意思決定プロセス | M&Aアドバイザーの日記

M&Aアドバイザーの日記

なかなか外部から知ることができないM&Aアドバイザーの仕事をリアルにお伝えします

アドバイザーは、自分のクライアントや対峙する相手企業の意思決定プロセスを把握することが大切です。


この意思決定プロセスは、会社によって異なるのでなかなか一般化ができませんが、一つの見方としてはオーナー企業と組織化された企業という分け方があります。


オーナー企業は、オーナーの鶴の一声で物事が決まります。逆に言うと、これまで決まっていたはずのことが、

オーナーの気持ちの変化によって真逆のベクトルに向かって進んでいくことが多々あります。したがいまして、オーナー企業とのM&A案件は、オーナーの感情面のケアが非常に重要になってきます。


今日の議論からそれますが、公開企業がオーナーの感情で物事を決めることのリスクが、昨今、非常に高まっております。つまり、公開企業には少数株主が存在するのですが、会社法によって明確に株主は平等であると定められているのです。それにもかかわらず、特定のオーナーの気持ちで会社が意志決定した結果としてオーナー以外の少数株主が損失をこうむった場合は、その決定をした会社の取締役が訴えられてしまう可能性あるのです。


典型的な事例がレックスホールディングス(牛角を展開するグループ企業)のMBOです。少数株主が、TOB価格が不当だと訴えております。(本論から外れるので詳細説明は省きます。)



オーナー企業とは逆の意思決定プロセスは、組織化された企業です。典型例が総合商社です。総合商社と一口に言っても、意思決定のプロセスは各社各様です。決裁権が分権化された商社もあれば、中央集権の商社もあります。

ただし昨今は金融危機の影響を受けて、総じてリスク管理意識が高まり、集権化された傾向が強いのではないでしょうか。


例えば、とある総合商社の一定規模以上の投資案件の意思決定は、取締役会と経営会議の決裁が必要です。さらに、それらの決裁を諮る前段階で、財務、法務への稟議が必要です。

しかも取締役会や経営会議は原則、月に一度です。M&Aの交渉は最後まで何が起こるか分からず、常に流動的です。それにもかかわらず、意思決定機関が月に一度しか開かれないというのは大変硬直的です。何らかの事情で一日スケジュールが遅れてしまったら、案件の進捗は1か月も遅れてしまうのです。

(もちろん総合商社の最重要案件等においては臨時取締役会も開くのでしょうが。)


ちなみに優秀な商社マンは、実は、社内の意思決定プロセスを通過させることの根回しがとても上手なのです。



アドバイザー泣かせの案件は、総合商社とオーナー企業のディールです。

組織が違いすぎて話がかみ合わないのです。

例えば…


なぜ、こちらはミーティングに社長が出てるのに、相手の商社は社長が出てこないのか?

なぜ、当方は数日で最終の結論を出しているのに、向こう(=総合商社)の回答は1か月も遅れるのか?やる気がないのではないか?

なぜ、こちらは契約書に社長が押印しているのに相手の総合商社は契約書の押印者が本部長なのか?

(総合商社の本部長はかなり偉くて、会社を代表して対外的に押印可能な決裁権を有しているのです。)


などと、オーナー企業のオーナー社長から言われてしまうのです。

「申し訳ありませんが、総合商社の組織はそういうものなので」と、言うしかないのですが、オーナーのフラストレーションは高まる一方です。


このように、意志決定プロセスが異なる会社間のM&Aについてはアドバイザーの腕の見せ所です。組織形態の違いが意思決定に与える影響について、案件の入口から十分にクライアントに説明し、期待値や感情のコントロールを早い段階で周知徹底しておくことが大切なのです。

クライアントが事前に十分、相手企業の意思決定プロセスを理解していれば、回答が遅くて「どういことだ!」と感情的にならずに、冷静に相手企業の意思決定にかかる手続きや時間を受け止めることができるものなのです。



明日は、総合商社へ訪問予定です。心してかかろうと思います。