的にはアドバイスのクオリティが重要なのですが、事前にアドバイスの質の差別化をクライアントに理解してもらうのは結構大変で、大抵は価格で決められてしまいます。

皆様がアドバイザーならどのように対応しますか?私の対応方針は以下の通りでした。


まず、そのクライアントはグループ全体でさまざまな事業を展開し、規模もそこそこ大きい(売上3000億程度)ので、今回の案件を通じて良いアドバイスをすれば、次のビジネス機会も期待可能と判断しました。


また幸いなことに、そのクライアントとはコミュニケーションを何度も取った経緯があり、担当者とは比較的親しくさせてもらっておりました。


そこで、私は次のように説明しました。

「アドバイスの内容には自信と誇りを持っているので、単純な入札で価格だけでアドバイザーを決められるような手続きには、本来は参加しない。」

「ただ、今回の案件をきっかけとして、貴社グループと今後も長きにわたって良い関係を構築したいので、その主 

旨を共有してくれるのであれば、ぜひ、参加しようと思う。」

「ついては、弊社をアドバイザーに決めるために必要な金額をそちらで決めてほしい。」と言って、金額の箇所を空欄にしたまま見積書を出しました。


結果として、本件を受注することができました。金額については、かなり安い数字を提示してきた業者もあったようですが、中間くらいの水準で、クライアントが決めました。

また、「長期的な関係構築」が目的なので、クライアントのグループ全体の幹部へのあいさつの機会も確保することができました。


まあ、本当に次のビジネス機会があるかは分かりませんが、今回は、このような経緯で受けることに決めました。ちなみに、今回はクライアント企業の担当者とは以前からコミュニケーションの機会があり、上記のようなことができました。

そうでなければ安易な入札には参加しません。長期的に自分の首を絞めるだけなので。

あとはサービスの質には自信があることも背景にはあります。


アドバイザーの世界の競争も激しく、何で付加価値をクライアントに提供するのかを常に考えなければなりません。価格でしか競争できない場合は長期的に生き残れないでしょう。

逆にいえば、安値で受けて、クライアントの言いなりになり、まともなアドバイスができないアドバイザーも結構多いのです。

上場している子会社を完全子会社にして、上場廃止するためのアドバイスをしているのですが、

当該子会社の実態は、こんな状況でした。


・事業計画は親会社の承認を必要とし、当該子会社にとってベストな計画でも、親会社にとってベストでなけれ
 ば、修正をさせられてしまう。

・子会社が子会社にとってのメリットの議論をしても、親会社は聞いてくれない。

・親会社は人事権をチラつかせて親会社の都合を押しつける。

・子会社にとって望ましい施策を考える際も、親会社と兼任の役員が否定的な発言をする。

などなど


この実態の何が問題でしょうか?


親会社が、当該子会社の持ち分を100%を保有していれば、なんら問題はありません。

でもこの子会社は上場しているのです。たくさんの少数株主がいます。

それらの少数株主は親会社のことなんてどうでもいいのです。その子会社の成長や企業価値の向上のために、

取締役はベストを尽くして欲しいのです。それなのに、現状は、上記のとおり、親会社のことしか考えていないのです。そしてこの子会社の取締役は、法律的にはすべての株主のために経営をしなければならないのです。


この実情って、当該子会社の取締役にとっては非常にリスクが高い状況です。

株主の利益を損ねる経営をした(逆にいえば、特定の株主の利益のために経営をした)、と主張して、少数株主が取締役を訴えたら、場合によっては敗訴してしまいます。

なぜなら、取締役は特定の株主である親会社のために経営をするのではなく、少数株主を含む全株主の利益のために経営をしなければならないからです。


あまりに生々しい問題なので、これ以上立ち入ったことは説明できませんが、実は、日本の上場子会社って山ほど存在するのです。それら子会社が本当にこのようなリスクを理解して経営しているとは思えません。

理解していれば、そのような組織形態(=上場子会社)は存在するとは思えないからです。


この問題は、おそらく今後さらに深刻化し、訴訟も増加していくことと思います。


ちなみに、現在、日産自動車の上場子会社の日産車体の取締役が少数株主から訴えられております。

日産車体が余剰の現金を低利で親会社の日産自動車に貸しているのですが、外部に貸し付けていれば、もっと高い金利収入が得られるのに、あえて低利で親会社に貸しているからです。

日産車体の少数株主にとっては、日産車体の取締役には、日産車体の利益の最大化を考えてほしいというのは当然の発想でしょう。







フィナンシャルアドバイザー(FA)の付加価値って何でしょう?

これはFAがクライアントに提供する価値であるし、その裏返しとしてFAとクライアントの間での報酬に関する交渉でもあります。(提供する付加価値=報酬の源泉です。)


FAの提供する価値とは、企業価値が算定できる、合併とか会社分割とか株式交換の法的手続きを助言できる、スケジュール管理ができる、もしくは会社の売買に関する(極秘?)情報を提供できる、とか、いろいろあるでしょうが、何なんでしょうね。


昨今では毎日のようにM&Aがあり、クライアントも大抵はM&Aを経験してます。つまり、企業価値の算定とか踏むべき法的手続きを十分に理解しております。また、クライアントの属する業界内で、どの企業が苦しんでいて、売却対象になっているかもよくご存じです。


つまり、FAが価値を提供することが難しくなりつつあるのです。

大きなディールのFAをメガバンク系証券がやったとか外資系投資銀行がやったとか、派手な記事はあろうかと思いますが、どのような付加価値を提供できていたかは分かりません。そして付加価値の対価としての報酬も。


法的な問題は弁護士に聞けば良いし、会計や税務の問題は監査法人や税理士事務所が専門です。対象会社の企業価値評価は山ほど実務書が出版されており、クライアント企業のCFOは大抵自分で対象企業の企業価値評価をすることができます。


そんな中でのFAの提供する価値ですが、個人的には、そのディールを実行することが当該クライアントに与える影響(特に財務的な影響、株主からの評価に与える影響や銀行等の債権者からの評価に与える影響、取締役が負うことになる巨額な訴訟リスク等)を検証することだろうと思います。対象企業の価値が100億か150億かはクライアント自身でも算出可能でしょう。でもそのディールを実施することがクライアントにとってどのような意味を持つのかは、当事者自身であるクライアントはなかなか客観的には分かりません。

さらに突っ込んで、●●のストラクチャーにすれば、良い影響をもっと高められるとか、ネガティブな影響を最小化できるとか助言できると付加価値は増すでしょう。


そのディールを実施することで、銀行のクライアントに対する目線が急に厳しくなってしまうかもしれません。また株価が急落してしまうかもしれません。取締役個人が何100億という巨額な訴訟リスクを負ってしまうかもしれま

逆に株価の上昇や格付けの向上が期待できるかもしれません。

さらにストラクチャーの工夫によって、追加的にリスク回避や株価上昇が可能かもしれません。


当該ディールが、クライアントにとってどのような意味があり、どのような影響を与えるかを定量的に分析することや影響の更なる改善を提案することがFAの提供できる価値だと思います。


このような助言ができれば、例えば、私の助言に基づいてディールを行うことで業績や株の上昇が●●億円期待できるので、その半分の●●億円を報酬として払ってくださいと主張ができるのです。


まともなFAは、自らがクライアントに提供する価値ってどこにあるんだろうって日々悩んでいるのです。

少し昔のですが、「投資のプロ」を自認するある企業との案件のエピソードです。


我々は買い手のアドバイザーでした。売り手は「投資のプロ」を自認する会社で、売却対象は当該「投資のプロ」の投資対象の会社です。売り手は「投資のプロ」なので、アドバイザーは起用しておりませんでした。


両社間の協議を経て、何とか基本的な条件について、初期的な(=デューデリジェンス前の)法的拘束力のない合意を取り交わすことができました。


その上で、我々が買い手との間でデューデリジェンスの方針や準備を進めていた時のことです。「投資のプロ」の会社が、至急ミーティングを持ちたいという連絡をしてきました。


何のことかと不安を覚えつつ、ミーティングに臨みました。我々が「投資のプロ」から受けた相談は下記の通りです。


当該投資対象会社の全社員に売却の交渉していることを伝えた。ただし相手がどこかは伝えていない。

その伝えた結果として、従業員が動揺し、交渉相手がどこか、雇用は維持されるのか、会社組織は残るのか、などの質問が連日マネジメントに寄せられている。また、不安を感じた優秀な幹部社員の一部が転職活動をしている。それらの結果として通常のビジネスに支障をきたしている、等々。


そして買い手である我々に対して、社名を残す、雇用を維持する、会社組織を残す(=吸収合併ではない)等のことを認めて欲しいと泣きを入れてきたのです。それらを認めてくれれば、従業員の動揺が治まり、通常の業務を継続できるということを訴えてきました。


売却対象・投資対象の会社や事業の価値を「高める」とか「維持する」ことは、売り手側の取締役の当然の責務です。また社名を残すとか、雇用を維持するとかいうことは、売却対象会社や事業の価値に直接的に影響します。

例えば、売却対象会社の雇用が過剰なのに維持することを条件とするならば、当然に収益性が低下するので、売却対象会社の評価は下がります。


売り手サイドの取締役が、売却対象企業もしくは事業の価値が下がるようなことをするとか、また問題に直面した際に、交渉相手である買い手側に泣きを入れることは、きわめて基礎的な誤りであって「投資のプロ」とは思えません。


ちなみに、我々が売り手のアドバイザーであれば、案件の途中に中途半端な情報(=「売却するけど相手は未定」)を売却対象会社の全従業員に公表するような愚の骨頂みたいなことは絶対にさせません。

なぜならば、従業員の動揺を招き、対象会社の価値が劇的に低下しかねないならです。

当然ですが、そんなことをして株主の利益を損ねるのであれば、善管注意義務違反で株主から訴えられる可能性も生じかねません。


「投資のプロ」であっても、このようなきわめて初期的、常識的な稚拙なミスでディールを失ってしまうケースはけっこう多いのです。冷静に考えれば、専門的な議論はなく、「常識」で判断すれば足りる話でもあるにも関わらず。

M&Aの営業って仕事の繁忙がとても激しいものです。


もちろん優秀なカバレッジ(営業)の方は、常に案件を抱えていることでしょう。

私のような凡人は、そんなうまい具合に隙間なく継続して取り組む案件がありません。

(とはいえ上半期で4件を仕上げてそこそこ忙しかったのですが)


この一ヶ月はブログの更新がおろそかになってしまいましたが、ディールの端境期でネタが乏しかったことが大きな理由です。


もう一つの理由は、やる気がなくなってしまってたという点です。M&Aって終盤になると常に神経が高ぶった状態になりがちです。最終局面では、日々というか、時間単位で局面が変わったりするものです。ですので、それに対応していくと神経がとても疲れてしまいます。最後まで決して油断できないのです。


その代わり、無事成約すると、しばらくやる気が出なくなってしまうことがしばしばあります。月並みですが、燃え尽きてしまうっていう感覚です。


優秀なカバレッジは、気持ちの入れ替えとかモチベーションの維持が上手なのでしょう。


今は11月上旬なので、前回の案件が終了してからちょうど一ヶ月間も、仕事とブログをさぼってしまいましたが、いずれも少しずつ再開して行こうと思います。

セルサイドのアドバイザーとして、入札プロセスを仕切る案件がありました。

その案件では、めでたく、とある企業一社と案件が成立しました。


セルサイドとして入札を仕切るのは、けっこう慎重になります。なぜならば、買い手候補企業の間で条件を競わせるからです。買い手候補企業にとっては競わされて条件を吊り上げられるのはたまったものではありません。


このブログでも書いたかもしれませんが、アドバイザーの仕事は一回だけの「焼畑」ビジネスではありません。繰り返しゲームなのです。つまり、今回は買い手候補の一社として競わせた会社であったとしても、将来は、その会社のアドバイザーになるかもしれませんし、アドバイザーになるべく営業を行うことは当然です。


そこで問われるのはアドバイザーの品格です。

将来のクライアントになるかもしれないから、セルサイドのアドバイザーにも関わらず、特定の買い手候補企業に手心を加えるのは厳禁です。これは品格を疑われます。そうではなく、セルサイドとしての立場を十分理解してもらった上で、セルサイドの利益を最大化すべく徹底的に主張、交渉することが重要なのです。


逆説的ですが、そのような王道を行く品のある振る舞いをすることで、目の前の案件では立場の違いから利害が対立しているものの、相手企業から信頼に足りる、頼りになるという評価を受けて当該相手方企業による将来のアドバイザー起用の可能性が高まるのです。


冒頭の案件が無事終了したために、落選した買い手候補企業複数社にあいさつに行ってきました。

すべての落選企業のトップが共通におっしゃったことは、「落選したのは残念であるが、最終的に公表された合意内容は非常に良い内容である。決まった買い手企業の内容や質、その企業とのシナジー、価格条件について申し分ない。」ということです。重ねて「(我々セルサイドのアドバイザーに対して)今後は自分達とのおつきあいもお願いします。」とおっしゃって下さいました。


社交辞令もあるでしょうが、大変うれしい言葉でした。

M&Aは、当然、実行することによって企業価値が高まることを目的にします。

また、短期的な価値向上だけでなく、長期的な視点も重要なことはいうまでもありません。


M&Aを実行することで企業価値が高まるかどうかについての検証は、事前に行います。戦略に合っているか、売却・買収した場合の他事業への影響、シナジーの有無や程度、それから何よりも、価格の妥当性について。


価格の妥当性についての分析は、いわゆるバリュエーションは当然のこと、希薄化分析も行います。希薄化分析は、買収することで一株利益が増えるのかどうかの検証です。バリュエーション上は適正な価格でも、のれんの償却負担の程度や、(現金ではなく)株による買収であれば、一株利益が棄損してしまうことは起こりえます。

一株利益が棄損してしまう場合、株価が下がってしまう蓋然性は高くなります。したがって希薄化分析はM&Aによる株式市場への影響の分析とも言えます。


ところで、このM&A戦略の実施が株式市場からの評価に与える影響についての分析をアドバイスをするアドバイザーはどのくらいいるものでしょうか?個人的な感覚では、それほど多くないという印象です。外資系の投資銀行などは当然にきちんとやっていますが、メガバンク系のアドバイザーであってもそんなにやってなさそうです。もちろん案件の規模にもよりますが。

なぜやらないのかといえば、成約の確率が下がるからです。特に買い手アドバイザーの場合、多少高くても、また株価が下がってしまう可能性があっても、クライアントには買ってもらいたいというインセンティブが生じます。なぜなら成功報酬だから。


クライアントと長期的な関係を構築したい場合、アドバイザーは短期的な利益に走ることなく、長期的な観点でアドバイスに臨むべきです。ですから、買い手アドバイザーになったときには、「○○以上の金額では一株利益が棄損し、株価が下がってしまうので、検討をやめるべきだ」と言う勇気が必要です。


買い手アドバイザーになったら成功報酬でフィーを貰わないというやり方もあります。マイルストーンで節目ごとにフィーをもらうとか、月ごとに定額でフィーを貰うとか。

ちなみに私は、M&A成約後(=公表後)の時価総額の増加分の一定割合を報酬としてもらうというフィー体系をクライアントに提示することもあります。


先日成約した案件は、幸い、買い手企業も売り手企業も公表後の株価が上昇しました。とてもうれしいです。

アドバイザーは企業価値を高めるためにアドバイスをするわけで、案件成約後の株価の動きは、アドバイスに対する成績表なのです。

とある老舗企業から相談を受けました。


当該企業は多くの事業部門を抱えており、事業部門ごとに収益性や資産効率が大きく異なります。

当然のこと、企業価値を棄損している事業や逆に価値を創出している事業もあります。


今回受けた相談というのは、ひとつの事業部門の将来の方向性について外部の視点でアドバイスして欲しいという内容でした。


そして先日、秘密保持契約書を取り交わし、当該事業部門の資料の開示を受けました。ところが…

「開けてびっくり玉手箱」ではないのですが、相当に傷んだ事業部門(=ようするに大赤字)でした。リーマンショック以降の経済環境の悪化はあるにせよ、収益の悪化がかなりひどいです。また本業とは関係のないノンコア事業です。

だからこそ、当該事業部門に対する危機意識が強く、我々に相談をしてくれたのでしょう。それ自体は大変ありがたいことです。


さて、皆様がアドバイザーならば、ここでどのようなアドバイスをしますか?

1)譲り受けてくれる会社を「気合い」で探してきます!と主張し、とりあえず当該事業部門のM&Aに関するマン 

 デートをもらう。

2)譲り受けてくれる会社はあるわけない!とあきれ果てて、早々にこれ以上のアドバイスをお断りする。

この2つの選択肢は分かりやすいでしょう。他には、どのような対応が考えられるものでしょうか?例えば、

3)まずは責任を持って社内でリストラクチャリングを行い、コスト構造を変えましょう。そこまでやってくれれば譲

 り受け企業も出てくる可能性が高まります。そこまでやってくれるのであれば我々も責任持って候補企業を探し

 ます。 

またこんな意見もありました。

4)こんな事業を抱えていることが大きな疑問。「当該事業部門」の将来のあるべき方向性の検討は一度中断し、「全社」のあるべき戦略や方向性についての議論や検討を早急に行うべきだ!とアドバイスすべき。


忘れてはならない視点としては、クライアントとの関係は一度切りのつきあいではないということです。何度も相談をしてもらえる関係を構築することが非常に重要なのです。一回切りの関係は、ある意味「焼畑農業」です。焼畑農業ではいつか収益獲得の限界に直面してしまいます。レピュテーションの悪化も避けられません。


皆様ならどのようなアドバイスをしますか?

我々の行ったアドバイス内容やその結果については、後日、ご報告させて頂きます。

先日、ある案件が成立しました。


この瞬間は、何度経験しても慣れてしまうことなく、感慨深いものがあります。

記者会見も行いました。


記者会見は自らがアドバイスしたディールの「ハレの舞台」です。

何を聞かれても、誰に対しても後ろめたさを感じる必要のないディールプロセスをアドバイスし、

また十分な評価であったため、何も心配はしておりませんでした。

ただ日経新聞とか、経済系の雑誌の記者はさすがに鋭く、株主目線での質疑がありました。

株価が高すぎないか/低すぎないかといった観点や、どのような経緯で本日に至ったのか、など。


記者会見の終了後には、両トップおよび幹部から本件についての感謝をされ、感激しました。



落ちとしては、成功報酬が少ないことです…

当初のアドバイザー契約の交渉で譲歩しすぎちゃったのです。

フィナンシャルアドバイザーとして、クライアントの株価算定を行うことがしばしばあります。


アドバイザーが行う算定作業の視点は、クライアントの取締役が、株主価値の観点から、買収価格が妥当かどうかの判断を行うための材料を提供することです。

算定書とかフェアネスオピニオンとか、専門的な議論はありますが、原則はクライアントの株主を向いて算定を行うということです。


したがって、クライアントの株主の視点と取締役の視点が必ずしも合わないことが起こりえます。

例えば、取締役がどうしてもある会社や事業が欲しくて、株主価値を棄損してしまうような条件で買収を行ってしまうということです。

その場合、当該取締役に対して買収の判断材料としての算定書を出したアドバイザーの責任も追及されるリスクが生じてしまいます。株主の立場に立ったら当然の話です。高値掴みをしてしまうような条件でも合理的だという算定書を作成したアドバイザーに賠償請求したくなるでしょう。

(ただし日本では、アドバイザーの責任が問われた事例はまだないはずです。)


アドバイザーはクライアントの取締役から依頼を受けている訳で、取締役が株主に負っている責任・リスクに関する理解に乏しい取締役からは、結構無茶な要望が出された時は苦労します。特定の金額ありきで算定してくれ、というオーダーです。この場合、案件担当者のモラルで取締役の言いなりにならないことも必要ですが、それだけでは限界があります。


そこで、まっとうなM&Aのアドバイザリーサービスを提供している組織であれば、通常、審議会とかコミッティとかいう組織があって、クライアントへの算定書の提出の際は、そこで議論がされます。


つい先日も、その審議会で議論したのですが、けっこうきつい突っ込みが来ます。ちなみにメンバーは、当該案件に関係ないトップマネジメント、コンプライアンス担当の責任者、当該案件に関係ないシニアのM&Aプレーヤー複数名です。


彼らに取り囲まれて、案件の経緯、アドバイスの内容、算定方法の詳細(割引率、ターミナルバリュー、類似会社、クライアントの事業計画等の設定や選定に仕方等)について延々と聞き込みや質問をされ、少しでも回答に合理性がないと、審議は通りません。つまり、クライアントに算定書は提出できません。

このプロセスは、担当者としてはきついですが、クライアントに対するアドバイスに規律が働きます。


クライアントの企業価値を維持・向上させるために、このような制度もあるのです。