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M&Aアドバイザーの日記

なかなか外部から知ることができないM&Aアドバイザーの仕事をリアルにお伝えします

先日、ある案件の契約交渉がまとまりました。

感想として、クライアントの利益に直結する重要事項はすべて守り、精神条項のような譲歩しても影響がないものに関して若干の譲歩を行った、という印象を持っております。

要するに「買った」という感想です。


率直に言って今回の最終交渉は、事前の準備と当日の演出で差がついたと思っております。

我々は事前に契約書案を綿密かつ慎重に吟味し、弁護士事務所からのアドバイスも積極的に求めておりました。各条文について譲歩可能なものと絶対に譲ってはいけないものを検討し、譲歩する場合についても、その幅(=その幅の中で交渉できる)を持って交渉にあたりました。

当日は、弁護士にも同席させ、最終決定権者だけでなく、その他の会社幹部も多く同席させませした。

最終決定権者である社長と他の取締役数名、我々アドバイザーが3名、リーガルアドバイザーの弁護士2名の計10名弱程度が、当方の布陣です。


逆に相手方の出席者メンバーは貧弱で、事務局2名、取締役1名、フィナンシャルアドバイザー2名の計5名。時間の調整がつかないとのことで、弁護士は同席しませんでした。

また事前の準備不足も明らかでした。出席メンバーの間で契約書の解釈が統一できておらず、その場で、メンバー間で解釈をめぐっての議論になりました。またチームリーダーである取締役は、事務局を中心にこれまで繰り返してきた交渉の経緯や争点を十分に理解しておらず、ちぐはぐな発言が目立ちました。


役職も年齢も、また出席者数も多いこちらの社長や取締役に詰め寄られると、相手方の事務局では精神的・感情的に押し返せません。またフィナンシャルアドバイザー(中堅の証券会社)も、担当者がM&Aに慣れていないのか、ほとんど発言しませんでした。


こんな展開になれば、結果は推して知るべしです。


アピールしたいのは、このような結果になったのは決して偶然ではないということです。

最終決定の交渉に臨む上で、優位な決着を図るための仕切りを入念に行いました。

リーガルアドバイザーには契約書の十分な検証をお願いしました。クライアントとの間では、社長含む取締役と契約書の読み合わせを何度も行い、一言一句まで精査しました。

また念のため、本件のアドバイザーではないものの個人的に親しい弁護士にも条文の解釈・リスク・凡例等について相談しておきました。

当日の出席者数をより多くすることや、有利な場所(=我々のクライアントのオフィス)での調整も意識的に行いました。


ごくごく当たり前のことですが、交渉と言うのは事前に準備がもっとも重要ということを改めて感じました。

ただ、クライアントの利益を守るためにこの程度のことを行うのは当たり前のことであり、むしろ相手方アドバイザーは何をしていたんだろう、というのも正直な気持ちです…。



仕事柄、弁護士先生とご一緒に仕事に取り組むことがよくあります。

M&A取引は非常に複雑で、多くの法律の影響を受けます。「餅は餅屋」であり、法的側面についてのアドバイスは弁護士に求めることが普通ですし、クライアントのためになります。


例えば現在進行中の案件は、会社法は当然のこととして、公開企業なので金融証券取引法に、

製品の特許やブランドが競争力の源泉なので知的財産にかかる法律に、一部製品のシェアが高いので

独占禁止法に、といったように多くの法律に関係してきます。


このような案件においてクライアントの利益を守るもしくは高めるために、どのような契約を締結したら良いのか、どのような行為を行ってはならないのか、などはとても私のチームだけでは対応できません。


弁護士事務所は合併で巨大化し、大手事務所は、このような複雑な案件に対してもワンストップでソリューションが提供可能な体制になっています。また、先生方は寝る間も惜しまずよく働いてくれますし(もちろん、それなりの対価を払っていますが)、個々の事案に対する判断材料を迅速に提供して下さいます。したがって、M&A案件を推進する上で、リーガルアドバイザーである弁護士は大変心強い「用心棒」なのです。



しかしながら…


大手事務所に任せれば安心ということはありません。突き詰めると、各先生個人の力量が問われます。そして経験上、「使える」先生はそれほど多くありません。頼りにならない先生はたくさんいます。


例えば。

現在進行中の案件は契約締結の直前です。数週間ほど前に当方のリーガルアドバイザーである弁護士に契約書のドラフトを作成してもらい、クライアントの確認・了解を得た上で、相手先に提示しました。相手先も確認・修正を行い、当方に再提示をしている状況です。ようやく合意にこぎつけることができそうになってきた状況です。


ところが、昨日の夜に当方の弁護士事務所から契約書を修正すべきだというアドバイスが来ました。それも我々のクライアントが最も気にしている条文であり、当初に当方が提示した原案を相手方もそのまま受け入れた条文なのです。このままでは法律に抵触する可能性があると伝えてきたのです。


その条文は、本件に関する交渉の紆余曲折を経て、私のクライアントがやむなく断腸の思いで受け入れた条件を文章化したものなのです。それを最終の今の局面になって、「有効性がなく更なる譲歩が必要だ」と言うのです。


法律を侵すわけにはいきませんから、弁護士からの指摘には対応しなければなりません。ただし、そんなに影響の大きい条文であるならば、当初のドラフト作成の時点で何で指摘しなかったのか、という思いが生じます。契約締結直前になって決裂の原因となるような要素を生じさせるのはプロフェッショナルとは言えません。



「使えない」弁護士と言うのは、こちらの指示があるまでは何もせず、また指示されたことだけに対応し、事務所内の調整が拙い印象で、かつ、はじめから「落とし所」をアドバイスする傾向があります。

また、自分の意見が言えないことが多いです。「それはクライアントが判断することなので、私は言う立場ではありません。」ということはしばしばあります。



逆に「使える」弁護士は、常に先回りして案件推進上の留意事項を指摘してくれます。単に指摘するだけでなく対応策も提供してくれます。クライアントが選択可能な選択肢を整理して提示し、選択肢別にメリット、デメリット、留意事項を説明してくれます。

また、単に結論を述べるだけでなく、なぜそのようなリーガルアドバイスに至ったかについて、法律、判例、具体的な実務ケース等の材料を豊富に提供した上で、説明してくれます。

クライアントを守るために、最も望ましい条件から、ここまで譲歩しても良いのでは、ここだけは絶対譲らないよう頑張りましょう、という幅をもったアドバイスをしてくれます。

さらにクライアントが判断に悩む局面で、「こうすべきだと思う」と自らの考えを言ってくれます。




当り前のことですが、弁護士先生も玉石混交で、ピンからキリまで色々な人がいるのです。


ある日本を代表する大企業から相談を受けました。

その内容というのは、本業と関連性が薄い子会社の今後についてどうすべきかということでした。

そして先日、その相談内容を踏まえて私のチームで提案をまとめ、その大企業に対して子会社をどうすべきかプレゼンをして来ました。



ところで、その提案内容についてどうあるべきか社内で激しい議論になりました。


選択肢1

その子会社の事業は本業と関連が薄いんだから売却したら良い。その子会社が展開する事業を本業としている会社に譲渡すれば良い。まずは、親会社にその子会社を売却する決断を迫るべき。


選択肢2

売却とか買収とかM&Aを前提にせず、まずは当該子会社の内容や現状について、クライアントと共有すべき。その上で、当該子会社の将来について考えられる選択肢(引き続き子会社として展開していく/その子会社の同業企業を買収していく/その子会社を売却する/清算する等)を整理して複数提示し、選択肢ごとにメリット/デメリット/留意事項等を説明してクライアントが希望する選択肢の実現をアドバイスすべき。



M&Aのアドバイス業務に携わっているアドバイザー等は、ほとんどが選択肢1を提示しているのが現状です。

「M&Aありき」という営業活動です。


ただ、クライアントの立場で考えると、果たして選択肢1で良いのでしょうか?大企業ほど意志決定に多く人が関わり、社内できちんと説明できないと最終的な意思決定ができません。始めから「M&Aありき」では、社内が通りません。なぜM&Aをするかの理論武装が大切なのです。現状を踏まえて実行可能な選択肢を提示し、その上でM&Aが最適な解になっていればM&Aを行えばよいのです。逆にM&Aという手法が当該企業のおかれた環境において最適な選択肢でなければ、M&Aを実行する意味はありません。


ただし、アドバイザーの立場では、M&Aを検討してくれないとビジネスにはなりません…。



今回の提案に対する私の主張は選択肢2です。社内協議の結果、我々の会社としては選択肢2に基づいてプレゼンをすることになりました。

クライアントは我々の提案に対して「期待していた以上に満足度が高い内容であった」と感謝して下さった上で、

提案内容そのものはいったん「お預かり」となりました。



はたしてクライアントからはどのような反応が出るものでしょうか?結果については、後日、このブログでご報告を

しようと思います。

アドバイザーは、自分のクライアントや対峙する相手企業の意思決定プロセスを把握することが大切です。


この意思決定プロセスは、会社によって異なるのでなかなか一般化ができませんが、一つの見方としてはオーナー企業と組織化された企業という分け方があります。


オーナー企業は、オーナーの鶴の一声で物事が決まります。逆に言うと、これまで決まっていたはずのことが、

オーナーの気持ちの変化によって真逆のベクトルに向かって進んでいくことが多々あります。したがいまして、オーナー企業とのM&A案件は、オーナーの感情面のケアが非常に重要になってきます。


今日の議論からそれますが、公開企業がオーナーの感情で物事を決めることのリスクが、昨今、非常に高まっております。つまり、公開企業には少数株主が存在するのですが、会社法によって明確に株主は平等であると定められているのです。それにもかかわらず、特定のオーナーの気持ちで会社が意志決定した結果としてオーナー以外の少数株主が損失をこうむった場合は、その決定をした会社の取締役が訴えられてしまう可能性あるのです。


典型的な事例がレックスホールディングス(牛角を展開するグループ企業)のMBOです。少数株主が、TOB価格が不当だと訴えております。(本論から外れるので詳細説明は省きます。)



オーナー企業とは逆の意思決定プロセスは、組織化された企業です。典型例が総合商社です。総合商社と一口に言っても、意思決定のプロセスは各社各様です。決裁権が分権化された商社もあれば、中央集権の商社もあります。

ただし昨今は金融危機の影響を受けて、総じてリスク管理意識が高まり、集権化された傾向が強いのではないでしょうか。


例えば、とある総合商社の一定規模以上の投資案件の意思決定は、取締役会と経営会議の決裁が必要です。さらに、それらの決裁を諮る前段階で、財務、法務への稟議が必要です。

しかも取締役会や経営会議は原則、月に一度です。M&Aの交渉は最後まで何が起こるか分からず、常に流動的です。それにもかかわらず、意思決定機関が月に一度しか開かれないというのは大変硬直的です。何らかの事情で一日スケジュールが遅れてしまったら、案件の進捗は1か月も遅れてしまうのです。

(もちろん総合商社の最重要案件等においては臨時取締役会も開くのでしょうが。)


ちなみに優秀な商社マンは、実は、社内の意思決定プロセスを通過させることの根回しがとても上手なのです。



アドバイザー泣かせの案件は、総合商社とオーナー企業のディールです。

組織が違いすぎて話がかみ合わないのです。

例えば…


なぜ、こちらはミーティングに社長が出てるのに、相手の商社は社長が出てこないのか?

なぜ、当方は数日で最終の結論を出しているのに、向こう(=総合商社)の回答は1か月も遅れるのか?やる気がないのではないか?

なぜ、こちらは契約書に社長が押印しているのに相手の総合商社は契約書の押印者が本部長なのか?

(総合商社の本部長はかなり偉くて、会社を代表して対外的に押印可能な決裁権を有しているのです。)


などと、オーナー企業のオーナー社長から言われてしまうのです。

「申し訳ありませんが、総合商社の組織はそういうものなので」と、言うしかないのですが、オーナーのフラストレーションは高まる一方です。


このように、意志決定プロセスが異なる会社間のM&Aについてはアドバイザーの腕の見せ所です。組織形態の違いが意思決定に与える影響について、案件の入口から十分にクライアントに説明し、期待値や感情のコントロールを早い段階で周知徹底しておくことが大切なのです。

クライアントが事前に十分、相手企業の意思決定プロセスを理解していれば、回答が遅くて「どういことだ!」と感情的にならずに、冷静に相手企業の意思決定にかかる手続きや時間を受け止めることができるものなのです。



明日は、総合商社へ訪問予定です。心してかかろうと思います。

すべてのM&Aは波乱万丈で、ドタバタ劇となります。

特に不思議なのが、案件の成約間近の局面です。

なぜか、スケジュール上、余裕を持って成約にいたることがありません。

必ず、契約締結の数日前は連日徹夜でドタバタ状態になります。


先日の案件では、とある日の13:00に調印予定にも関わらず、当日の11:00に契約書の根本的な条文の

修正意向を示す交渉相手企業がおりました。


当方のクライアントは売上5000億超の大企業であり、契約書の根本部分の修正なんて、組織上、迅速・柔軟に

対応できる訳がありません。


一方の相手方企業はオーナー企業であり、オーナーの気持ちがちょっと変わっただけで、このような無茶な

要求をしてくるのです。


この件は、幸い、両社が何とか成約したいという思いがありましたので、少々強引ではありましたが、最後は我々アドバイザーの力技で何とかねじ込むことができました。


「力技でねじ込む」というのは、手前味噌ですが、両社からの信頼関係を構築しているから実行可能なのです。

もちろん株主利益を損ねない範囲であり、電話で「社長を出せ」とか言って、事務局を飛ばして意思決定権者に対して直接に意思確認をするなどのやり方です。


私個人だけかもしれませんが(さらに言い換えると、単に私個人の調整力が乏しいだけなのかもしれませんが)、調印予定日当日に契約書を修正してくれ、と言われることは多々あります。


ちなみに、アドバイザーの最悪な対応は、急な要望を示された時にパニックになってしまい、安易に「では調印日を遅らせましょう。」と言うことです。調印日を遅らせると案件の成約確率は確実に下がってしまいます。

どんな時でも冷静に、予定通りに仕上げることが重要なのです。



最近は麻痺してしまったのか、順調に進捗する案件には不安を覚えてしまいます。


すべてのM&Aは波乱万丈なのです。



週明け月曜日はトップミーティングです。


トップミーティングとは、M&Aの当事者事企業の両社長が出席する大事なミーティングのことです。

トップミーティングの前は、アドバイザーも精神的にもナーバスになります。


ミーティングに先立って、単に日時と場所を調整すれば良いというものではありません。

互いの売上や利益、マーケットシェア、従業員数、時価総額等のデータは「当然に」、事前にブリーフィングを行います。

ただし、これらのデータの説明は当たり前ですし、簡単です。


何よりも気を使うのは両トップの「気持ち」です。これを見誤ったり事前共有できないと、ほぼ案件はその時点で終了です。


トップがどのような思い出ミーティングに臨むのか、当該M&Aに前向きなのか、否定的なのか、フラットなのか。相手方のトップの思いはどうなのか。トップが考えている案件の主要な争点は、案件に対するスケジュール感は、・・・といった案件に関することから、トップの年齢、略歴、職歴、性格、趣味といったプライベートに関ることまで、できる限り事前に情報収集し、相手方と共有します。


これらを踏まえて、ミーティングのシナリオを考えます。もちろん、当事者の発言を強制するわけには行きませんから、シナリオといっても私がゼロから創造するのではなく、両社のニーズに合わせて予めストーリーを練っておくのです。


その際の私の問題意識は、トップミーティングの最中に「サプライズ」が無いように努めることです。

トップが「聞いてない」というような局面にはしないのです。


トップもそれなりの決意と目的意識でミーティングに臨むわけですし、かなりの事前準備をしてくるケースがほとんどです。

ですから想定外の「サプライズ」があると、「どうなってんるんだ?」ということになり、案件が終了になってしまうのです…。


ただし、予定調和に終わらせるわけでは決してありません。衝突している論点があれば、それを顕在化させることでトップにきちんとその争点を認識させることも多々あります。

(また、たまにですが、計算の上であえて「サプライズ」を演出することもあります。)


幸い、私は大きな「サプライズ」をトップミーティングでさせてしまったことはないと思っております。(もっとも、クライアントの皆様がどう思っているのかはわかりませんが…。)



同僚がやってしまったありえない失敗の紹介です。


トップミーティングにおいて、アドバイザーから案件の概要(買い手当事者、売り手当事者、スキーム、比率、価格感、おおまかなスケジュール等)を説明したあとの、一方の当事者である社長からの発言なんですが・・・


「私は売り手なのですか?」


M&Aには必ず、買い手と売り手が存在します。各当事者が、自分はどちらの立場かを認識するところから案件は始まるわけで、トップミーティングの際に、自分がどちらであるかを認識してないことなんてありえません。

アドバイザーであれば、各社がどのような立場であるのか、事前に認識を共有しておくことは当たり前のことです。

買い手を買い手として認識させず、また売り手を売り手として認識させないアドバイザーは、アドバイザーとして失格です。


このミーティングは数分で打ち切りとなり、案件も当然に破談になったようです。またそのアドバイザーは、両方の会社に出入り禁止になってようです。当然ですよね。



明日の私がアレンジしたトップミーティングがどうなったかは、改めてご報告しますね。






ある公開企業から相談を受けました。

率直に言って、非常に難しい局面での取締役の判断が問われる相談です。


その企業は、現在、リーマンショック以降の需要の落ち込みに対応すべく、コンサルティング会社を受け入れ、コスト削減やビジネスモデルの再構築をしている真っ最中でした。半導体関連の業界に属しており、需要の変動が非常に大きいのが業界特性です。重要の落ち込みで売上が激減し、会計上の利益およびキャッシュフローが大幅に低下していました。また、この先の数年間は、「合理的に」売上や利益の回復は見込めません。


またその企業は、当該コンサルティング会社から資本増強のために投資ファンドを紹介され、そのファンドとの初期的なディスカッションの後にデューデリジェンスを受け入れ、近く最終的な条件提示が出されるとのこと。


さて相談というのは、デューデリジェンスを受け入れているものの投資ファンドはどうしても好きになれず、同じ物づくり企業である事業会社からの資本を調達したい、とのことでした。メインバンクや多くの取締役も同様の考え方で、ファンドの傘下に入りたくないとの意見が大半を占めている状況のようです。

ついては、今後パートナーになり得る事業会社を探して来て欲しいというのが相談の結論でした。


その投資ファンドからの正式な条件提示はまだですが、もし近く提示されたとしても、「ファンドが嫌だから」という理由で、その提示を退けても良いものでしょうか?



上記の現状を踏まえたアドバイスを我々アドバイザーは近日中に行う予定です。その骨子は、原則、投資ファンドの出資を受け入れるべきだという内容になりそうです。


逆に、そのファンドからの条件提示を拒否するためには、最低限以下の点が確保されなければならないと言うつもりです。

・これから1年以内に資金繰りがショートすることは絶対にない。

・もし仮に資金がタイトになってもメインバンクが必ず協力する。またその旨のレターをメインバンクから取得す

 る。

・会計上も黒字を計上し、純資産が今以上に棄損しない。すなわち、債務超過の確実な回避や継続企業としての

 疑念を監査法人から提起されないこと。


上記の我々のアドバイスは、この企業の取締役にとっては相当に耳障りなはずです。なぜなら、事業会社のパートナーが欲しいという要望を受け入れていないからです。


ただ、取締役が株主から訴えられないためには、我々のアドバイスが望ましいという信念を持っております。我々のアドバイスが取締役の責任にかなっていると思っております。


なぜなら、現在のように売上や利益、キャッシュフローが激減している状況では、いつ債務超過に陥るか分かりません。また資金繰りがショートしたら一瞬にして倒産です。今の経済環境では景気の先行きは不透明であり、需要(=売上)がさらに悪化する可能性も否定できません。

このような事態に陥ったら、倒産や上場廃止等になり、株式価値はゼロになってしまいます。要するに株券が紙くずになってしまうのです。


今回の投資ファンドからの条件提示を拒否しておきながら、今後1年以内に会社が倒産して株券が紙くずになってしまったら株主はどう思うでしょうか?そんな状況に陥るのであれば、このタイミングで投資ファンドの出資を受け入れておくべきであったと必ず言うはずです。その際に、「ファンドは嫌いだから拒否した」という言い訳しかできないのであれば確実にアウトです。取締役としての経営判断の誤りを指摘されるでしょう。つまり現取締役が賠償責任を負わされることになります。


この会社は我々のアドバイスを受け入れてくれるでしょうか?それとも感情的な理由でファンドを拒否し、事業パートナーを探す動きをするのでしょうか?


機会があったら、この話の顛末も紹介しようと思います。


株価算定の現場の話です。


取締役は、M&Aの際の株価算定において慎重でなければなりません。

なぜかといえば、株主への責任を果たすためです。株主の立場から考えると、取締役の判断で買収対象企業を「高値づかみ」させられたり、逆に子会社を「割安で売却された」ら、たまったものではありません。


実際、「M&Aの取引価格としての株価が不当だったのではないか」と考える株主が取締役を訴えるケースが増えております。経営判断の誤りが訴訟で認定されれば、取締役は会社に対して賠償責任を負わなければなりません。

したがってアドバイザーは、クライアント企業が適切な株価算定をできるようなアドバイスをすることになります。このアドバイスは最も典型的なフィナンシャルアドバイザーの業務かもしれません。


今日はDCF法に関する現場の雰囲気をお伝えしようと思います。

(定義等の詳しい説明は省きますが、DCF法とは要するに、将来の事業計画がどのくらいのキャッシュを産むかを検証して対象企業の価値と考える方法です。)


今回訪問したクライアント企業の事業計画は、「努力目標」の位置づけでした。つまり、根拠薄弱なバラ色の計画で、過去にも計画を達成したことがない、という計画なのです。このような計画を持っている企業は公開企業でもたくさんあるのが現状です。


株価算定においては、上記のとおりのリスクを負っているので、アドバイザーはそのような事業計画を鵜呑みにするわけにはいきません。このような計画を前提にすると、クライアントは意思決定を誤ってしまうことになります。

(つまり、本来は500億の価値しかないのに1000億で買ってしまうとか、500億の価値しかない状況で800億のオファーを受けたのに、1000億が自社の価値であると判断して適切な売却機会を失うとか。)


したがってしっかりとした検証が必要です。

対象会社は自動車部品のメーカーであり、下記のようなディスカッションを行いました。


・今後アメリカの年間自動車販売台数は、リーマンショック前の1600万台まで回復するのですか?

・サブプライムローンと同じ構図で販売台数がかさ上げされており、今後は自動車ローンによる購入者は激減し 

 てしまうのではないのですか?

・インドや中国での販売が北米の落ち込み分を補えるのですか?

・インドや中国で、仮に台数ベースでは補えたとしても、単価は下がってしまうのではないのですか?

・電気自動車の普及により、(クライアントの強みである)ミッション系のメカトロ技術はすたれてしまうのではない

 のですか?

・派遣法の改正で、製造派遣が禁止されるも見込みですが、工場の労務費が増加しませんか?

・(クライアント企業は海外工場を持っていないので)海外進出なしで、現状の競争力を維持できるのですか?

・中国進出する場合は、その設備投資額は?リスクは?売上に寄与するのは何年後からですか?

などなど


このようなディスカッションは、クライアントにとっては耳障りです。感情的になってしまう局面がありました。

「死ぬ気で頑張れば実現可能だ」とか、「業界のことを全くわかっていない」とか、「素人に言われたくない」とか、言われました。

ただ、このようなディスカッションを経た上での角度の高い事業計画を算定の前提にすることが大切なのです。

なぜなら、株主にM&Aの意思決定プロセスの説明を求められた際にクライアント企業は「株価について慎重に検証した結果として判断した」と主張できるからです。


このクライアントとは1か月近くかけて上記のようなディスカッションをしているのですが、最終的にクライアントからは、「大変良い議論ができました。おかげでより良い洗練された事業計画に仕上げることができました。」と感謝をして頂きました。当然、そのような事業計画を前提に算出される株価についても満足をしておりました。


書店に並ぶ株価算定の実務書を読むと「エクセルを使って机の上で分析・計算している」イメージが強いのですが、それはごくわずかな一面にすぎず、実際は生々しい人間同士の衝突を経た上で、M&Aの価格は決まっていくのです。

今日は、我々のクライアントとともに、相手方の企業&アドバイザーと対峙をしてきました。


交渉はすでに終盤に差し掛かっており、また最終的には互いに合意をしたいので、譲れるところ/譲れないところの明確化や落としどころを探る局面がありました。その際、交渉の場での互いのアドバイザーの振舞い方が、とても対照的でした。


我々は、クライアントの利益のために原理原則論を主張し、安易に妥協せず、最後まで激しく交渉すべきというスタンスで相手方の企業&アドバイザーとの交渉に臨み、クライアントにアドバイスをしておりました。


一方、相手方のアドバイザーは、この最終の局面ゆえに、落とし所を積極的に探ってきました。

「足して2で割る」とか、条件を明確にせずに「玉虫色」の文言にするとかを両社に提案してきました。

例えば、株価が800円と1000円で議論している時に、「間をとって900円にしましょう。」とか、買収後に非買収企業の従業員の処遇を変えない期間を1年にするのか3年にするのか議論している際に、「当面は」処遇を変えないことにしましょう、とか。


どちらのスタイルが望ましいのでしょうか?もちろん、一概に言えませんし、正解はないでしょう。


私の個人的な思いは、前者、つまり最後まで原則論を主張し、クライアントの利益の最大化を図るというスタイルが望ましいということです。

なぜならば、M&Aのビジネスは基本的に成功報酬だからです。自分のクライアントから「このアドバイザーは報酬が欲しいので、安易に話をまとめようとしているのではないか?」という疑念を抱かれてしまうことを避けたいのです。もしそのような疑念を抱かれてしまったら、クライアントとの信用が一瞬にして吹き飛んでしまいます。


私の理想は、アドバイザーが最後まで原則論を主張して議論を白熱させる悪役に徹し、最終的にアドバイザー自身のクライアントから、「アドバイザーさんの主張は良くわかる。十分に自分を守ってくれている。ただしもうこの局面ではそこまで主張してくれなくて良い。最後は当事者である自分達の経営判断で譲歩する。」と言ってもらうことなのです。

このような展開に持っていくことで、「クライアントの利益の最大化のために最後まで頑張ってくれるタフなアドバイザー」という評価につながり、長期的な信用の構築につながるのではないかと思っています。また高い評価が得られれば、交渉で対峙した相手企業からも、いつの日か自分に依頼をくれるのではないかと信じているのです。


自分を正当化しているだけかもしれませんが、皆様はどう思われますか?



ちなみに今日の交渉は成約に至らず、議論は明日以降に持ち越しになりました。




あるクライアントから相談を受けました。


その内容は、「重要な子会社を売却することにしたので、そのお手伝いをして欲しい。」ということでした。

その子会社はかなりの規模があり、うまく売却が実現した場合には、成功報酬もそこそこの金額が期待できそうです。

M&Aのアドバイザリーの担当者は、毎年けっこうな額の収益責任を負っており、継続して成果を出し続けることはとても大変なことなのです。したがって、このような相談を受けるのは大変うれしく、気が早いのですが、これで何とか今年度のノルマも達成できるかな、などと横しまなことを考えてしまうこともよくあります。


さて、このクライアントへの次の一手は、皆様ならどのようにしますか?


私のチームは次のことを要求しました。

①「売却対象子会社」の収益、財務、キャッシュフローに関する資料の開示

②「親会社」の収益、財務、キャッシュフローに関する資料の開示

③「グループ全体」の連結の収益、財務、キャッシュフローに関する資料の開示

・・・などなど。売却対象の子会社の業務面や従業員等に関する資料も当然に開示をお願いします。


ここで、クライアントと激しい議論になりました。「子会社の売却」をお願いしているのに、なぜ「親会社」や「グループ全体の連結」の資料を開示しなければならないのか、という議論です。


私は、アドバイザーというのは、クライアントの言いなりになるのではなく、クライアントにとってのリスクや留意事項を適切に指摘しつつ、クライアントにとってより望ましい選択肢を提示してあげることなのだと理解しています。


したがって、当該子会社の売却が、残されたグループの収益や財務、キャッシュフローにどのような影響を与えるのかという観点がとても重要なのです。


売却によって収益や財務が大きく変わるのであれば、残された企業に対する銀行の融資姿勢が変化するかもしれません。売却に伴って損失が発生するのであれば、残された会社の財務を棄損する可能性もあります。場合によっては株価が急落するかもしれません。重要子会社を売却してしまえば、残された会社のそれ以降の成長ストーリーが描けなくなってしまうかもしれません。


さらに突き詰めると、最悪の場合はアドバイザーの会社も残された会社の株主等から損害賠償を請求されてしまうかもしれないのです。

例えば、子会社の売却→残された会社に売却損が発生→財務の棄損で債務超過に→上場廃止基準に抵触→株価の急落→・・・などの展開になった場合は、アドバイザーも非常に危険です。

なぜなら、売却損で債務超過が発生するような売却取引をアドバイスをしたのはどのアドバイザーなのか、その売却がなければ、このような展開にはならなかったのではないか、アドバイザーのプロフェッショナルとしてのアドバイスは適切なのか、という指摘をされる可能性があるからです。


結局、このクライアントとは資料開示の考え方が折り合わず、依頼を受けないことにしました。


M&Aのアドバイザーと聞くと、儲かれば何でもやるっていうイメージがあるかもしれませんが、けっしてそんなことはないのです。プロフェッショナル意識をもって仕事に取り組んでいるつもりです。


個人的に思うのは、上記の②、③の資料開示もきちんと請求し、子会社売却が残されたグループ全体に与える影響についてきちんと検証すべきとアドバイスをするアドバイザーはどのくらいいるものでしょうか?

逆に子会社売却の相談を受けたら喜々として買い手候補企業へのマーケティングに着手してしまうアドバイザーはどのくらいいるのでしょうか?


前者の方が多いことを願ってます。


ノルマの達成は簡単ではありません・・・。