「ザ・ウォッチャーズ」
“THE WATCHERS”(2024/アメリカ/ワーナー・ブラザース)
監督:イシャナ・ナイト・シャマラン
原作:A・M・シャイン
脚本:イシャナ・ナイト・シャマラン
ダコタ・ファニング ジョージナ・キャンベル
オルウェン・フエレ アリスター・プラマー
オリヴァー・フィネガン
おすすめ度…★★☆☆☆ 満足度…★★★★☆
確か予告編でシャマラン監督の娘が映画を撮ったのか…と興味をもったけれどそれまでのことで、作品のタイトルとか、どんな作風なのかということは忘れていた。
で、今週公開の新作の中で仕事終わりにちょうどタイムテーブルが合いそうな映画がこの「ザ・ウォッチャーズ」で、改めて作品情報をチェックして「あーそういえば」と思い出した次第。
最初にアイルランドの深い森のお話という大前提が提示されるので、そこから先はこの作品で描かれる虚構の世界にどれだけ浸れるかが、嵌るか嵌らないかの分かれ道かもしれないな。
前半の雰囲気はかつて一世を風靡した「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」がチラついて、シャマランの娘の初監督作品というハードルの低さも相まって、他のレビュー等でも多くの映画ファンが危惧していたように地雷を踏んだ感あり。
さらに個人的には近年まれに見る地雷映画だった「“それ”がいる森」がオーヴァーラップしてしまい「こりゃ失敗したか」という思いがさらに増す。
籠のインコを届ける使いを頼まれた孤独なミナは道中の深い森で迷い車も故障してしまう。
救助を求めて森を彷徨うミナは森の中にある建物の扉の中に逃げ込む。
そこには年配の女性マデリンと若い女性キアラそして青年ダニエルの3名がいた。
マデリンによると森は夜の間はガラス張りなった壁越しに何者かに監視されていて、外に出ると捕獲されて殺されてしまうという。
食料調達等のための日中の行動は自由だが、森にはいくつもの回帰不能点があり、そこから先へ脱出できたものはいない。
映画の冒頭で脱出を試みるもなにものかに森の穴に引き込まれた男性はキアラの夫だった。
このガラス張りの施設にはいくつかのルールがあるのだが、その設定が曖昧なのとそもそも他の者たちがどうしてここに迷い込んだのかという説明がないので、観ている側は常に???でスクリーンと向き合うことになる。
やがて徐々に森に潜む彼らの造形が明らかになるのだけれど、その姿はまさにクリーチャーそのものだったり、ガサガサ動き回る様子が上映前の予告編で観た「クワイエット・プレイス:DAY1」のそれとダブってしまい、さらに前述の「“それ”がいる森」のクリーチャーまでオーヴァーラップして、この辺りでいよいよ危険な感じがしてしまう。
ところがこの後に森とこの部屋の秘密とクリーチャーたちの正体が少しずつ明らかになり、4人がついに意を決して森から脱出するくだりで、一気にスリリングな展開になっていく。
もっともこの辺りで勘のいい人なら怪しい人物は特定されるので、その先は森の謎に迫るミナの行動がメインになりさらに展開が早くなる。
ミナには幼少期に自らの行動で母親を車の事故で亡くしてしまい、同乗していた姉の顔に大きな傷を残してしまったというトラウマがあり、その姿がまさに籠のインコと森に囚われた4人と重なり、最後には謎を解いたミナが自身の運命と対峙していく。
ミナを演じるのはダコタ・ファニングだということはエンドロールまで気づかなかった。
そういえば見たことある女優だなと思って観ていた。
M・ナイト・シャマランが製作にも関わっているので、やはりこれまで同様にシャマラン色の濃い作品にはなってはいる。
森のクリーチャーたちの造形とその正体とのギャップには意外性があったと思うし、その設定そのものもSF的思考の範疇でさほど違和感は感じなかった。
作品のテイスト的には一般的なホラーよりもファンタジースリラーに近いので、けして怖がらせるような演出を意図していたのではないだろう。
騙されたと思って観てみたら、案外拾いものだったというところ。
全然作風は違うけれど「悪は存在しない」でも山奥の森で事件が起こる。
やはり深い森にはいつでも人を不安にさせるエネルギーが満ちているのかもしれないし、自然という要素も含めて映画装置の背景としてこれほど適したものはないのだろうなと改めて感じた。
ユナイテッド・シネマ前橋 スクリーン5